多額の原発マネー 元助役の関係企業に集中する形に 関電問題

多額の原発マネー 元助役の関係企業に集中する形に 関電問題
関西電力の経営幹部らに多額の金品を渡していた福井県高浜町の元助役が、原発関連の工事や警備を請け負う少なくとも3つの会社から多額の報酬を受け取り、この3社は関西電力から震災後の原発の再稼働に伴う安全対策工事などを受注して売り上げを大きく伸ばしていたことが関係者への取材で分かりました。多額の原発マネーが元助役の関係企業に集中する形になっていました。
関西電力の経営幹部ら20人が福井県高浜町の森山栄治元助役から3億円を超える金品を受け取っていた問題をめぐっては、関西電力から原発関連の工事を受注していた「吉田開発」から工事受注などの手数料として元助役におよそ3億円が渡っていたことが明らかになっています。

元助役は以前、原発関連の工事や警備を請け負う4つの会社に相談役や顧問などの形で関わっていて、「吉田開発」を含む少なくとも3つの会社から多額の報酬を受け取っていたことが関係者への取材で新たに分かりました。

この3社は関西電力から震災後の原発の再稼働に伴う安全対策工事などを受注して売り上げを大きく伸ばしていて民間の信用調査会社や工事経歴書によりますと、このうち▼元助役が相談役を務めていた兵庫県高砂市のメンテナンス会社は昨年度までの5年間で149億円あまりの原発関連の工事を受注していたほか、▼元助役が取締役を務めていた警備会社は高浜原発の再稼働に伴う警備などを請け負い去年3月期に過去最高となる51億円余りの売り上げを記録していました。

NHKの取材に応じた複数の地元業者は「元助役を通さなければ関西電力の仕事はもらえない仕組みになっていて震災後は安全対策工事が増え元助役の影響力はより強くなっていた」と証言しています。

これについて関西電力の元幹部は「震災後に安全対策工事が急増する中で地元業者を掌握する元助役と密接な関係を築けば原発運営はうまく行くし工事もスムーズに進むと考えたのではないか」と話していました。

関西電力はこれまで原発の立地地域への配慮を理由に「発注のプロセスや契約額は適正だった」と説明していますが、弁護士などで作る第三者委員会は工事の発注などに問題がなかったか改めて調査する方針です。

原発マネー どのように流れたか

関西電力は震災後の新たな規制基準に対応し原発を再稼働させるため、これまで高浜原発だけで5457億円の安全対策費を投じています。

森山元助役は以前、少なくとも4つの会社で相談役や顧問を務めていましたがこうした会社は原発の再稼働に伴う安全対策工事などを受注し売り上げを大きく伸ばしていて、多額の原発マネーが元助役の関係企業に集中する形になっていました。

このうち元助役におよそ3億円を渡していた「吉田開発」は震災後の安全対策工事などを受注して急激に売り上げを伸ばし、関西電力からの工事の受注額は昨年度までの5年間で64億円余りに上っています。

また元助役が長年、役員を務めていた兵庫県高砂市の会社は関西電力や子会社から高浜原発の重要機器のメンテナンスなどを受注し原発関連の工事の受注額は昨年度までの5年間で149億円あまりに上っていたほか、元助役が取締役を務めていた高浜町の警備会社は関西電力から高浜原発の再稼働に伴う警備などを請け負い去年3月期に過去最高となる51億円余りの売り上げを記録していました。

このほか元助役が顧問を務めていた福井市の警備会社も高浜原発の再稼働に伴う警備などを請け負って年々売り上げを伸ばし、ことし3月期の売り上げは112億円に上っています。

新証言1:地元業者は

NHKの取材に応じた複数の地元業者は「森山元助役を通さなければ関西電力の仕事はもらえない仕組みになっていた。震災後は安全対策工事が増え元助役の影響力はより強くなっていた」と証言しています。

ある地元建設業者は「元助役は関西電力に顔が利くフィクサーのような存在で地元の建設業者は『森山詣』のような形でみんなあいさつに行っていた」と話していたほか、別の業者は元助役に頼んで原発関連の仕事を請け負った経験があると明らかにしたうえで「森山元助役が関西電力に口利きし本来、受注できない仕事を回してもらった。ものすごくありがたかった」と話していました。

さらに別の業者は「関西電力から工事を受注したら森山元助役に受注額の一部を手数料として支払うことが慣例になっていた。盆暮れには元助役の運転手が地元業者を回って集金していた」と証言しています。

新証言2:関電の元幹部は

NHKの取材に応じた関西電力の元幹部は「震災後に安全対策工事が急増する中で地元業者を掌握する森山元助役と密接な関係を築けば原発運営はうまく行くし工事もスムーズに進むと考えたのではないか」と話しています。

また別の元幹部は「特定の有力者を抑えれば地元を掌握できるという非常に安易なアプローチに関西電力は逃げ込んでしまったのではないか。1人の機嫌を損ねたら原発運営がうまく行かなくなるというのは地元軽視だ」とこれまでの対応を批判しています。

新証言3:地元の県議は

森山元助役を知る福井県の石川与三吉県議会議員がNHKの取材に応じ、「私は断ったが、関西電力の仕事を請け負いたい業者から森山元助役への口利きを依頼されたことがある」と明らかにしました。

そのうえで石川県議は「原発を増設するために地域の理解を得るという難しい役割を森山元助役が果たし、そのおかげで関西電力は何のブレーキもかけずに原発を誘致することが出来た。関西電力にとって森山元助役は『生き神様』のような存在だったのではないか」と話していました。

関電 岩根社長「再稼働に重大影響」

森山元助役との不透明な関係が続いた理由について関西電力の岩根茂樹社長は今月2日の記者会見で「震災後に大規模な安全対策工事が進む中で、地元の有力者である元助役との関係悪化を避けたかった」などと説明しました。

関西電力が公表した調査報告書にも原発の再稼働に向けて森山元助役の存在を強く意識していた実態が記されています。

「森山氏のような地域の有力者がいったん反対に回ると原発運営や再稼働に重大な影響を与えるおそれがある」

「森山氏の機嫌を損ねると森山氏が地域での様々な影響力を行使し発電所運営に支障を及ぼす行動に出るリスクがある」

「とりわけ東日本大震災後、原発の早期再稼働を実現することが喫緊の課題となり、各発電所において大規模な安全対策工事を進展させる中で森山氏への対応の頻度は多くなっていった」

こうした中関西電力はおととしまでの4年間に原子力事業本部が「吉田開発」に発注した7割以上の工事で、工事の概算額などの情報を元助役に伝えていたことなどが明らかになっていますが、関西電力は原発の立地地域への配慮を理由に「発注のプロセスや契約額は適正だった」と説明しています。

第三者委員会 調査のポイント

関西電力は今月、元検事総長の但木敬一弁護士をトップとする第三者委員会を設置しました。第三者委員会は、▼森山元助役からの金品の授受について時期や対象範囲を広げて調査するほか、▼関西電力が「適正だった」としている工事発注のプロセスや発注額について問題がなかったかなどを改めて調べる方針です。

調査結果をまとめる時期について関西電力は、年内を期限として要望していますが、第三者委員会は、「中途半端な段階で調査を打ち切ることはできない」として、必ずしも期限は約束できないという認識を示しています。

専門家「関電は時代を読み違えた」

原発と地域経済の関係に詳しい東洋大学の井上武史准教授は、「電力会社が地域との共生のために原発関連の工事を地元の企業に発注する仕組み自体には問題はないが、今回は1人に有力者の関係企業に工事が集中しすぎていた。1人の人物に頼らざるを得ない状況はまずいと言うことに早く気づくべきだった」と話しています。

そのうえで「震災後、原発への国民の信頼が揺らいでいる中で地元の理解だけを得れば原発を動かせる時代ではなくなっているのに、関西電力は相変わらず地元同意だけを優先し時代を読み違えていたのではないか。今回の問題で原発への信頼がさらに低下し、今後の推進に大きな影響が出てくることも考えられる」と指摘しています。

専門家「すべての原子力施設で起きる可能性」

利権構造がもたらすリスクについて原子力政策に詳しい多摩大学大学院の田坂広志名誉教授は、「不透明なお金の流れの中で利権の関係が生まれると、自治体が原発に関わる判断をする場合、例えば再稼働などの安全性の判断においても、公正で適切な判断ができなくなるおそれがある」と指摘しています。

さらに「電力は生活インフラとして欠かせず、電気料金は税金と同じようなもの。本来であればどのように使われているか国民に対し、透明性がしっかりと確保されているべきだ」と話しています。

そのうえで「こうした問題は、関西電力だけでなくほかの電力会社、また原発だけでなく放射性廃棄物の施設など、すべての原子力施設で同様に起きる可能性がある。今回の問題をきっかけにして、原子力業界は体質を含め、徹底的な改革を行っていくべきだ」と指摘しています。