新たな時代へ 模索するヨーロッパの王室
日本中が「令和」に沸いた5月1日。新時代の幕開けを、東京スカイツリーのカウントダウンイベントの取材で迎えました。
日本だけでなく、世界各国の王室でもこの数年、世代交代が進んでいます。
新たな時代へ、各国の王室は、どのような王室像を模索し、国民にとって王室はどのような存在であるのか。
天皇陛下と同様、王みずからが「水」問題を研究するオランダ王室。そして、王妃や皇太子が自分や家族の問題を国民に公表し国民と共に歩まんとするスウェーデン王室を取材しました。
(ニュースウオッチ9 リポーター 星 麻琴 / 制作記者 清 香織)
日本だけでなく、世界各国の王室でもこの数年、世代交代が進んでいます。
新たな時代へ、各国の王室は、どのような王室像を模索し、国民にとって王室はどのような存在であるのか。
天皇陛下と同様、王みずからが「水」問題を研究するオランダ王室。そして、王妃や皇太子が自分や家族の問題を国民に公表し国民と共に歩まんとするスウェーデン王室を取材しました。
(ニュースウオッチ9 リポーター 星 麻琴 / 制作記者 清 香織)
「水の問題」国王みずから研究に ~オランダ~
国土の4分の1が海抜0メートル以下のオランダ。街を歩くと、あちこちに運河が流れています。荷物を運ぶ大小さまざまな船が行き交い、ボートをこいで運動する地元の人たちやボートの上で生活する人たちの姿が見られ、活気にあふれていました。
「水の国」とも言われるオランダは、水との、苦労の歴史を歩んできました。私たちはそれを感じる現場に足を運びました。
アムステルダムから北に車で1時間あまり。強い風が吹きつけるその場所には、「締切大堤防」と言われる全長32キロの堤防がありました。
北海からの荒波で沿岸の地域では水害があとをたたず、90年ほど前に築かれたという、この堤防。石を積み上げる労働者を再現したモニュメントの横には、「水との闘いは人類のための闘い」と刻まれていました。
アムステルダムから北に車で1時間あまり。強い風が吹きつけるその場所には、「締切大堤防」と言われる全長32キロの堤防がありました。
北海からの荒波で沿岸の地域では水害があとをたたず、90年ほど前に築かれたという、この堤防。石を積み上げる労働者を再現したモニュメントの横には、「水との闘いは人類のための闘い」と刻まれていました。
こうしたオランダの人たちの暮らしに密接した課題が「水をどう管理するか」です。
2013年に46歳で即位したオランダのウィレム・アレキサンダー国王。
国王ご本人が、この、「水の管理」への造詣が深く、皇太子時代の2006年から即位までの間、国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の議長を務めました。
2013年に46歳で即位したオランダのウィレム・アレキサンダー国王。
国王ご本人が、この、「水の管理」への造詣が深く、皇太子時代の2006年から即位までの間、国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の議長を務めました。
驚いたことに、街で話を聞いた多くの国民が、国王が水問題に熱心に取り組んでいることを知っていました。そして、「王が水問題に興味を持つのは意味がある」、「世界のためにも、いい仕事だ」などと、肯定的にとらえていました。
この、水問題への研究を共通項として、オランダ王室と日本の皇室は新たな関係を築いています。
天皇陛下は、皇太子時代の2007年から2015年まで、国連の同じ諮問委員会の名誉総裁を務め、オランダ・アレキサンダー国王とともに世界の水問題に取り組まれてきました。
水研究を通じて交流は公私ともに深まり、2006年には雅子さまの療養もかねてご一家でおよそ2週間、オランダを訪問されました。
この、水問題への研究を共通項として、オランダ王室と日本の皇室は新たな関係を築いています。
天皇陛下は、皇太子時代の2007年から2015年まで、国連の同じ諮問委員会の名誉総裁を務め、オランダ・アレキサンダー国王とともに世界の水問題に取り組まれてきました。
水研究を通じて交流は公私ともに深まり、2006年には雅子さまの療養もかねてご一家でおよそ2週間、オランダを訪問されました。
「水の問題」日蘭の王室と皇室を結ぶ縁にも
そして、2013年、雅子さまにとって11年ぶりの外国公式訪問先となったのが、アレキサンダー国王の即位式だったのです。
オランダの人たちの中にも、「テレビで雅子さまのことを見たことがある」とか、「ことし代替わりしたのよね」、「王室と皇室が仲がいいのはいいことだ」などと話す人もいて、日本とオランダの関係の深さを実感することができました。
オランダの人たちの中にも、「テレビで雅子さまのことを見たことがある」とか、「ことし代替わりしたのよね」、「王室と皇室が仲がいいのはいいことだ」などと話す人もいて、日本とオランダの関係の深さを実感することができました。
日蘭交流 草の根でも
日本にとってオランダは、ことし、通商が始まって410年となる、ヨーロッパの中でもとりわけ長く良好な関係を築いている国です。
草の根でも交流が続いている場所があると聞いて、オランダ第二の都市、ロッテルダムを訪ねました。
すると、住宅街の一角に“ここは日本?!”と勘違いしそうな空間が。漢字で「松風館」という看板が掲げられた扉を開けると、日本庭園に茶室、道場まであります。
草の根でも交流が続いている場所があると聞いて、オランダ第二の都市、ロッテルダムを訪ねました。
すると、住宅街の一角に“ここは日本?!”と勘違いしそうな空間が。漢字で「松風館」という看板が掲げられた扉を開けると、日本庭園に茶室、道場まであります。
2005年に、オランダ人のヨーリス・ファン・ニスペンさんが、日本語や日本文化を紹介しようと、閉校した小学校を買い取って開きました。
子どものころから、柔道や剣道を習っていたことがきっかけで、日本に興味をもったというヨーリスさん。
武道を学ぼうと、たびたび日本を訪れる中で、茶道などの日本の伝統文化に触れ、オランダの人たちにもその文化に触れてほしいと考えるようになったそうです。
ヨーリスさんは「体験することで、さらに日本への理解が深まる」と、熱く語ってくれました。
子どものころから、柔道や剣道を習っていたことがきっかけで、日本に興味をもったというヨーリスさん。
武道を学ぼうと、たびたび日本を訪れる中で、茶道などの日本の伝統文化に触れ、オランダの人たちにもその文化に触れてほしいと考えるようになったそうです。
ヨーリスさんは「体験することで、さらに日本への理解が深まる」と、熱く語ってくれました。
「松風館」では、日本語、茶道、書道、そして武道などの教室が開かれています。
取材した日は華道教室が開かれ、仕事帰りの会社員や主婦など7人のオランダ人の女性たちがお稽古にいそしんでいました。
講師は、妻のティニさん。京都に通って、免許を取得したそうです。
取材した日は華道教室が開かれ、仕事帰りの会社員や主婦など7人のオランダ人の女性たちがお稽古にいそしんでいました。
講師は、妻のティニさん。京都に通って、免許を取得したそうです。
ヨーリスさんは日本の皇位継承について、「もちろん知っている。日本の人たちにとって、希望を感じさせる重要な時代の変わり目。次の時代も、オランダと日本の関係が良好であり続けることを願っている」と話していました。
自分や家族の問題も公表 国民とともに ~スウェーデン~
北欧スウェーデンでは、王室と国民の距離の近さに驚くことばかりでした。
「王の公園」、「王の通り」、「女王の小島」など、王室にゆかりのある地名をあちこちで見かけました。
大勢の買い物客でにぎわう首都ストックホルムの、その名も「女王の通り」で、行き交う人たちに話を聞くと、多く聞かれたのが「lovely」という言葉。直訳すると、「素晴らしい」、「魅力的」、「親しみやすい」などの意味で、人々は、「家族や友達みたいに、王室は身近に感じる」とか、「ビクトリア皇太子が娘にアイスクリームを買ってあげているのを見たって人もいた」、「シルビア王妃やビクトリア皇太子の夫のダニエルさんが、一般家庭の出身で好感がもてる」などと発言。王室に好感を持っている人が多いと感じました。
「王の公園」、「王の通り」、「女王の小島」など、王室にゆかりのある地名をあちこちで見かけました。
大勢の買い物客でにぎわう首都ストックホルムの、その名も「女王の通り」で、行き交う人たちに話を聞くと、多く聞かれたのが「lovely」という言葉。直訳すると、「素晴らしい」、「魅力的」、「親しみやすい」などの意味で、人々は、「家族や友達みたいに、王室は身近に感じる」とか、「ビクトリア皇太子が娘にアイスクリームを買ってあげているのを見たって人もいた」、「シルビア王妃やビクトリア皇太子の夫のダニエルさんが、一般家庭の出身で好感がもてる」などと発言。王室に好感を持っている人が多いと感じました。
「王室とつながっている気がする」
取材では、王室とゆかりのある場所も訪ねました。
ストックホルム中心部にある、王室御用達という創業96年のチョコレート店。グスタフ国王からの感謝の手紙や王室メンバーの写真が飾られていました。
家族経営で、すべて手作りというこちらの店は、一般の市民にも広く親しまれ、取材中もひっきりなしに客が訪れていました。
「王室御用達で買うのは特別。王室とつながっている気がする」。「王が召し上がるチョコレートを食べたら、王になった気分だ」などと話す人もいて、国民から慕われる王室を感じることができました。
パワフルな店長のリンダ・アーデベックさんは「チョコレートは子どもからお年寄りまで、もちろん王室のメンバーも大好き。でも、王室の方々が、どのチョコレートがお好きなのかは秘密」と笑顔で答えてくれました。
ストックホルム中心部にある、王室御用達という創業96年のチョコレート店。グスタフ国王からの感謝の手紙や王室メンバーの写真が飾られていました。
家族経営で、すべて手作りというこちらの店は、一般の市民にも広く親しまれ、取材中もひっきりなしに客が訪れていました。
「王室御用達で買うのは特別。王室とつながっている気がする」。「王が召し上がるチョコレートを食べたら、王になった気分だ」などと話す人もいて、国民から慕われる王室を感じることができました。
パワフルな店長のリンダ・アーデベックさんは「チョコレートは子どもからお年寄りまで、もちろん王室のメンバーも大好き。でも、王室の方々が、どのチョコレートがお好きなのかは秘密」と笑顔で答えてくれました。
スウェーデンの伝統で、日本でも人気の麻織物が、王室と深いつながりがあることも、今回の取材で知りました。
1977年にビクトリア皇太子が生まれた時、シルビア王妃の両親がこの店でカモメの模様のテーブルクロスを買い求め、贈ったそうです。
1993年には、王室で開かれた晩さん会で使われるテーブルクロスとナプキンの製作を依頼され、その後、王室御用達の認定を受けました。
グスタフ国王やシルビア王妃が、工房を訪れたこともあるということで、前社長のディック・ヨハンソンさんは「大変誇りに思う。シルビア王妃は話しやすい方で温かい人柄」と話していました。
1977年にビクトリア皇太子が生まれた時、シルビア王妃の両親がこの店でカモメの模様のテーブルクロスを買い求め、贈ったそうです。
1993年には、王室で開かれた晩さん会で使われるテーブルクロスとナプキンの製作を依頼され、その後、王室御用達の認定を受けました。
グスタフ国王やシルビア王妃が、工房を訪れたこともあるということで、前社長のディック・ヨハンソンさんは「大変誇りに思う。シルビア王妃は話しやすい方で温かい人柄」と話していました。
ドイツの一般家庭出身のシルビア王妃
国民に慕われるスウェーデン王室。しかし、一時、王室廃止論が高まった時期もありました。
それを変える存在となったのはシルビア王妃です。“王室の救世主”と呼ばれるようにもなりました。
1973年、27歳で即位したグスタフ国王。王室の結婚相手は貴族が一般的だった時代に、王が選んだ相手は、ドイツの一般家庭出身のシルビア王妃でした。
1976年に行われた結婚式の前夜祭では、スウェーデンが生んだ人気ポップグループのアバが、初めて「ダンシング・クイーン」を披露。
“あなたならクイーンになれる”。
当時の映像からは、鼓舞するような歌詞とメロディーを聞き、王妃が笑顔を見せる様子がわかります。
それを変える存在となったのはシルビア王妃です。“王室の救世主”と呼ばれるようにもなりました。
1973年、27歳で即位したグスタフ国王。王室の結婚相手は貴族が一般的だった時代に、王が選んだ相手は、ドイツの一般家庭出身のシルビア王妃でした。
1976年に行われた結婚式の前夜祭では、スウェーデンが生んだ人気ポップグループのアバが、初めて「ダンシング・クイーン」を披露。
“あなたならクイーンになれる”。
当時の映像からは、鼓舞するような歌詞とメロディーを聞き、王妃が笑顔を見せる様子がわかります。
王妃の母親が認知症になった経験をもとに
シルビア王妃は、さまざまな慈善活動に熱心に取り組んでいることでも知られています。
ストックホルム郊外にある、認知症患者のデイケア施設を訪ねました。名前は「シルビアホーム」。1996年、シルビア王妃の発案で設立されました。
王妃の母親が認知症になった経験を踏まえ、患者や家族のケアに積極的に取り組まれているのだそうです。
ここでは、認知症患者ひとりひとりに合わせたケアが行われているほか、医師や理学療法士などの育成も行われていて、王妃ご自身も頻繁に訪れ、アドバイスしているといいます。
ここで学んだ医療スタッフは約1000人。スウェーデンだけでなく、日本や世界中で活躍しているということです。
施設の中は、暖かい家庭のような雰囲気で、スタッフたちは、患者のことはけっして「患者」とよばず、「ゲスト」つまりお客様と呼ぶことを徹底していました。1人1人に真摯に向き合っていると感じました。
CEOで医師の、ヴィルヘルミーナ・ホフマンさんは、「王妃のような方が、家族の病気のことを話すということは考えられなかったが、シルビア王妃は誠実にそのことをお話しされた。ひとりを教育すれば、その人を通じて数名を助けることができ、王妃は多くの扉を開けられた」と、シルビア王妃の活動を支持しています。
ストックホルム郊外にある、認知症患者のデイケア施設を訪ねました。名前は「シルビアホーム」。1996年、シルビア王妃の発案で設立されました。
王妃の母親が認知症になった経験を踏まえ、患者や家族のケアに積極的に取り組まれているのだそうです。
ここでは、認知症患者ひとりひとりに合わせたケアが行われているほか、医師や理学療法士などの育成も行われていて、王妃ご自身も頻繁に訪れ、アドバイスしているといいます。
ここで学んだ医療スタッフは約1000人。スウェーデンだけでなく、日本や世界中で活躍しているということです。
施設の中は、暖かい家庭のような雰囲気で、スタッフたちは、患者のことはけっして「患者」とよばず、「ゲスト」つまりお客様と呼ぶことを徹底していました。1人1人に真摯に向き合っていると感じました。
CEOで医師の、ヴィルヘルミーナ・ホフマンさんは、「王妃のような方が、家族の病気のことを話すということは考えられなかったが、シルビア王妃は誠実にそのことをお話しされた。ひとりを教育すれば、その人を通じて数名を助けることができ、王妃は多くの扉を開けられた」と、シルビア王妃の活動を支持しています。
娘のビクトリア皇太子 かつての摂食障害明らかに
シルビア王妃の思いは娘のビクトリア皇太子にも引き継がれています。
そのひとつが、子どもの健康や孤立をなくすための活動です。皇太子の結婚をきっかけに、ご夫妻で財団を設立されました。
ご夫妻とともに活動しているマリー・ハーディングさんに話を伺うと、「ご夫妻が活動に時間をさき、熱心に取り組んでおられる」と感謝を述べていました。
取材の際には、かわいらしいイラストの絵本を見せてくれ、運動の大切さや栄養バランスの採れた食事の大切さを伝えるために絵本を20万部つくり、小児科医を通して配布する活動を行っていると話してくれました。
ビクトリア皇太子は、40歳の誕生日の際のインタビューで、かつて摂食障害を患い、専門家のサポートを受け克服したことを明らかにしています。
王室ともつながりのあるジャーナリストは、「ビクトリア皇太子は、摂食障害であったことをオープンにし、シルビア王妃は、家族が認知症の家系であることを明らかにすることで、ポジティブの方向に利用し、問題に焦点があたるようにしている。自分の役割を常に作り出している」と、述べています。
シルビア王妃やビクトリア皇太子と日ごろ接している人たちへの取材を通して、王妃や皇太子が、自分や家族の問題を国民に公表して分かち合い、さらには、同じような状況に苦しむ人たちを助けようと、自らが情熱をもち、率先して取り組んでいることを強く感じました。
そして、そうした姿勢が、国民から尊敬や親愛を集めているのだと思いました。
天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿の儀」。新しい令和の時代は、私たち国民にとってどんな時代になるのでしょうか。令和の1日1日を大切に過ごしていきたいと感じました。
そのひとつが、子どもの健康や孤立をなくすための活動です。皇太子の結婚をきっかけに、ご夫妻で財団を設立されました。
ご夫妻とともに活動しているマリー・ハーディングさんに話を伺うと、「ご夫妻が活動に時間をさき、熱心に取り組んでおられる」と感謝を述べていました。
取材の際には、かわいらしいイラストの絵本を見せてくれ、運動の大切さや栄養バランスの採れた食事の大切さを伝えるために絵本を20万部つくり、小児科医を通して配布する活動を行っていると話してくれました。
ビクトリア皇太子は、40歳の誕生日の際のインタビューで、かつて摂食障害を患い、専門家のサポートを受け克服したことを明らかにしています。
王室ともつながりのあるジャーナリストは、「ビクトリア皇太子は、摂食障害であったことをオープンにし、シルビア王妃は、家族が認知症の家系であることを明らかにすることで、ポジティブの方向に利用し、問題に焦点があたるようにしている。自分の役割を常に作り出している」と、述べています。
シルビア王妃やビクトリア皇太子と日ごろ接している人たちへの取材を通して、王妃や皇太子が、自分や家族の問題を国民に公表して分かち合い、さらには、同じような状況に苦しむ人たちを助けようと、自らが情熱をもち、率先して取り組んでいることを強く感じました。
そして、そうした姿勢が、国民から尊敬や親愛を集めているのだと思いました。
天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿の儀」。新しい令和の時代は、私たち国民にとってどんな時代になるのでしょうか。令和の1日1日を大切に過ごしていきたいと感じました。