あんこがピンチ? そのワケは

あんこがピンチ? そのワケは
いよいよ食欲の秋! スイーツが恋しくなっていませんか。そのスイーツに欠かせないあんこが今、ピンチに陥っているというのです。原料の小豆の価格が、ここ数年、高騰。全国各地の和菓子メーカーが、値上げを相次いで検討するなど対応に苦慮しています。いったい何が起きているのか、生産量が全国の9割以上を占める北海道で取材しました。(札幌放送局記者 小林紀博/帯広放送局記者 加藤誠)

あんこのイベント、大盛況も悩みが

札幌市のデパートで開かれたあるイベント。会場には、もなかに、どら焼き、アイスクリーム。北海道産の小豆で作った「あんこ」の魅力をアピールしようという、その名も「あんこ博覧会」です。北海道だけでなく、東京などからも21店舗が出店しました。

会場に詰めかけた人は「すごくおいしい」、「小豆の香りがうれしいです」と口々に話していました。主催したデパート「札幌丸井三越」の横井隆さんは「小豆だったり、あんこだったりの魅力を伝えられたら良いと思っています」とねらいを語りました。

ところが、出店した店舗のどれもが、今、共通した悩みを抱えています。

小豆産地の十勝で起こった異変

その理由を探ろうと全国最大の小豆の産地、北海道十勝地方の音更町の畑を訪れると、小豆農家の岡田信一さん(52)がちょうど収穫作業を始めていました。
平年並みの収穫量を確保できる見通しだというものの、岡田さんは「収穫を始めるのは1週間ほど遅れていると思います」と話していました。
実は北海道産の小豆の収穫量は、3年前に十勝地方を台風が襲ってから減少傾向が続いています。この年、収穫量がおよそ2万7000トンと半分以下に激減。去年も夏場の長雨が影響しておよそ3万9000トンと回復したものの、台風の前の水準には至っていません。ことしも8月はじめにかけて最高気温が35度を超える暑い日が続き、花がしぼんで平年よりもさやの数が少なく、収穫量の大幅な回復は見込みにくい状況です。

卸会社「40年で初めて」の事態に

影響は小豆の卸売会社にも及んでいます。「丸勝」の梶原雅仁社長に倉庫を案内してもらうと、小豆はほとんどありませんでした。

梶原社長は「ここはふだんは製品を一時ストックしておく場所で天井近くまで積まれているんですが、去年からもう在庫品がないんで、ご覧のようにガラガラの状態です」と説明しました。
収穫量の低迷が原因です。そして、この状態について「40年以上豆屋をやっていますけれど、こういう状況は初めてです」とため息をついていました。

この卸売会社では、販売ができる在庫がないとして、菓子メーカーなどから購入の問い合わせが来ても断っているということです。

ことし春先には多くの農家に小豆を作付けしてもらえないかと要請していて、梶原社長は「この秋に収穫される『新物』に大きな期待をしている最中なんです。多くの豆が採れることを願っています」と話していました。

価格の高騰、商品開発に影響も

この結果、価格の高騰が続いています。生産者団体の「ホクレン」によりますと、去年、十勝地方で生産者から買い入れた価格は60キロあたり2万5000円程度と4年前の2倍。これは15年ぶりの高値水準です。

かつて小豆は冷害に弱く、収穫量が激減した年には価格が跳ね上がり、「赤いダイヤ」と呼ばれた時期もありました。その後、冷害に強い品種の開発もあって、「赤いダイヤ」は過去のものとなりましたが、ホクレンでは収穫量が回復しなければ、今後も高値は続く可能性があるとしています。
小豆の値上がりは菓子メーカーにも打撃を与えています。千歳市に本社がある菓子メーカーの「もりもと」では、和菓子を中心に20品以上に小豆を使っています。使う量は、多い時で1日におよそ400キロ。大部分を十勝産に頼っていますが、仕入れ価格が去年に比べて20%ほど値上がりしているということです。このため、ことしに入ってあんこを使っている商品を中心に10円から30円値上げしました。このまま高騰が続けば、さらに値上げすることも検討せざるをえないといいます。
「もりもと」和菓子チームの佐野健太さんは「これ以上値上がりすると自分たちの商品開発が難しくなるので、もう上がらないでほしいなというのが正直なところです」と切実な表情でした。

小豆のブランド、正念場に

北海道産の小豆が不振なら、ほかの産地に切り替えられないか考えるのが自然です。それでも菓子メーカーに話を聞くと「製品の品質を保つには、北海道産、それも十勝産の小豆は欠かせない」と口をそろえます。粒が均一で口当たりが良く、香りも高いなど、長い期間をかけて積み上げた産地として評価があります。

しかし、このままどんどん高騰が続けば、産地を切り替えるメーカーが増えてもおかしくありません。せっかく確立してきた北海道、そして十勝のブランド。それを死守するための関係者の努力に期待したいと思います。
札幌局放送局記者
小林紀博 

平成25年入局
室蘭局を経て札幌局
経済取材を担当
帯広放送局記者
加藤誠

平成21年入局
経済部で情報通信等担当
平成30年から帯広局