進次郎 ニューヨークへ ~担当記者同行記~

進次郎 ニューヨークへ ~担当記者同行記~
小泉環境大臣は国連の温暖化対策サミットや関連のイベントに出席するため、9月21日から7日間の日程でアメリカのニューヨークを訪れた。大臣就任後、初めてとなる国際会議への出席。得意の“小泉節”で海外でも存在感を示せるのか、同行した記者のルポを2回にわたってお伝えする。
(社会部 環境省担当記者 杉田沙智代)

いざ出発

9月21日の夕方。小泉大臣が成田空港に姿を現した。当初、環境省の担当者からは「出発時の空港でのぶら下がり取材はしない。質問もしないでほしい」と報道各社におふれが回っていた。

しかし大臣就任後初めて海外に行くのに、何もしゃべらないわけがない。そう考えてカメラマンと一緒に待ち構えていると…。

予想どおり飛行機に乗る前にカメラの前で立ち止まってくれた。うーん、いつもながら髪型もきまっていて、見た目はさわやかだ。
「日本が地球規模の課題に不可欠なプレーヤーだというメッセージをしっかりと残してきたい」
小泉大臣はこう話すと、環境省の職員やSPを引き連れてさっそうと飛行機に乗り込んでいった。

私も同じ飛行機で同行するため機内へ。ちなみに大臣の座席はファーストクラスだが、これは「警備上必要な措置」として決められているものであり、けっしてぜいたくをしているわけではない。

機内ではどんな様子なんだろう?私はファーストクラスのほうをちょっとのぞこうとしたが、カーテンが閉まっていて中の様子をうかがうことはできない…。

しかたなくエコノミークラスの自分の席に戻り、好物のアイスクリームをほおばりながら翌日からの取材に備えて資料を読むことにした。

決戦前に好物のステーキも…

成田空港からおよそ13時間。ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港に到着した。現地時間は午後4時半だ。

大臣がまず向かったのは、各国の関係者が集まっている国連、ではなかった…。マンハッタンの老舗の有名ステーキ店である。映画にも登場したことがあるこの店、サーロインステーキが1人前60ドルほどからで味わえる。
大臣は「ステーキは毎日でも食べたいね」と話したという。

しかしこの発言がニュースで報じられると、一部のメディアから「環境問題に対して配慮がない」と非難された。実は牛肉の生産には大量の穀物や水が消費され、さらに牛のげっぷに含まれるメタンガスは地球温暖化につながる。欧米では環境問題への取り組みの一環として牛肉をなるべく食べない「ミートレス」の運動も行われているのが現状だ。

そうした中、「毎日でもステーキを食べたい」という大臣の発言が「環境問題に対する最近のトレンドを全く理解していない」という批判につながったのだ。

私個人としては「ステーキくらい、好きなだけ食べたらいいのにな」と思ってしまうのだが…。

ただ、もし大臣が牛肉の大量生産が気候変動に少なからず影響を与えているという指摘を全く知らずに発言していたとすると…。ステーキ店に行って感想を聞かれる前に、誰か同行者がアドバイスしてあげられなかったのかなあと、ついかわいそうになってしまった。

初日 会見であの発言

9月22日。いよいよニューヨークでの本格的な活動がスタートする。国連本部近くのビルに到着した小泉大臣。まず最初に参加したのは再生可能エネルギーに関するイベントだ。

同じ会場で主に海外メディアとの会見に臨んだ。会見場所にはロイター通信やフィナンシャルタイムズなど、そうそうたるメディアの記者が待ち構えていた。

やり取りはすべて英語。当初は穏やかな雰囲気で進んでいた会見だが、中盤になると厳しい質問がとんだ。
記者:石炭火力は日本では主要な電源となっている一方で、地球温暖化の主要因でもある。今後、6か月から12か月間の間でどう取り組んで行こうと思っているのか。

小泉環境相:減らします。

記者:どうやって?

小泉環境相:…。(しばしの沈黙。※およそ6秒間)私は先週大臣になったばかりだ。同僚や環境省のスタッフとともに議論している。
いつもは質問に対してすぐに反応できる大臣なのだが、この時はちょっと困ったような顔になっていた。

さらにニューヨークに滞在中、どんな議論をしていきたいかを問われると…。
「政治には非常に多くの課題があり、時には退屈だ」

「気候変動という大きな問題は楽しく、クールで、セクシーでなければならない」
ここで、あの「セクシー」発言が飛び出した。「セクシー」とは「興味深い、わくわくするような」という意味で使われることもあるから、そこまで大騒ぎする話ではないとは思う。

だが環境問題がこれほどまで深刻化している中で、やや誤解を生む表現だったのかなとも感じた。

ただこの「セクシー」という表現、小泉大臣のオリジナルではない。会見で隣に座っていた、国連気候変動枠組条約の前の事務局長の女性がこれまでよく使っていた言葉で、大臣はそれを引用しただけなのだが…。

海外メディア「何の具体策もない」

この会見でのセクシー発言、ロイター通信は「日本の新しい環境大臣が、気候変動対策は、“セクシー”にと発言」などという見出しで大きく報じたが、同時に「日本には何の具体策もない」と厳しい指摘をしている。

かみ合わないやり取り

会見では記者とのやり取りがかみ合わない場面もたびたび見られた。
記者:気候変動対策に後ろ向きなアメリカのトランプ大統領に向けてメッセージを。

小泉環境相:ぜひ会いたい。

記者:気候変動については?

小泉環境相:私の地元の横須賀には米軍基地がある。アメリカ人との交流はとても自然だ。横須賀は日米の友好のシンボルだ。大統領にあったら、日米の関わりについても伝えたい。
質問に対して、正面から答えずに個人的な話題に話をもっていってはぐらかすのは小泉大臣がよくやる手法だ。それがうける場合もあるのだが、さすがに大臣の立場になるとこれでは厳しい目で見られてしまう。

トランプ大統領について聞かれた時、「アメリカもきちんと環境問題に向き合うべきだ」とガツンと言ってほしかったのだが…。まあ、さすがに無理か。

そして国連本部に

このあと国連本部ビルに向かった大臣。脱炭素化のイベントでスピーチを行うことになっていた。

ニューヨーク滞在中、国連本部内でスピーチをするのはこの1回だけで発言内容が注目された。

大臣の出番は午後2時半ごろ。日本のメディアたちは今か今かと待ち構えていたものの、ほかの出席者が持ち時間を超えてスピーチを行っていたため、予定の時間が来てもなかなか始まらない。

ようやく大臣の出番がやってきた。すると大臣は冒頭で、「Japan keeps time」(日本は時間を守る)とひと言。
会場からは大きな笑いと歓声が沸き起こった。つかみはオーケーだ。会場の聴衆を一気に引きつけた大臣も、どこか誇らしげな表情だった。
しかし3分間のスピーチで目新しい内容や具体的な取り組みに言及することはなかった。

実際、温暖化対策にそこまで積極的ではない日本が現段階で言えることは少ないので、しかたない面もあるのだが…。

それにしても中身がない。私はこのあとスピーチの内容を原稿に書いて東京のデスクに連絡しなければならなかったが、「果たしてニュースにするほどのことなのだろうか」と考えてしまった。
スピーチ後に記者に囲まれた大臣はとても満足そうな表情だった。
「僕の前のケニアの方は、ずーっと制限時間超えて話しているんですよ。あれを見ていて、場の空気を感じますよ。まじかよってなっている。だからこれはどうしようかと考えて。脇で早く終わってくれないかなとやきもきしている国連職員さんの人に、『Japan keeps time』って紙に書いて見せたら、爆笑していて、よしと思って。まず最初はそれでいこうと。そういう瞬発力。あれが台本だったら逆にすごいよね」
うーん。自画自賛もいいけど、もうちょっと中身について話はないのかな…。

若者との意見交換

この日、大臣は温暖化対策サミットの関連イベントでニューヨークを訪れている日本の大学生や高校生とも意見を交わした。

いま環境問題に対するムーブメントはスウェーデンのグレタさんのように若い世代を中心に起きている。日本でもデモなどが行われているが、海外に比べるとまだまだ関心が薄いのが現状だ。

どうせなら大臣が海外の若者とガチンコで意見交換する場を取材したかったが、あまり厳しい質問が出ても困るからなのか、そういった場面はなし。

滞在中、「日本は発信力が足りないと痛感している」と何度も話していた大臣。ニューヨークまで来たんだから、日本の若者と話すだけではなく、得意の英語力を生かして、世界中の若い世代と熱い議論をしてほしかった。(続く)
社会部 環境省担当記者
杉田沙智代
2010年入局。和歌山放送局、大阪放送局で主に事件を担当したあと、2016年から社会部