消費税率引き上げ、今やるの?アメリカからは懸念も

消費税率引き上げ、今やるの?アメリカからは懸念も
「なぜこのタイミングで消費税率を引き上げるのか」
10月1日に実施された日本の消費税増税について、アメリカのメディアの間からは、懐疑的な声も出ています。アメリカの消費者や経済には、直接関係ないとも思える日本の消費税率の引き上げですが、なぜそのような指摘が出ているのでしょうか。(ワシントン支局記者 吉武洋輔)

アメリカ主要紙は懐疑的な見方

「消費税率の引き上げは、日本の経済成長に再びブレーキをかけるリスクが大きい。日本の最大の課題は財政ではなく、需要の弱さで、消費税率を引き上げる必要はない」
経済分野の有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルが9月25日に掲載した論評では、日本の今回の消費税について「必要ない」とまで訴えていました。

その根拠に挙げられていたのが「consumer confidence index」。今後の消費動向を予測する日本の消費者態度指数です。ことしに入って急速に落ち込んでいることに懸念を示しています。

この消費者態度指数は、9月まで12か月連続で前の月を下回っています。モノを買おうという意欲が低下している中で増税に踏み切れば、ますます消費を落ち込ませるという分析でした。

また、ワシントン・ポストは9月30日、日本の消費税について「経済減速の兆候も10%に増税」との見出しをつけて、消費税率の引き上げに疑問を投げかけました。
「消費税率を5%に引き上げた1997年と、8%に引き上げた2014年には景気が後退した。日本経済は去年の後半から減速していて、来年のオリンピックに向けた建設ブームによる需要も薄れている。需要の低迷による物価の下落が、成長のけん引役である投資を押し下げ、デフレからの脱却に向けた長年の努力が後退するおそれがある」
悲願のデフレ脱却に向けた、これまでの取り組みが台なしになるというのです。
このほか、ニューヨーク・タイムズも、“成長懸念にかかわらず日本は消費税率引き上げ”という見出しで、懐疑的な見方を伝えていました。

世界経済への影響

なぜ消費税率の引き上げに否定的な見方が目立つのでしょうか。日本経済研究の第一人者とされる専門家に話を聞きました。
ニューヨークにあるコロンビア大学の日本経済経営研究所会長、ヒュー・パトリック名誉教授(89)は、「今回の消費税による世界経済への大きな影響はないだろう」という持論を述べたうえで、次のように分析しました。
「消費税というのは直接、国民のポケットからお金が出ていくものだ。日本は世界で3番目の経済大国なので世界経済への影響力がある。日本政府が、財政支出を増やして増税の影響を緩和しなければ経済が少し減速する可能性があるだろうが、今のところリスクは低いだろう」

財政赤字よりもアメリカ経済減速に不安

日本では、増え続ける社会保障費を背景に、国と地方を合わせた借金は、1000兆円を超えて、財政の立て直しは大きな問題になっています。

このため、アメリカのメディアが、日本の財政再建という長期的な課題にほとんど踏み込んでいないことはやや気になるところです。
財政の悪化をかえりみず、大幅な法人税減税を断行した、トランプ政権のもとで、財政赤字への警戒感よりも、経済成長を優先する意識が広がっているのかもしれません。

こうした中、日本の増税にも注文をつける背景には、アメリカでも、景気後退への不安が高まっていることが関係しているようにも思えます。

1日、WTO=世界貿易機関は、世界全体のモノの貿易量の伸び率について、ことしは+1.2%と、去年の+3%から大きく下回る見通しを発表しました。
米中の貿易摩擦は、中国、ドイツなどの景気減速に加え、世界経済のけん引役だったアメリカでも、製造業の生産や輸出に悪影響を及ぼし始めています。

世界経済の減速につながりかねない要因は少しでも排除したいという思惑が、日本の消費税率引き上げに対する否定的な見方につながっているのかもしれません。
世界経済の先行きを見極めるうえでのリスク要因として、米中の貿易摩擦、イギリスのEU離脱に加えて、新たに持ち上がった、日本の消費税率の引き上げ。日本の経済財政運営のかじ取りに世界の関心が集まっています。
ワシントン支局記者
吉武洋輔

平成16年入局
名古屋局をへて経済部
金融や自動車業界などを担当
この夏からワシントン支局