アゲサゲ自在!仁義なきレビュー戦争

アゲサゲ自在!仁義なきレビュー戦争
ネットの通販サイトで売られている商品のレビューは、出品者にとって、売り上げを大きく左右する極めて重要なファクターとなっている。そうした中、多くの出品者が、レビューを、広告や宣伝の手段として、不正に操作している実態がわかってきた。ライバル会社の商品の評判をおとしめるための「サゲレビュー」まで登場。仁義なきレビュー戦争が始まっている。(ネット広告の闇 やらせレビュー取材班)

サゲレビュー

ことし8月、神奈川・箱根町のホテルに20人ほどのビジネスマンが集まって勉強会が開かれた。

参加者はいずれもアマゾンで商品を販売している人たち。

それぞれが被害にあっているという不正なレビューへの対策を話し合うのが目的だった。

ある参加者が紹介したのは、出品していた靴下への低評価の「サゲレビュー」。

「穴が開いていた」と、汚く脱ぎ散らかした写真が掲載されていた。検品して出荷したにもかかわらず、返品されてきた商品は真っ二つに切断されていたという。

また、ほかの業者の商品についたレビューの文章がそのままコピペされて低評価レビューとして付けられたり、数百件に上る大量の注文が入り発送したものの宛先不明で返ってきたりと、悪質なレビューや嫌がらせ行為で売り上げを落としていると次々に訴えていた。

「商品が爆発した」!?

勉強会に参加していた富山県に住む松田大輔さん。機械メーカーの元エンジニアで、去年脱サラしてヘッドライトを販売している。

松田さんの商品に「サゲレビュー」が付いたのはことし7月のこと。

「敷地に使うとき、爆発しました!ありえないです!弁償を求めるのに無視されました。最悪です。確認したらPSE認定もないです!変わんほうはいいです!!」(レビュー)
数日後、このレビューを付けた購入者から、爆発したというその商品が送り返されてきた。松田さんはその時の驚きを次のように話した。

「そもそも箱が開いてなかったので、おかしいなと思ったら、全く使われていない未使用品だったんです。もちろん、爆発なんてしていませんでした」

レビューには「弁償を求めるのに無視された」と書かれていたが、この購入者とやりとりをしたことはなかった。

単なる嫌がらせ、ではない

松田さんの商品に付けられたこの1件のレビュー。

単なる嫌がらせにとどまらないダメージを与えることになる。
レビューが投稿された翌日。アマゾン側がこのレビューを発見、「購入者から苦情が寄せられたため、商品の安全性を示す書類を用意してほしい」という連絡とともに、松田さんの商品は出品停止に追い込まれることになったのだ。
くしくもこの時期は、アマゾンが年に1回のセールを開催する直前だった。セールに備えて借金をし、大量の商品を仕入れていた松田さんにとっては、たった数行のレビューが重くのしかかることとなった。

松田さんはその後、製品の安全性を証明するための15種類の書類を用意してアマゾンと交渉、1週間以上経った後にようやく出品を再開することが出来た。

このサゲレビューがもたらした損害額は100万円に及んだという。
「同業他社がやってるんじゃないかとは思います。うちが邪魔だったんでしょうね。こういう嫌がらせをして、消えてもらったほうがいいんでしょう」

「レビュー操作」に手を染める出品者たち

こうした「サゲレビュー」に対抗して、みずから「レビュー操作」に乗り出す人も出てきている。

フィットネス用品を販売している男性のもとに「サゲレビュー」が届いたのはことしの夏。「ゴムが切れた」というレビューが相次いで投稿され、売り上げが3割ほど減少したという。

「何千個単位で作ってるので、どうしても不良品は混じるんですが、似たような内容(のレビュー)が似たようなタイミングでつくと、これはやられたな、と」

そこで、立て続けについた星1のレビューを削除することにした。

知人の紹介で「都合の悪いレビューの削除を請け負う」という中国の仲介業者に連絡を取った。送られてきたサービスの説明書きでは、世界各地のアマゾン上でレビューを削除できるとしていた。

1件当たりにかかる費用は800元(約1万2000円)。数行の文章にかかる費用としては安くはないように感じた。加えて、アメリカのアマゾンなら成功率は40%、日本やヨーロッパでは60%と記載されていた。

それでも、この費用は十分に納得できるものだと、男性は話した。

「1件で1万2000円というのは安い、すぐやろうと思いました。それで今後の数十万、数百万の売り上げがキープできるなら、全然アリですよね」
「サゲレビュー」のほかにも、男性は、「役に立った」ボタンという、アマゾンのレビューシステムを悪用され、攻撃を受けていると明かした。

「役に立った」ボタンは、アマゾンで、利用者が「参考になった」と考えたレビューを評価する仕組み。

この「役に立った」ボタンが押された回数が多いレビューほど、目につきやすいページの上位に表示される。

「スマホだと、1ページ目に上位3つのレビューしか表示されないんです。トップページに、どんなレビューが掲載されているかで売り上げが大きく左右されます」

男性の商品には、3つ、星1のレビューがつけられ、それぞれに20個ずつ「役に立った」ボタンが押され、その低評価レビューが上位に表示されていた。

このため、男性は、星5のレビュー4つに、合計で100個「役に立った」ボタンを押すよう業者に依頼、高評価のレビューが上位に表示されるようにした。

「これで、星1レビューが付けられても、上位に表示されることはまずない。1回ボタンを押してもらうのにかかる費用は60円ほどですので、これで1万円くらい。安いものです」

こういった対策が功を奏し、売り上げは元に戻ったという。

レビュー操作はこんなに簡単

自社の商品の販売を少しでも伸ばそうと、レビュー操作に手を染める出品者たち。
しかし、そんな簡単に誰でもレビューを操作することができるのか。
実は、ネット上で簡単に「レビュー」を購入することができるサイトがある。
そのサイトは、海外にサーバーがあり、日本とアメリカのアマゾンを対象に「確実・安全な方法でアマゾンのレビューを取得します」とサービス内容が堂々と掲載されていた。

価格表を見てみると、レビューの投稿は1件30ドル。ほかにも▽「役に立った」ボタンや違反を通報するボタンを大量に押したり、▽アマゾン内での商品の掲載順を上位に高めることができる、などと書かれていて、▽悪いレビューを削除しますというサービスもあった。
このサービスの利用に150万円ほど使ったという出品者の男性に話を聞くことができた。

購入したレビューは、スマートフォン用の保護フィルムのためのもの。いくつかはその後アマゾン側に削除されたというが、いまも商品ページに残っているレビューを実際に見せてくれた。

そこには「キャッチコピー通りに、簡単にキレイに貼ることができました」と書かれていて、星5が付けられていた。

「例えば、レビューを1000個購入したら300万円かかります。でも、それによって商品を検索画面のトップに表示させることができれば、1つの商品でもひと月に500万円、600万円と売り上げが出るので、すぐに“投資”した資金を回収できますね」大金を払ってレビューを購入しても十分な見返りがあるというのだ。

「アマゾン側もレビューを監視しているので短期間に大量のレビューがつくと監視対象になってアカウントが停止されることもあります。ただ、監視対象になるまで数ヶ月かかるので、その間に売り抜けてしまおうと考えている“捨て身”の業者も多いのが実情です」

男性は、このサイトのほかにもレビューを代行している業者は数多く存在していて出品業者の間ではいかに”アマゾンの裏をかく”かが常に研究されていると話した。

「セラーとして消費者にいい商品を届けたいと思っているが、これだけアマゾンで不正なレビューがまん延していると、ある程度不正なレビューを入れないとそもそも商品の販売すらできない状況になっている。現状は不正のレビューを入れる業者が圧倒的にアマゾンを出し抜いている状況だ」

やむを得ない、しかたない…

レビューをつけられる側がそれを自由に操作できるということは、本来のレビューの趣旨とは異なる。置き去りにされているのは消費者だ。

自分の商品を守るためと話した男性に、いくつかの疑問をぶつけてみた。

Qどういう気持ちでやっている?

Aできるだけルールを守ってということは思ってるんですけど、ルールを守らない相手と戦って行くには、自分もギリギリのところまで自分のレベルを落として戦っていかないと勝ち残れないので、それはやむを得ないことだと思っています

Q良心が痛むことはない?

A自分より明らかに品質の落ちるセラー(出品者)が自分のカテゴリーの上位にいて、自分よりいっぱいお客さんにものを売るよりは、明らかにいい自分の商品がよく売れて、消費者にたくさんのいい商品が届くほうが、お客さんにとってはいい。悪いことというよりかは、自分の商品を守るためにはしかたないことだと思っています。

Qだまされるほうが悪いと?

Aそうは言わないけど、消費者が賢く、もっとレビューを吟味して、本物かどうかの見分けが付けられるようになってほしいとは思います。消費者の無知につけ込んで悪いことをする「やから」がいっぱいいます。それは事実ですよね。

Qご自身も、その「やから」の1人になりかかってるんじゃないですか?

男性は「うーん」と、ただ笑うだけだった。

このインタビューから一か月後。男性は、自社の商品の星1の低評価レビューに300個「役に立った」ボタンが押されたため、業者に依頼して、星5のレビューに1000個の「役に立った」ボタンを押し返したと話していた。

レビューをめぐる攻防は過熱するばかりだ。

私たち消費者はどうすれば

では、私たち消費者はどうすればいいのか。

ネット情報社会に詳しい国際大学GLOCOMの山口真一講師は「やらせレビューがまん延していることは人々の購買判断を誤らせるだけでなくネットの情報そのものが信じられなくなってしまう点で、私たちの社会にマイナスで危険なものだと認識する必要がある。まずは、ネット通販を扱うプラットフォーマーが対応すべきだが、すべてのレビューを監視して削除していくのは現実には難しいので、そこだけに責任を押し付けても問題は解決しない。私たち1人1人がネットの情報のなかには常にフェイクが混ざっている可能性があることを認識していくことも必要で、それが自らの身を守ることにつながる」と指摘している。