タトゥー、OK?

タトゥー、OK?
タトゥー(入れ墨)を体に施した外国人で混み合う電車、スタジアム。
日本代表の活躍もあって盛り上がりをみせる「ラグビーワールドカップ」では、タトゥーのある海外選手やファンが日本を訪れています。
熱い試合のあと、汗を流すのに欠かせないのがお風呂。でも、日本の温泉や銭湯では「入れ墨の客はNG」だったような…。
どんな対応をしているのか聞いてみました。(ネットワーク報道部記者 和田麻子、鮎合真介)

“タトゥーの選手”に温泉を

ラグビーワールドカップをきっかけに、タトゥーがある外国人の温泉入浴を受け入れた福島県いわき市の「小名浜オーシャンホテル&ゴルフクラブ」。これまではタトゥーをしている人の入浴を断っていました。
しかし、9月にサモア代表が事前キャンプで宿泊することになり、対応を迫られました。サモアを含むポリネシア地方はタトゥー文化発祥の地として知られ、多くの男性が決意や覚悟を決めた際にタトゥーを入れる風習があるためです。

ホテル側は「選手のタトゥーは『文化』であることが明確なので入浴は問題ない」と判断しました。

ホテルによると、受け入れにあたって、タトゥーがある人の入浴に反対する意見が電話で1件、寄せられたものの、ふだんの利用者からはおおむね理解する声が聞かれたそうです。

サモア代表の宿泊が終わったあとは、これまで通りタトゥーがある人の入浴を断っているということですが、ホテル側は来年の東京オリンピック・パラリンピックで外国からの観光客が増えることを見据え、タトゥーがあっても入浴を認めるかどうか改めて考えていきたいとしています。

“タトゥー・フレンドリー”温泉施設を紹介

ラグビーワールドカップの準々決勝を含め、5試合が予定されている大分県。温泉地として内外に知られているだけに、多くの外国人が試合観戦や観光で訪れるとみられています。

このため、大分県は3月、タトゥーがあっても入ることのできる温泉施設を紹介する英語のウェブサイトを開設しました。
「タトゥー・フレンドリー」な施設として、県内の95の温泉施設の名前や場所などを写真付きで紹介しているほか、日本で温泉に入った経験のない外国人向けに入浴マナーなどを説明する動画も掲載しています。
大分県は「海外から訪れる人の中には『タトゥーがあると日本のすべての温泉や銭湯に入れない』と思っている人もいるので、そうした誤ったイメージを払拭(ふっしょく)していきたい」と話していました。

期間限定で

熊本県では、ラグビーやハンドボールなどの国際スポーツ大会が開かれるのに合わせて、タトゥーがあっても銭湯を利用できるキャンペーンを9月26日~12月16日の期間限定で行っています。
ふだんタトゥーのある人は入浴できないという熊本市内のある銭湯。こちらでは、外国人観光客に銭湯の文化に親しんでもらおうと「おもてなしシール」が作られました。
くまモンの絵に「みなさんと銭湯に入れて嬉しいです」という日本語と英語のメッセージを添えたシールを体に貼れば、タトゥーを隠さなくても入浴できるそうです。

県によると、銭湯を利用した外国人からは「日本の銭湯では『タトゥーは好ましくないものだ』ということは知っていたので、良い取り組みだと思う」といった声が寄せられているということです。
一方、SNS上では「特定の銭湯に限定しているんだから、シールなしで入浴できるようにしたってよくないか?」「『外国人だけ貼ってね』って、それもまた差別的だよ。シールの色も日本人に多い肌の色だし、逆に目立つよコレきっと」といった意見も出ています。
これについて、熊本県は「キャンペーンを行う前から、いろいろな意見が出ると思っていました。銭湯を利用する外国人観光客には『タトゥーは好ましくないものだ』とする多くの日本人の考え方も尊重してもらいながら、お互いに交流できたらと思っています」と話しています。

国の対応例は

タトゥーと入浴をめぐり、国の観光庁は全国のホテルと旅館を対象にアンケート調査を平成27年(2015年)に行っています。
回答したおよそ600施設のうち、利用を断っている施設は56%に上り、理由としておよそ6割が「風紀・衛生面」を挙げて、「自主的に断っている」としています。タトゥーへの抵抗感が根強いことをうかがわせる内容でした。

この結果も踏まえ、観光庁は平成28年(2016年)に具体的な対応をまとめ、関係団体に文書で通知しました。

タトゥーは、▼宗教や文化、ファッションなどのさまざまな理由があり、▼衛生上の支障が生じるものではないとした上で、次のような対応を紹介しています。
「温泉は日本の観光の1つのカギになるコンテンツで外国人観光客の関心も高い。各施設は対応事例を参考になるべく摩擦が起きないよう、柔軟に対応してほしい」(観光庁観光資源課 小林誠課長補佐)

苦慮する業界

業界の受け止めはさまざまです。
全国およそ1万5000軒のホテルや旅館でつくる「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会」の清澤正人専務理事は「対応に苦慮しているのが正直なところです。平成4年の暴力団対策法の施行以降、入れ墨を排除する動きが定着する一方、観光庁は、タトゥーをした人の入浴は支障が生じるものではないとしています。統一した見解がないため、各施設の判断にゆだねざるをえません」と話しています。
一方、こんな意見もありました。
全国のスーパー銭湯などでつくる「温浴振興協会」の諸星敏博代表理事は、「タトゥーをした人の排除は、もう考えなくてはならない時期にきているのではないか」と指摘しています。

諸星さんによると、1980年代の後半ごろからスーパー銭湯が各地にでき始め、入れ墨のある反社会的勢力が来店するようになりましたが、暴力団対策法の施行以降は、店側とのトラブルも減ったそうです。

ただ、諸星さんは「入れ墨をした人、イコール反社会的勢力の認識が今でも根強くあり、店側は入れ墨・タトゥーのある客を受け入れて、常連客が離れてしまうのが怖いんです」と、対応が広がらない現状を打ち明けてくれました。

諸星さんによると、関東地方では、およそ400のスーパー銭湯などの施設のうち、タトゥー・入れ墨のある人の入浴を受け入れているのは、5か所程度にとどまるということです。
「多くの外国人観光客に日本の文化を広く知ってもらうためにも、正直、もういいかげん排除する対応は考えなくてはならない時期にきていると思います」(諸星代表理事)

どうする?2020年

ネット上でもこんな意見が出ています。
東京オリンピック・パラリンピックまで1年を切りました。ラグビーワールドカップの日本開催をきっかけのひとつとして、互いの文化や考えを尊重しつつ、どのように折り合いをつけていくのか関係者の模索は続きそうです。皆さんはどう考えますか?