“やらせレビュー”のリアル

“やらせレビュー”のリアル
ネット通販で、消費者が商品購入のよりどころにしている「レビュー」が不正に操作されている。商品を使いもせずに最上位の★5や高評価のコメントをつけるなどの「やらせレビュー」が広がっている。説明書きの文章をコピペしただけのものや翻訳ソフトにかけただけのような不自然な日本語のレビューも数多く見られる。そのからくりに迫る。(ネット広告の闇 やらせレビュー取材班)

想像で書いた“レビュー”

「走るときのストレスも軽減。しっかりしているので、外れる心配もありません」

ランニング中に、スマートフォンを腕に固定するアームバンドのレビュー。

実は、まったくの創作だ。

このレビューを書いた福岡県の30代の会社員の男性に話を聞くことができた。

自宅を訪ねると、男性はまったく開封されていないアームバンドの商品を見せてくれた。
「開けてなかったので当然使っていません。ジムにも通っていません。使ったという感じを出したかったので、そう表現しました。まさに想像ですね」
男性は、これまでスマートフォン用のフィルムやUSBケーブル、ゲーム用品など60点ほどの商品について、このようなうそのレビュー、やらせレビューを書いてきたと言う。文章は同じような商品のほかのレビューから流用したり、架空のストーリーで創作した。

もうけのからくりは

なんのためにやらせレビューを書いているのか。

それは、報酬が得られるからだ。

きっかけは、去年、ネットで副業の仕事を探していた時のこと。

あるSNSのグループでレビューの書き手を募集していた業者と知りあった。

業者が指定した商品をアマゾンで購入して、高評価のレビューを書くと、商品の購入代金を返金した上に、レビュー1件当たり数百円の報酬がもらえるというものだった。

“0円転売”という手法だった。

男性は、実際に商品を購入、送られて来た商品のレビューを書き込んでから、レビューの内容を業者に送ると、商品の購入代金と報酬がインターネットで送金されてきた。手続きは、すべてネット上ですんだ。

レビューを書き込んだあとの商品はフリマアプリで転売、これまで6万円ほどの利益があった。男性は転売する手間が次第に面倒になり、今は、行っていないと話した。
「ゼロ円で仕入れて売れたらまるまる利益って想像もしていなかった方法ですごい画期的だと思った。主婦とかでも、自分が知っている人で月20万円以上稼いでいる人もいる」

マニュアルがSNSで

同様の方法で「月に20万円ほどを稼いだこともある」と話す茨城県に住む男性は、やらせレビューでもうけるためのマニュアルのようなものがSNS上で販売されていると明かした。男性は3万円で購入したという。

そこには、▼レビューの書き方は、商品の概要欄に書かれている文言を参考にすること、▼星(評価)は基本5つで、レビューの長さは5行程度にするなどといったノウハウのほか、▼いっぺんに大量のレビューを書かないことや▼名前や住所を変えて作成した複数のアカウントを使い分けることなど、アマゾンからアカウントを閉鎖されないようにする方法も記載されていた。

「最初は何も知らない状態で始めましたが、この方法でやれば簡単に転売ができる。最初に支払った3万円は、すぐに元が取れました」

罪悪感は…ない

男性は、やらせレビューの“ビジネス”について、次のように話した。

「ゼロ円で仕入れているので、売れた代金がそのまま利益になるんですから、とにかく早く売るということだけを考えています。自分の負担はなしで大きくはないけどお金が手に入る。たとえアマゾンにアカウントを閉鎖されても新しく作り直せばいいだけです。投資に比べたら入ってくる額はそれほど多くはないですが、『ノーリスク・ミドルリターン』という感じですね」

こう語る男性だが、「やらせレビュー」は本来のレビューの趣旨とは異なる。

書き込むこと自体が、ほかの消費者をだますことにもつながる。

罪悪感はないのか。

男性は「サクラのようなことをやっているという認識はあります」としたうえで、次のように続けた。

「タダで商品をもらうモニターはふつうの企業もやっている。それで本当のことを書いているかどうかだって怪しいじゃないですか。使ってみてウソを書くか、使わずに書くか、その違いだけだと思います。ちょっと見れば怪しい商品かどうかなんてすぐに分かるんですよ。正直、それにだまされるほうがどうなの?という感じです」

ネットにあふれるレビュー募集

こうしたやらせレビューの募集はインターネットで簡単に見つかる。

なかでも活発にやり取りが行われているのがフェイスブックのグループだ。

主に、メンバーにならないと投稿を見ることができない非公開のグループに日々、商品の画像が投稿され、参加しているメンバーに商品の購入とレビューの書き込みを募っていた。

ことし8月時点で私たちが確認しただけでもこうしたレビューグループがフェイスブックに20以上存在し、私たちも実際に投稿を見ることができた。

参加しているメンバーの数が3万人を超えるグループもあった。

こうしたグループの主催者や中心となって投稿している人物を見てみると日本人の名前のほかに簡体字などの漢字をつかった中国風の名前が多く見つかった。

アマゾンは規約で禁止・法的規制は

こうしたやらせレビューは法的に問題がないのか。

アマゾンでは、カスタマーレビューのガイドラインで、金品などの対価を受けることを目的として書き込むレビューを禁止していて、サイトから削除すると定めている。

一方、やらせレビューそのものを取り締まる法律は国内では整備されていない。

しかし、消費者庁は、景品表示法のガイドラインにあたる留意事項のなかで、事業者が代行業者に依頼して、レビューを大量に書き込ませ、サイト上の評価を変動させて人気商品のように表示させることについて、不当表示にあたり問題だ、としていて、このようなケースは、景品表示法違反にあたる可能性がある。

自衛の手段は

こうしたやらせレビューにだまされないようにするために消費者はどうすればいいのか。やらせレビューを見抜くためのツールも登場している。

ことし7月に公開された「サクラチェッカー」というサイト。
https://sakura-checker.jp/

商品のURLを入力すると「サクラ度」が%で表示される。

やらせを見抜くポイントは?

サイトを開発したのは、IT大手のエンジニアとして働く40代のユウさん。

ユウさんに、疑わしいレビューを見分けるポイントを聞いた。
▼まずは、レビューが付けられた日や星の数。

あるワイヤレスイヤホンのレビューは、600件ほどのレビューのうち、7月18日の1日だけで200件近いレビューが書き込まれて、そのほとんどが5つ星の評価だった。

その前後にはレビューが0件の日もあり、明らかに異常な分布になっていた。
業者がなんらかの方法で大量に書き込ませた可能性が高いという。
▼さらに、不自然な文章。

あるイヤホンのレビューでは「私はそれを私の耳に装着する」と書かれていた。
外国の人間が翻訳ソフトなどを使って書き込んでいる可能性がある。

また、まったく関係ない商品のレビューが書き込まれていたり、まったく同じ文章が、別のアカウント名で別の日に書き込まれているようなケースもある。

「サクラチェッカー」では、こうした不自然な文章や評価の偏り、書き込まれた日付の偏りのほか、レビューを書き込んだ人の履歴や商品名の付け方がアマゾンの規約に違反しているかなど、独自の基準を設けて、「サクラ度」を判定している。これまでに分析した商品は10万点。このうち、サクラ度が60%を超えていると判定した商品は、およそ1万7000点、全体の16%を占めていた。

別の色で同じ文章が…

ユウさんにアドバイスをもらい、取材班で、アマゾンのレビューを調べると奇妙なレビューが次々に見つかった。

関係者によると、アマゾンでのレビューは原則、購入した商品ごとに1人1回しか書き込めないが、あるワイヤレスイヤホンでは、異なる色ごとに全く同じ文が何度もコピペして投稿されていた。

ことし8月下旬の時点で630件ほどレビューが付いていたが、このうち色が違うだけでほとんど同じ文章のレビューが97組見つかった。

一方、レビューの数が、極端に増減している商品も見つかった。

あるゲーミングチェアの商品は、ことし7月時点で1500件以上あったレビューが8月中旬に110件ほどまで減少したあと、わずか2週間で600件以上に増えていた。

これは、アマゾン側が不正なやらせレビューを検知して削除し、さらにそのあと、業者側が大規模にレビューを書き込んだのではないかと考えられる。

ネット通販のプラットフォームは

アマゾンジャパンの元社員で、ネット通販のコンサルティングをしている「GROOVE」の田中謙伍CEOは、ネット通販のプラットフォームが、レビューや商品情報の提供のあり方について検討することが必要だと指摘する。

「アマゾンにとって、カスタマーレビューは、ビジネス戦略上、非常に重要な役割を果たしてきたと言えます。もともとアマゾンは、良いレビューだけではなく悪いレビューも全部見られるようにすることで、顧客に公平な情報を提供し、顧客が購入判断しやすい場を提供し、顧客からの信頼を得てきた側面がありました。ところが、当初の考えとは裏腹に、やらせレビューが目立つ現状があります。このような状況下でレビューの真偽も含めた判断を顧客に委ね、購入の意思決定が行われてしまう仕組みはできるだけ改めて行くべきでしょう。アマゾンはこれに対して疑わしいレビューを削除するなど対策をしていますが、悪質業者の手口も巧妙になってきており、いたちごっこになってしまっていると予想します」

「顧客にいい商品かどうかを判断してもらうために、どういう仕組みをつくればいいのか、新しい購入の意思決定のヒントを考えて提示することがプラットフォーマーとしての責任であり、販売者も改善を継続していくべきだと思います」

やらせレビューについては、クローズアップ現代+「追跡!ネット通販 やらせレビュー」(10月2日(水)22時~)でも詳しくお伝えします。