マンガをネットに無断掲載 「漫画村」の元運営者を逮捕

マンガをネットに無断掲載 「漫画村」の元運営者を逮捕
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人気漫画をインターネット上に無断で掲載していた海賊版サイト「漫画村」の元運営者が24日、身柄を拘束されたフィリピンから日本に強制送還され、福岡県警察本部などは著作権法違反の疑いで逮捕しました。警察の調べに対し容疑を認めるかどうかを保留し、「弁護士と話して決める」と供述しているということです。
逮捕されたのは、海賊版サイト「漫画村」の元運営者、星野路実 容疑者(27)です。

星野容疑者は24日、拘束されていたフィリピンから日本に強制送還され、移送により日本の領空に入った航空機内で逮捕されました。

成田空港を経由して午後8時前に福岡空港に到着し、福岡市内の警察署に移送されました。

福岡県警察本部などによりますと、星野容疑者は人気漫画「ONE PIECE」の画像ファイルを「漫画村」で公開して誰でもダウンロードできるようにし、漫画を出版した「集英社」の権利を侵害したとして、著作権法違反の疑いが持たれています。

警察の調べに対し、容疑を認めるかどうかを保留し「弁護士と話して決めます」と供述しているということです。

一連の事件では、これまでにサイト運営の指示役とされる安達亙被告(38)など、男女合わせて3人が逮捕・起訴されていて、警察は中心的な役割を果たしたとみられる星野容疑者の取り調べを進め、サイトの運営実態の解明を本格化させる方針です。

元運営者 機内では

海賊版サイト「漫画村」の元運営者、星野路実容疑者(27)は、日本に送還される飛行機の機内で、機体後部の座席に淡々とした表情で座り、時折、周りを囲むようにして座る日本の警察官に話しかける様子も見られました。

元運営者 成田空港での様子

星野路実容疑者を乗せた旅客機は、24日午後3時20分ごろ、フィリピンのマニラから成田空港に到着しました。

マニラを出発したときと同じ「Manila Mura」と書かれた紺色のTシャツを着た星野容疑者は、多くの捜査員に取り囲まれ、終始、無言のまま入国審査場へと向かっていました。

漫画村とは

海賊版サイトの「漫画村」には、漫画や雑誌など5万点以上が作者や出版社に無断で掲載されていました。

こうしたコンテンツは誰でも無料で閲覧することができたため、おととし秋ごろから多くのアクセスを集め、コンテンツ海外流通促進機構=CODAの試算では被害額はおよそ3000億円と推計されていました。

去年2月には、漫画家でつくる日本漫画家協会が「このままの状態が続くと、作品が作り続けられなくなり、日本の文化が滅びてしまう」と、海賊版サイトを利用しないよう読者に呼びかける異例の声明を発表したほか、政府も知的財産戦略本部などで海賊版サイト対策を検討するなど、大きな社会問題となっていました。

漫画村のサイト自体は、去年4月中旬に突然、閉鎖されましたが、福岡県警察本部などが被害を訴える複数の大手出版社から告訴状の提出を受けて、著作権法違反の疑いで捜査を進めていました。

出版社の団体「実態解明に期待」

星野容疑者が逮捕されたことについて、大手出版社などで作る出版広報センターの海賊版対策WGの伊東敦座長は、「漫画村という史上最悪の海賊版サイトは、出版文化や、著者の皆様に非常に大きな損害を与えてきた。容疑者の逮捕によって、収入源や運営の仕組みなど実態解明が進み、二度と同様のサイトが出てこないことを期待したい」と話しています。

星野容疑者 サイト開設の経緯

海賊版サイトの「漫画村」は、少なくとも2016年のはじめごろに開設されたと見られていますが、星野容疑者は、漫画村の開設以前から、複数のWEBサイトを運営していました。

2013年に証人として出廷した裁判の記録によりますと、星野容疑者は、当時、東京都内に住み、ウェブ作成やサーバー管理を主な仕事としていて、このうち、「楽々アンテナ」というサイトでは、月に100万円から300万円ほどの収入を得ていたと証言しています。

このサイトは、ネット上のニュースや掲示版の書き込みなどをまとめた、いわゆるまとめサイトで、ネット広告を掲載して収入を得る仕組みになっていて、こうしたWEBサイトの運営を通じて、漫画村の立ち上げに至ったものと見られます。

また、星野容疑者の会社の登記や関係者への取材によりますと、漫画村が開設される前の2014年から東京の中野や秋葉原などで、店員がアニメのキャラクターの格好をして接客するバーや、メイド喫茶を運営していました。

当時、店で働いていた従業員の女性によりますと、星野容疑者は当初、バーに客としてたびたび訪れる中で、「店を経営したい」と申し出て経営を引き継いだということです。

女性は「なぜかわからないが、若いのにお金をすごく持っているなと感じていた。経営を引き継いでからは、自分の意に沿わない人たちはクビにしたり、強権的な印象があり、自分もついていけなくなった」と話しています。

また、従業員だった別の女性は「漫画やアニメは好きなようでした。周りにはプログラミングの技術があって、10代の頃からサイト運営で稼いでいると話していた」と話していました。

また、取り引きで店に出入りしていた男性は「店は繁盛しているわけではないのにお金を持っていて、星野容疑者は『インターネットの占いサイトを運営して成功した』と言っていた」と話しています。

海賊版サイトの現状は

去年4月に漫画村が閉鎖されたあともインターネット上では、漫画などの海賊版サイトが後を絶たず、多くのアクセスを集める状況が続いています。

大手出版社などでつくる出版広報センターによりますと、確認されているだけで、いまも300以上の漫画の海賊版サイトがあり、中には、“漫画村の後継”を名乗るサイトも出ています。

このうち漫画村が閉鎖して間もない去年5月ごろに開設したとみられるサイトは「漫画村クローン」とみずから宣伝し、9万冊余りの漫画が無料で読めるとして、先月だけで4000万のアクセスを集めていると見られていましたが、大手出版社が今月上旬、サイトのサーバー管理に関係している会社があるアメリカの裁判所に提訴し、現在、サイトは閲覧できない状態になっています。

海賊版サイトを監視している「コンテンツ海外流通促進機構」=CODAが、先月1か月間に大手出版社の公式のサービスを含む国内外の漫画やアニメに関するWEBサイトの日本からのアクセス数を調べたところ、上位10のうち、少なくとも4つが海賊版サイトでした。

このうちの一つは、漫画や雑誌、小説など2万点以上がこのサイトを通じて無料でダウンロードできるようになっていて、いまも毎日のように新作が追加されています。

このサイトは、月に1500万ほどのアクセスを集め、ほとんどを日本からのアクセスが占めているとみられます。

「コンテンツ海外流通促進機構」では、こうした海賊版サイトに対し、著作権者からの要請を受けて逐次、作品の削除要請をメールなどで送っていますが、そもそもサイトの運営者が不明で、分かったとしても削除には一切応じないところも多くあるほか、いったん削除したあとに、URLを変更して再び掲載する例も多く、いたちごっこの状況が続いているということです。

コンテンツ海外流通促進機構の後藤健郎代表理事は「日本の漫画は人気があるので世界の犯罪者のターゲットになってしまっている。ひとたびデータが流通すれば、それがまた他の海賊版サイトに流用され、国境を関係なく拡散してしまい、止めることは困難だ」と話しています。

海賊版サイトへの対策と課題

漫画村の登場以降、出版業界などでは海賊版サイトへの対策に力を入れてきました。

その一つが海賊版のサイトの収入源の一つになっているとみられるネット広告への規制です。

出版社などで作る著作権に関連する9つの団体が、広告の事業者などで作る3つの団体との間で、海賊版サイトのリストを共有し、広告を掲載しない取り組みを進めています。

また、検索サービスを提供しているグーグルに要請して、検索結果に、海賊版のサイトのトップページが表示されないようにする取り組みを去年11月から始めています。

しかし、広告の業界団体に加盟していない会社もあるほか、SNSなどを通じて検索サイトを経ないでも海賊版サイトにアクセスできる方法が広がるなど、対策が徹底されず、その効果は限定的なものにとどまっています。

出版広報センター海賊版対策WGの伊東敦座長は、「運営者の身元を隠す技術も進んでいて、対策はどんどん困難になり、漫画という文化、出版文化そのものが崩壊しかねない危機感を抱いています。今後新しい作品を生み出していくためにも、読者のかたには海賊版ではなく正規版のサービスを使ってもらいたい」と話しています。

一方、漫画村が問題になった去年の春以降、政府も悪質な海賊版サイトについて対策を検討してきました。

具体的には、通信事業者が悪質なサイトを閲覧できないようにする「ブロッキング」や、現在は音楽と映像に限られている違法なダウンロードの対象を、漫画や写真、論文など著作物すべてに拡大する著作権法の改正などが検討されました。

しかし、「ブロッキング」の導入は、通信の秘密を保障した憲法に違反するおそれがあるといった指摘があり、また、著作権法の改正は、画像を保存する「スクリーンショット」なども違法になる可能性があり、インターネットの利用者が萎縮するのではないかという反対意見などが出て、法制化には至っていません。

「海賊版サイト」による著作権の被害が後を絶たないことから、政府は「引き続き有効な対策を検討したい」としています。