トリエンナーレ 渦中の津田大介氏 心境語る

トリエンナーレ 渦中の津田大介氏 心境語る
愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で開幕から3日で展示の一部が中止された問題。これについて、芸術監督を務めているジャーナリストの津田大介氏がNHKのインタビューに応じました。

わずか3日での展示中止

まず、愛知県の大村知事が開幕からわずか3日で、「表現の不自由」をテーマにした展示を中止したことについて、どう感じているか聞きました。

「本来、民間であれば普通に自由にできるような企画がなぜこういった公立美術館などの公共性が高い場所や、行政がやる文化事業芸術祭でできないのか、これが僕の元々の出発点にありました。社会的・政治的なテーマを提起し、議論を呼ぶような作品をきちんと、こういう芸術祭で展示し、議論しながら75日間続けることで、新しい表現のモデルケースを作りたいというのが最初の思いでした。それが、3日間しかできなかったことに関しては、本当に忸怩たる思いがあります。多くのお客さんに見て自分で考えていただくことを目的にしていたので、その意味で非常に残念です」

抗議をどう考える?

この展示については、芸術祭の事務局などに厳しい抗議の声が寄せられました。

これについて問うと、次のように語りました。

「複合的な要因ではあるんですけれど、電話抗議がどんどん苛烈になって、事務局の方でも受け切れなくなった。準備はしていたんですけれど、かなり厳しい指摘とともに、脅迫ともとれるような電話も含めて殺到して、1日目、2日目には事務局の機能がほとんどまひしてしまったんですね。同時にオープニングの時期は、さまざまな予定があり、本来やらなければいけない業務も滞って、このままだと本当に75日間、安全かつ円滑な運営ができないと。作品の安全管理もできないということになりますから、今度はお客様の安全にも関わってくるという状況がありました。とりわけ大きかったのが京都アニメーションの事件ですね。ちょうどトリエンナーレの開幕2週間前に起きて、それを示唆するような脅迫電話や、逮捕されましたけれどもファックスもありました。770通の脅迫メールも来ていて、こちらはまだ逮捕されてないという状況がある。あの3日間で起きていたのは、それ(事件)をほのめかすような脅迫がかなりの数、来ていたんですね。お客さんが犠牲になるようなことは本当にあってはならないことですし、ほのめかすことをずっと聞かされる職員の心的なストレスも非常に大きかった。8月2日の朝くらいには『このまま75日間も無理です』という現場からの悲鳴があがっていました。その状況下で、大村知事から、『これはもう円滑、安全にはできないからまず中止をしてはどうか』という示唆をいただいたので、僕も合意をして、中止という判断になりました。僕が一番感じているのは、今回の展示内容に怒っている方のほとんどが、実際の展示をご覧になっていない。そして、展示や作品がどういう意図で作られたものなのかという文脈も踏まえてないということですよね。そこが十分に事前に伝えられなかったことについてはさまざまな思いがありますが、そのあたりは、検証委員会による検証結果を待ちたいと思います。今回の問題で感じるには、鑑賞者の権利がないがしろにされていることです。作品を実際にみて、怒ったり、批評したり、考えが変わったりするという鑑賞や批評する権利が奪われていると思います」

展示内容は?

議論を巻き起こした今回の表現の不自由をテーマにした作品の数々。主に2015年に、一度、公立美術館で展示が断られた作品でした。

津田氏はどう感じていたのでしょうか。
「実際の展示を見たらおそらく『うわっ』と思う作品もあるかもしれないですが、それがなぜ撤去されたのか、そして、その作品にはどのような背景があるのかということも込みで鑑賞することで、いろんなことを考える問いかけになっていると思うんですよね。あくまで事実として公共性の高い場所から撤去されたということを、その作品と、撤去された経緯を一緒に置くことで、考える機会を作りましょうということではあったので、そもそも僕は、展示内容のよしあしの話をするつもりないんですよね」

作家側からの批判について

一方で、展示を中止したことについて作家たちから津田氏らを批判する声も起きています。

芸術祭は来月14日まで開かれていますが、今後についてどう考えているのか聞きました。

「複数の作品が、本来の状態で見られなくなっているということについては、実現したかったトリエンナーレではないので非常に残念な思いがあります。同時にお客さんの見たいという気持ちに対しても非常に申し訳なく思っています。また、実行委員会の方々、参加されていた作家たちに対して、十分な説明がなく中止に至ったこと自体は本当に申し訳なく思っています。ただ、そのうえで、今後、どうしていけるのかということに対して、僕自身も作家や実行委員と協議していきたいですし、決してこれで終わりではなくて、どのような形で次に進めるのかということをまずやらなければいけない。ただ、これは本当に難しいプロセスで、実際に検証委員会も動いていますし、警備をどうするのかというところも含めて乗り越えなければいけないハードルがたくさんあります。それらを共有しながら、次にどういうことができるのか協議をしたいと思います」