“ポテトショック”を防げ! ~ジャガイモ産地はいま

“ポテトショック”を防げ! ~ジャガイモ産地はいま
身近なおやつ、ポテトチップス。

しかし、おととし、スーパーなどの店頭から次々に姿を消した時期がありました。

原料となるジャガイモは、大半が北海道産。この畑が台風で大きな被害を受けたことが原因でした。

業界関係者の間で“ポテトショック”と呼ばれた危機。再びこうした事態に陥るのを避けようと、北海道では農家と菓子メーカーが二人三脚で対策に取り組んできました。産地はどう変わったのか、取材しました。(帯広放送局記者 加藤誠)

期待の新品種が収穫期

9月に入って私が訪れたのは、北海道・十勝平野に広がる、芽室町の農家の畑です。6ヘクタールの広大な農地で、ポテトチップス用のジャガイモが収穫のピークを迎えていました。

ジャガイモは「ポロシリ」と呼ばれる新しい品種で、従来のものよりも病気や水害に強いうえ、収穫量も多く見込めるというすぐれもの。

開発したのは、契約する菓子メーカー「カルビー」のグループ会社です。
契約農家の竹川徹さんは、おととしからこの新品種を導入して、栽培しているということです。

収穫作業を進めていた竹川さんは、「収穫量は平年よりも少し多いのかなと思います」と笑顔でした。

店頭から消えたポテトチップス

竹川さんが新品種を採用したのは、“ポテトショック”が1つのきっかけでした。

スーパーに、コンビニに、ふだんはたくさん並んでいるはずのポテトチップスが、こつ然と姿を消したことをまだ覚えている方も多いのではないでしょうか。
3年前、国内最大のジャガイモの産地、十勝地方を台風が相次いで襲い、畑が浸水。収穫直前のジャガイモが流されたり、傷んだりする被害を受けました。

メーカー各社は、原料となる国産のジャガイモの7割から8割を北海道から仕入れています。秋に収穫し、九州産が流通する春先まで、北海道の原料を貯蔵して製造しています。

しかし、「カルビー」では、北海道産の調達が1割減少した結果、翌年4月に在庫が尽き、ポテトチップスの多くの商品で販売休止や取りやめを余儀なくされたのです。

産地の分散化でリスク減少

これを教訓にカルビーでは、安定してジャガイモを調達するための対策の強化に乗り出しました。

新品種の普及がその1つ。もう1つが産地の分散化です。

これまで国産原料の3分の2を、北海道東部の地域に依存していました。このリスクを軽減するため、新たに札幌市の近郊や宮城県、熊本県のコメ農家に、加工用ジャガイモの栽培を始めてもらうように交渉しました。

コメの消費が低迷しているので、水田から転作などをすれば新たな収益源になると懸命に勧めたということです。

この結果、各地で作付けを増やすことができました。

地域の農家への支援も強化

加えて、高齢化や人手不足に悩む農家へのきめ細かい支援も強化しています。ジャガイモは、栽培に手間がかかると言われています。

このため、メーカー側が種芋の植え付けや収穫作業を代わりに請け負ったり、農家に大型の収穫機を貸し出したりしています。
さらに去年からは畑にあるジャガイモがどの程度、光合成をしているかを人工衛星で確認し、生育状況を把握できるというシステムを試験的に導入しました。

これをもとに「フィールドマン」と呼ばれる担当者が、栽培がうまくいっていない農家に出向き、肥料を与えるタイミングなどのアドバイスも迅速に行えるようにしました。

カルビーではこうした取り組みで、2023年には国内の供給量を現在より5万トン余り多い40万トン程度に増やすことができるとしています。
カルビーのグループ会社の中村一浩社長は「原料不足を二度と繰り返さないために、生産者が安定して生産していけるよう成長の支援を進めていくとともに各地の魅力や地元愛も含めて発信していきたい」と力を込めていました。

産地にも思いをはせて

9月に十勝地方で収穫されるジャガイモを原料としたポテトチップスは、早ければ年内に店頭に並びます。

何気なく手に取るポテトチップスですが、農作物の生産量には必ず変動があります。全国各地で自然災害が相次ぎ、異常気象も多くなっている昨今、安定供給を続けるのは簡単ではありません。

ときには、産地に思いをはせながら、ポテトチップスの味をかみしめてみてはいかがでしょうか。
帯広放送局記者
加藤 誠
平成21年入局
経済部を経て現在は道内経済を取材