東京五輪マラソン代表選考“1発勝負・MGC”コースの特徴は

東京五輪マラソン代表選考“1発勝負・MGC”コースの特徴は
東京オリンピックのマラソン日本代表を“1発勝負”で決めるMGC(=マラソン・グランド・チャンピオンシップ)が、今月15日に行われます。出場するのは基準をクリアした男子31人、女子21人で、それぞれ上位2人が東京オリンピックの代表に内定します。
MGCは男女ともオリンピックの代表3人のうち2人を1回のレースで選考する“一発勝負”の代表選考レースです。

日本陸上競技連盟は、これまでオリンピックのマラソンの日本代表を、コースや気象など条件が異なる複数のレースをもとに選出してきました。しかし、選考の過程が不透明だなどとして選手から不満の声があがったこともあり、地元開催の東京オリンピックに向け男女とも3人の代表選手のうち2人を1回のレースで選考する方式を採用したのです。

MGC出場という目標が明確になったことで、日本マラソン界の全体的なレベルアップにもつながりました。

男子では設楽悠太選手や大迫傑選手が相次いで日本記録を更新し、女子でも夏の北海道マラソンを制して一躍注目を集めた鈴木亜由子選手や、去年の大阪国際女子マラソンで優勝した松田瑞生選手など新勢力が台頭。ことし春までに行われた国内の主要レースなどで日本陸連が設定した順位やタイムをクリアした選手のうち、直後に行われる世界選手権の代表になった選手を除く男子31人、女子12人が出場を予定しています。
オリンピックでは新国立競技場がスタートとフィニッシュとなりますが、まだ建設中のため、MGCでは明治神宮外苑の「いちょう並木」がスタートとフィニッシュとなります。

スタートした選手は、新国立競技場の脇を通って東へ向かい、日本橋などを通過して、15キロ地点で東京スカイツリーが見える浅草の雷門の前を通って折り返します。再び日本橋や銀座、新橋を通って南下したあと、東京タワーのそばにある港区の増上寺の付近で2回目の折り返しです。

その後は、銀座に戻り3回目の日本橋を通過して30キロをすぎて神保町で再び南下します。このあと皇居外苑の二重橋前で最後となる3回目の折り返しをしたあと、選手たちは明治神宮外苑のいちょう並木を目指して力を振り絞ります。

勝負どころは…

今回のコースは、全体的にアップダウンが少ない平たんなコースですが、勝負のポイントが随所にあります。

スタートのあと最初の5キロすぎまで高低差30メートルほどを下ります。ここでスピードに乗りすぎると、下りきった後の平たんな道がきつく感じることになります。

中間地点を越えると、増上寺の付近と二重橋前の2回の折り返しがあり、ここで選手たちは先頭と後続の差を確認できます。この二重橋がある皇居外苑の周辺は、晴れると強い日ざしを遮るものがなく、暑さも勝負を分ける要因になりそうです。

そして、最大のポイントが35キロすぎの水道橋から始まる上りです。高低差は30メートルほどで、40キロすぎには2つの急な上り坂があります。

多くの選手や指導者がこの終盤5キロの上り坂を勝負どころと見ていて、選手によっては上り坂に入る前に仕掛けてくることも予想されます。

観戦ポイントは?

選手を応援する観戦ポイントもふんだんにあります。
スタートとフィニッシュとなる明治神宮外苑の「いちょう並木」のほか、東京スカイツリーを望む浅草の雷門の前や、東京タワーに近い増上寺の付近などの観光名所は観戦者で混雑することが予想されます。

また、7キロ、31キロ、35キロ地点となる神保町と、10キロ、20キロ、28キロ地点となる日本橋では、1か所で選手を3回応援することができます。さらに、終盤の上り坂が続く靖国通りでは、レースの大きく動く瞬間が見られるかもしれません。

増田さん ポイントに命名

MGCのNHKのナビゲーターを務める増田明美さんに、コースで見どころとなる8つの地点について独自に「命名」してもらい、そのポイントを聞きました。

ポイントその1「笑顔の日向道」

スタートして間もない3キロほどの「曙橋」付近。増田さんは「笑顔の日向道」と名付けました。理由は「下り坂で正面から朝日を浴びる」ため。

増田さんは「マラソンの旅が始まり、笑顔で下って行ける人は、女子ゴルフの渋野日向子さんが笑顔で勝ったように、いいレースをするんじゃないでしょうか」と話しています。

ポイントその2「自分を確認する起点」

次に10キロ地点の日本橋です。ここは「自分を確認する起点」と名付けました。江戸時代に各地と結ぶ街道の起点となった日本橋。増田さんは「レースが始まって10キロくらいで自分に向き合いながら『いいリズムが作れているかな』と確認できているかがポイントになる」と話しています。

ポイントその3「新旧“競演”」

15キロ付近の浅草 雷門は「新旧“競演”」としました。なぜ「競演」なのでしょうか?
「雷門の角を曲がったら今度はスカイツリーが見えます。ベテランも若手も駆け引きが始まると後半戦がおもしろくなりますね」というのが理由だそうです。

ポイントその4「気持ちのオアシス」

21キロ付近の銀座は「気持ちのオアシス」。デパートなど高いビルが並ぶため日陰となり、沿道には高級ブランド店もいっぱいあります。

増田さんは「銀座は日陰にもなるし高級ブランド店がいっぱいあるから、『気持ちのオアシス』になるかもしれないですね。余裕があれば『いい結果を出したらブランド品を買おうかな』とか『オリンピックでメダルを取ったらここでパレードができる』、そんな“パレード気分”を味わえる場所かも」と話しています。

ポイントその5「東京タワーもびっくり」

レースが進んで25キロ地点。東京タワーが見える辺りです。ここは「東京タワーもびっくり」と命名しました。

増田さんは、この辺りをレースの勝負のポイントの一つにあげています。

引き合いに出したのがアテネオリンピックで金メダルを獲得した野口みずき選手のレースでした。

「野口さんは25キロ付近でスパートしました。MGCでも勇気がある人が、このあたりでスパートする可能性があります。暑い中、25キロくらいでペースを上げる人がいたら、東京タワーがびっくりしちゃいそうです」
(写真:2004年 アテネ五輪 上り坂で先頭を走る野口みずき選手)

ポイントその6「ボーっとしてんじゃないよポイント」

皇居付近の33キロは「ボーっとしてんじゃないよポイント」と命名しました。強い日ざしを遮るものがなく疲れがいちばん出てくる、というのがその理由。そんな中「どこでスパートするか」。そのタイミングを集団の中で見極める必要があるところでもあるといいます。

増田さんは「見通しのよい折り返しなので前後の差を確認でき作戦をいろいろと考え始めるところなのでボーっとしていちゃいけないポイント」と分析しています。

ポイントその7「自分越えをする坂」

MGC最大の試練になると見られるのが35キロを過ぎた後の「坂」。増田さんの命名は「自分越えをする坂」です。

「ジワジワくる上り坂、ここは本当に底力が試されるところですね。暑い中で皆さん苦しい終盤。だから『天城越え』ではないけれど『自分越えをする坂』ですね。『自分越え』ができる人が力を発揮できるんだと思います」

ポイントその8「歓喜への28秒坂」

そして、最終盤。「ダラダラ」と続く坂のその先に待ち受けているのが、40キロ付近の急な上り坂。増田さんが名付けたのは「歓喜への28秒坂」でした。この坂の長さが140メートルほどあることから、かかるタイムを計算した増田さん。ここを「28秒ぐらいで上り切ることができたら強い」と話しました。

「苦しい最後の坂ですが、そのくらいのスピードで上り切ることができたら待っているのは歓声です。だから最後は『歓喜の28秒坂』だと思います。28秒で上り切れたらオリンピックの代表をつかむ可能性が高いのではないでしょうか」。
上り坂の向こうにある東京オリンピックの代表の切符。
つかみとるのは誰なのでしょうか。

MGCのレースは、今月15日、男子が午前8時50分、女子は午前9時10分にスタートします。