二十世紀梨は21世紀にどうなる?!

二十世紀梨は21世紀にどうなる?!
鳥取県と聞いてイメージするものって何ですか?
あるアンケート調査の結果、1位の「砂丘」に続き、2位は「二十世紀梨」でした。それほど知名度の高い「二十世紀梨」ですが、今、産地では農家の高齢化や新たな品種の台頭などで、放棄される梨園があとをたちません。
そんななか、梨の“実”ではなく“葉”を使ったお茶を開発し、梨の木を有効活用しようというビジネスが進められています。どんなビジネスなのか、現場を訪ねてみました。(鳥取放送局記者 小山晋士)

二十世紀梨のルーツは、千葉県松戸市!?

秋の味覚を代表する、梨。

幸水や豊水、新高(にいたか)などさまざまな梨の品種がありますが、二十世紀梨は、鳥取県が全国一の出荷量を誇る品種です。
鳥取県ではことしも、8月末から今シーズンの本格的な出荷が始まっています。

二十世紀梨の歴史は古く、1888年(明治21年)、現在の千葉県松戸市で少年が偶然、発見したのが始まりとされています。
それまでにない甘くてみずみずしい梨の品種として育てられ、20世紀を目前にした1898年ごろ(明治31年ごろ)、「二十世紀を代表する品種になってほしい」という願いから「二十世紀梨」と名付けられたと言われています。松戸市には今でも「二十世紀が丘梨元町」という地名があります。

その後、評判を聞きつけた鳥取の農家が二十世紀梨の苗を手に入れ栽培を始めます。

平地が少なく斜面の多い鳥取が栽培に適していたことや、関係者が病害の克服に力を入れたことなどから急速に普及が進み、鳥取の二十世紀梨は全国的に人気の品種となりました。

放棄される梨園が増加

そんな二十世紀梨の出荷額は約14億4500万円で、鳥取県が、現在も全国1位です。
しかし栽培面積は、年々減少してきました。ピークの昭和55年ごろには、県内で3000ヘクタール以上栽培されてきましたが、現在は、ピーク時の10分の1近くまで落ち込んでいます。

梨の栽培は、枝のせん定、人工授粉、袋がけ、収穫などさまざまな作業があります。特に二十世紀梨は、袋がけを2回するなど、他の梨と比べてもとても手間がかかるといいます。
農家の高齢化も進み、作業が重労働なため、放棄される梨園はあとをたちません。また、消費者の味の好みの変化も、二十世紀梨の衰退に拍車をかけています。

甘みの中に「酸っぱみ」が感じられる独特の味は、今でも中高年を中心にファンが多いのですが、若い世代の間では、より甘い味の梨が好まれるようです。

鳥取県では、県園芸試験場が開発した「新甘泉(しんかんせん)」という強い甘みが特徴の品種が登場しているほか、全国的にはマンゴーなど食卓にのぼる果物の種類も多様化していて、地元では、このままでは鳥取の梨農家が築き上げてきた二十世紀梨のブランドは衰退の一途をたどるのではないかという危機感が高まっています。
JA全農とっとり果実課の梅澤賢一課長は「二十世紀梨は、100年以上地域に根づき、鳥取の農業にとってはなくてはならない存在になってきている。しかし、高齢化や味の好みの変化など厳しい環境に置かれているのは事実で、これからも二十世紀梨の良さをもっと多くの人に理解してもらいたい」と話しています。

“実”ではなく“葉”で

二十世紀梨を復権させたい。そんな思いから、産地では、梨を有効活用したさまざまなビジネスが始められています。

中でも私が注目したのは、梨の“実”ではなく“葉”を使ったお茶。
二十世紀梨は、これまでにも、ジュースやワイン、お菓子やジャムなどに加工されてきましたが、使っているのは、もっぱら果実の部分。そんななか、鳥取県米子市の企業が、実ではなく葉を使ったお茶を開発したと聞いて、訪ねてみました。
迎えてくれたのは、ベンチャー企業「ジーピーシー研究所」社長の西田直史さん。

さっそく出された「梨の葉のお茶」は、紅茶のような色合いです。
実際に飲んでみると…すっきり飲みやすく、ほのかに梨の香りも楽しめるという感じ。取材したのは夏場の暑い時期だったこともあって、よく冷えた梨の葉のお茶はゴクゴク飲めて、とてもおいしかったです。
お茶に使われる梨の葉は、これまでは放棄されていたもの。

西田さんによると、二十世紀梨の葉には、健康によいとされるポリフェノールが多く含まれ、その量はモモやビワ、ブルーベリーなどほかの果物の葉と比べても多いそうです。

西田さんは、梨の葉の利点に注目して、鳥取大学の研究者などとプロジェクトチームを組み、食品や化粧品、サプリメントなどに商品化できないかと模索。試行錯誤の末、お茶として売り出すことにしたそうです。
「農家が高齢化し、木もだんだん老齢化し古くなっていく中で、何か新しいことをしていかないと、このまま産業としてなくなってしまうのではないかと感じていました。葉っぱを取って二十世紀梨を盛り上げ、地域が活性化して、また勢いづいてくればいいなと思っています」(西田直史社長)

地域の課題解決になるか

完成した商品は、「梨の葉100%」と、「紅茶風味」、そして、「ルイボス風味」の3種類。
カフェインが入っていないことから、6月に米子市のショッピングセンターで行われた試飲会では、妊娠中の女性や子どもでも安心して飲めると好評でした。
このお茶、9月1日からは、東京・新橋にある鳥取県などのアンテナショップで店頭に並んでいるほか、プロジェクトのウェブサイトでも販売が始まっています。

大切な地域資源である「二十世紀梨」の葉の力を生かし、お茶にして販売する取り組みは、梨農家を救うという地域の課題解決につながるだけでなく、新たな葉っぱビジネスを展開できるかにも注目が集まっています。

去年、私が鳥取放送局に赴任して感じたのは、二十世紀梨が、100年以上地域に根づき、愛されてきた歴史。
鳥取県中部の倉吉市には、梨をテーマとした日本唯一の博物館「鳥取二十世紀梨記念館なしっこ館」という施設もあります。

20世紀を駆け抜けたフルーツ「二十世紀梨」が、21世紀にはどんな姿になっていくのか、これからの歴史にも注目です。
鳥取放送局記者
小山晋士
平成16年入局
鹿児島局、報道局テレビニュース部などを経て、去年から鳥取局で県政取材などを担当