“タックスヘイブン”法人がニセコで不動産買収!?

“タックスヘイブン”法人がニセコで不動産買収!?
その街はまるで海外。
歩いている人も、働いている人も、外国人ばかりです。

その街とは北海道の「ニセコエリア」。
近年、世界中の富裕層や外国資本を呼び込んでいて、リゾートエリアの中心部のほとんどは外国資本・個人が所有するという話まであります。

どんな人たちが購入しているのか、調べてみると、気になる法人を見つけました。いわゆる「タックスヘイブン(租税回避地)」に拠点を置く法人です。しかもその数、わかっただけでも200近くありました。

ニセコで、いったい何が起きているのか。調べてみました。(社会部記者 藤本智充/函館放送局記者 川口朋晃)

外国資本が爆買い ニセコ

ニセコエリアと呼ばれるのは、北海道・倶知安町、ニセコ町、蘭越町の3つの町。このエリアで外国資本がどの程度、不動産を取得しているのか、調べてみるとーー

3つの町で不動産を所有する外国資本の数は、自治体への取材を重ねた結果、少なくとも延べ1818にのぼることがわかりました(NHK調べ 2019年1月時点)。

国別の内訳をみると、最も多いのは香港の法人や個人で671。次いでオーストラリアが390、シンガポールが236となっていました。関係者によると、リゾートエリアの中心部は外国資本・個人がそのほとんどを所有していて、ありえない価格で売買されているというのです。

(詳しくは下記リンク)

「タックスヘイブン」法人が続々とー

いったいどういう人たちなのだろう。

調べてみると、気になる法人を見つけました。いわゆる「タックスヘイブン」に拠点を置く法人です。

ニセコエリアにある3つの町で確認できたのは、少なくとも合わせて延べ199法人。最も多かったのは倶知安町で、延べ146法人にのぼっていました。
このうち、カリブ海に浮かぶイギリス領バージン諸島が124法人と、この5年で2倍以上に急増していました。

「タックスヘイブン」は、その名のとおり、税率を大幅に低くして企業や富裕層の資金を呼び込んでいる国や地域のこと。こうした国などで設立された法人は匿名性が高く、どこの国も十分な課税ができないという問題も指摘されています。

しかし、こうした法人が、なぜ、ニセコの不動産を次々と取得しているのか。さらに詳しく調べてみることにしました。

「箱」がオフィス?

自治体からの情報をもとに登記簿をとったところ、「タックスヘイブン」に拠点を置く延べ199法人のうち、今回、倶知安町とニセコ町で不動産を取得した48法人を特定。
このうち43法人がイギリス領バージン諸島、3法人がサモア独立国、それにイギリス領ケイマン諸島とセーシェル共和国がそれぞれ1法人でした。

登記簿に記載された法人の住所を見ると、そのほとんどが「ピーオーボックス(P.O.Box)」となっていました。これは郵便物を受け取る私書箱のこと。

「タックスヘイブン」に詳しい専門家などによると、これは、この私書箱そのものが法人、つまり、オフィスを持たない「ペーパーカンパニー」を意味しているというのです。
しかも、特定できた48の法人のうち、イギリス領バージン諸島にある17の法人は「私書箱957」という全く同じ住所でした。

「タックスヘイブン」に「ペーパーカンパニー」。なんだか謎は深まるばかり。しかし登記簿からは、これらの法人の代表が誰なのかはわからず、これ以上の情報は得られませんでした。

ペーパーカンパニーはいったい誰が?

そこで今度は、外国人との取り引きが多い、ニセコの不動産会社などに取材をしてみることにしました。

取材を続けること、2か月。やっと「タックスヘイブン」事情に詳しい不動産関係者を見つけました。

その関係者によると、ニセコで、「タックスヘイブン」に拠点を置く法人を使った取り引きは8年余り前の東日本大震災の後から増え始めたといいます。そして、こうした法人の代表は、香港や中国本土、それにシンガポールの富裕層が多いことも明かしてくれました。

さらに、こうした富裕層の中には、インターネットで検索すれば名前がでてくるような著名人も少なくないというのです。富裕層や著名人などがこうした法人を使う理由について、関係者は次のように話しています。
「みんな身元が明らかになることを警戒していて、名刺もくれない。中には子どもにSPをつけていて、『身元が割れると子どもが誘拐されるかもしれない』と話す富豪もいた。個人で不動産の下見に来るが、途中から『この法人で登記してほしい』とペーパーカンパニーの名前を出してくる。そこからはすべて弁護士を通して売買の手続きを進める形ですね」(不動産関係者)
たしかに、これまでの取材でも、ニセコは、中国やシンガポールなどの富裕層に特に人気が高いということを聞いていたし、実際に不動産を購入した人にも取材しました。

これらの国や地域の富裕層が利用している可能性は高いと思いましたが、「匿名性の高さ」が理由・目的という説明については、なんだかふに落ちませんでした。

この関係者に、富裕層の名前やペーパーカンパニーを使う目的について繰り返し聞きましたが「顧客の情報は言えないし、詳しいことはわからない」と口を堅く閉ざしました。

結局、それ以上の手がかりを得ることはできず、取材は行き詰まってしまいました。

謎を解くカギは “エージェント”

諦めきれない記者は、海外のサイトなどを調べていると、ある手がかりを見つけました。

イギリス領バージン諸島の金融当局が、法人の登記情報を公開しているというのです。「匿名性が高い」とされるタックスヘイブンで、本当にそんなことがあるのだろうのかーー。

半信半疑でしたが、わらにもすがるような思いで、すでに取材で特定した法人の登記情報を取り寄せることにしました。
数日後、登記情報が書かれた資料がメールで手元に届きました。中身を確認するとーー。

法人の設立年月日などの情報はありましたが、残念ながら、やはり代表者の名前や連絡先はどこにも書かれていませんでした。

それでも諦めきれなくて、くまなく資料を見ていると、気になる項目を見つけました。
「Agent(エージェント)」と記された欄で、そこに業者の名前が書かれていたのです。

調べてみると、それは法人の設立を代行している業者でした。さらに、代行業者の多くは、バージン諸島ではなく、香港に拠点があることがわかりました。

「エージェント」が謎を解くカギを握っているはずーー。ここまできたら、思い切って、香港に行って、直接、調べてみることにしました。

ついに明かされたペーパーカンパニーの世界

香港では、登記情報で判明したエージェントを中心に、40社以上とコンタクトを取りました。

記者とわかったとたんに電話を切られるなど交渉は難航しましたが、ついに、取材に応じるというエージェントにたどりつきました。

そこでは、日本人の私たちの常識とはかけ離れた海外の富裕層のリアル。
そして、「タックスヘイブン」や「ペーパーカンパニー」と、「ニセコ」の関係がようやく見えてきました。

さらに、「ペーパーカンパニー」を使った”課税逃れ”のリスクの実態も浮かび上がってきました。

これらは近日公開する予定の第2弾でくわしくお伝えします!