「ブラックアウト」が東京で起きたら 検索とAIで分析した

「ブラックアウト」が東京で起きたら 検索とAIで分析した
去年9月、北海道胆振東部地震をきっかけに日本で初めて起きた、電力会社の管内全域が停電するという「ブラックアウト」。
被害はどのように広がったのか。被災した人々はどのような情報を求めていたのか。
NHKでは膨大な検索データを所有するヤフージャパンと連携して分析し、東京で仮にブラックアウトが起きたときの影響を推し量るために、「AI」を使って企業のウェブサイトを解析しました。
新型災害といえる「ブラックアウト」に、わたしたちはどう備えればよいのでしょうか。
(大停電取材班 山内洋平 越村真至)

検索ワードに被災者のニーズがある

ヤフージャパンでデータ分析を担当する池宮さん、衣目さんとの打ち合わせはことし6月に始まりました。

東京・千代田区にある本社ビルには、来訪者との打ち合わせスペースにもヘルメットが常備されており、会社全体で防災に力を入れていることがうかがえます。
池宮さんたちが取り組んでいるのが、大規模な災害時の検索データ分析です。

災害時に人々が検索サイトで、どの時点でどのような情報を求めているかを探ることで、今後災害が起きたときの効果的な情報発信につなげようとしています。

北海道電力管内のほぼすべてが停電に陥った去年9月の「北海道ブラックアウト」では、どのように事態が推移していたのか。今後のブラックアウトへの備えを探るために、どのタイミングでどんなワードが検索されていたのか、ブラックアウト発生から1週間に検索されたワードの変化を分析してみることにしました。

まず必要なのは「お金」

ブラックアウトの直後に検索が増えていたワードはやはり「北海道電力」。その翌日に増えたのが、「ATM」「銀行」などでした。

北海道では被災直後に多くのコンビニが停電し、クレジットカードや電子マネーが使えなくなっていました。

物を買うには現金が必要なのにそれが引き出せず困っていた人たちが多かったとみられます。
停電が解消された翌日には「ATM」「銀行」の検索は減りましたが、一方で停電解消後も検索がずっと続いていた分野があります。

「スーパー」「コンビニ」「品薄」など、物流に関する分野です。特に「品薄」は、停電解消の翌日に急激に上昇していました。

物流拠点の停止が品薄を拡大

そのとき物流に何が起きていたのか。

現地で取材を進めると、物流の拠点がブラックアウトによっていったんダウンすると、復旧には大幅に時間がかかることが見えてきました。

まず停電で起きたのが、商品の原材料の廃棄処分でした。冷蔵庫が停止したためです。

そして自動化された物流の拠点が機能停止したことで、影響が長期化しました。
コープさっぽろでは、電気で制御し、自動で仕分け・発注などを管理する最新鋭のシステムを導入していました。それがいったん停電でダウンし、データが失われてしまうと、復旧に時間がかかってしまうのです。
ブラックアウトから8日たった物流拠点では、仕分けできない商品が山積みに。汗をかきながら声を掛け合い、商品番号を確認し荷さばきを続ける担当者の方々が印象的でした。

さらに、生産現場や加工工場が停電によって影響を受けたことも、「品薄」の要因となっていました。

電気があることを前提に築きあげたシステムは、電気が失われるといかにもろいのか、痛感しました。

駐車場が動かない

さらに停電解消後も検索が続いていたのが、一見意外な「駐車場」です。
機械式の立体駐車場は電気がなければ動きません。

一旦停止すると、停電解消後の復旧操作は利用者の手で行うことは難しく、設備を管理している業者の作業が必要となります。

ブラックアウトは想定されていなかったため、機械式駐車場を管理する業者の手が回らない駐車場もあったことが浮き彫りになりました。

首都圏の心配は「ネット」と「交通」か

では首都圏で大規模な停電が起きたら、どんなワードが検索されるのか?

東京電力の管内でブラックアウトが起こったことはありません。その影響を推し量るために私たちは過去に起きた大規模な停電に注目しました。

2016年10月、埼玉県新座市の地下トンネルでの火災をきっかけに東京23区内で起こった停電です。
火災と停電が起きた約3年前のその日に検索されたワードを分析したところ、北海道とのはっきりした違いが分かりました。

「サーバー」や「WiーFi」「ルーター」といったワードの検索数が急上昇したのです。

北海道のブラックアウトは未明に起きましたが、東京23区の停電は夕方だったため、多くの会社員がオフィスで仕事をしていました。

「ネットワークにつながらない」事態になり、人々は原因を調べるために一斉に検索しました。

中には「サイバーテロ」を疑った人たちも。
「北海道のブラックアウトと比較して圧倒的にネットワークにつながらない、ルーター、WiーFi、インターネットの接続方法などについての検索が多く見られます。他にもバスや電車など交通機関の検索がとても多く見られ、交通情報をリアルタイムに得ようとするユーザーが多いことも特徴かなと思います」

特に「要注意」の分野はどこだ

私たちはさらに東京でブラックアウトが起きた場合の影響の広がりを調べるため、企業がウェブサイトで公開している「停電」に関する情報を量的に分析することを試みました。

東京に本社がある約1万5000社について、企業のサイトから「停電」に関するページを抽出し、そこから停電に関連する文脈だけを抜き出して分析しました。
AIを使ったワード分析のノウハウを持つ「グルーヴノーツ」社の協力で調べた結果、見えてきたのは、ある分野の製品や企業活動に関するワードが、とりわけ「停電」や「影響」といったワードと関わりが深いということでした。
例えば「半導体」や「ディスプレイ」、「基盤」など、精密な制御が必要な製品。輸出入などに関わる「港湾」や「コンビナート」「クレーン」「倉庫」。

暮らしに身近なところでは「給食」「牛乳」「弁当」「ラーメン」などのワードが浮かびました。
「精密ロボットを使った電気製品の組み立てや、温度管理が重要な薬品や化学の分野、それをいま全部電気がやっているので、私たちの生活が電気への依存が高まってるのと同じように、日本の製造業の生産ラインが電気なくしては動かないよということが、さまざまな影響の大きさに出ているのではないか」
地震という自然災害をきっかけに、日本で初めて北海道で起こった「ブラックアウト」。

これが大都市で起きた場合に、どこまで影響が広がるのか、まだその全貌は見えていません。
大停電に対して私たちはどのように備えればよいのか。
9月1日(日)午後9時から総合テレビで放送予定のNHKスペシャル「巨大都市 大停電~“ブラックアウト”にどう備える~」では、シミュレーションドラマを交えて、その時への備えを考えます。
札幌放送局 記者
山内洋平 

平成23年入局 去年夏から札幌局 
ブラックアウトや原子力などを取材
札幌放送局 ディレクター
越村真至
 
平成29年入局 
札幌局で農業や漁業などを取材