『週休3日だってよ!』

『週休3日だってよ!』
祝日があって3連休になると、とてもありがたい。ずっとこうだったらいいなーなんて思っていたら、この夏、ある大手企業が週休3日を試みたのだ。社員は増えた休みをどう使ったのか?勤務の日が減った分、仕事はキツくならないのか?実態を取材してみた。
(経済部記者 川瀬直子)

空っぽのオフィスに女子高校生

8月9日、金曜日。東京・港区にある日本マイクロソフトの本社は、平日にもかかわらずガランとしていた。

メインエントランスの照明は消え、受付は無人。8月の1か月間、会社が金曜を休業日とする「週休3日」を試行したためだ。

その空っぽのオフィスにこの日、4人の女子高校生が招かれた。休みとなった金曜日を利用して、有志の社員が高校生向けにキャリア相談会をボランティアとして企画したのだ。
女子高校生はまずオフィスを見学。ふだんは機密保持の観点から部外の人が立ち入ることはあまりないが、この日は自由に歩き回ることができた。

社員が好きにデスクを選べる「フリーアドレス」を取り入れた最新のオフィス。生徒たちは写真を撮りながらその雰囲気を味わっていた。
続いて開かれた座談会では、高校生から「将来の進路はいつ決めるべきか?」「今のうちにやっておいた方がいいことは何か?」といった率直な質問が飛び、社員たちはみずからの経験を踏まえながらアドバイスしていた。

高校生の1人は、「IT企業のオフィスを見学したり、話を聞くことはなかなかできないので、いい経験だった」と満足そうに話した。

金曜日ならでは

キャリア相談会を企画したのは、ふだん技術者向けのマーケティングを担当する横井羽衣子さんだ。

文系出身ながらシステムエンジニアとして活躍してきた横井さんは、就職してプログラミングのよさに出会った。

進路選択や就職活動をするもっと前から関心を高めていれば人生の選択肢が広がったのではないかと考えていた。

だからこそ、女子中高生たちに進路やキャリアについて考えてもらう機会を作りたかったという。賛同してくれる職場の仲間もみつけた。

しかし、平日は仕事があるし、土日に仲間や学生を集めるのはもっと難しいということで、なかなか実現できなかった。

半ば諦めかけていたところに「金曜休み」という機会が訪れたため、実現にこぎつけたのだという。
「ずっとやりたいと思っていたことがようやくかないました。8月は、金曜日はボランティアをし、平日はしっかり効率的に働いて過ごしたい」。

1か月の実家滞在も

もともと週休3日の試みは、東京オリンピック・パラリンピックに向けて政府が推進する都心の混雑緩和や働き方改革の取り組みの一環として発案された。

対象は、日本マイクロソフトの全社員2300人。金曜日は、自己研さんとして習いごとをするもよし、家族サービスで子どもをレジャーに連れて行くもよし。

会社もより充実した休日の過ごし方をサポートしようと、さまざまな講座の受講料や旅行代などを支援する仕組みを設けたほか、ボランティア活動の紹介も行う。
中には、週休3日にテレワークを組み合わせることで1か月間まるまる実家に滞在して働きながら家業の手伝いもするという社員がいる。ほかには長期間被災地に出かけてボランティアする社員も。

日本の会議は長すぎ

休みが増えること自体、歓迎しない社員はいないだろう。では、週4日に減った勤務日は激務になるのか?給料は減ってしまうのか?会社によると、どちらも“変わらない”という。

むしろ“変えない”ようにするために、会社は勤務日の働き方も効率を上げるよう対策を掲げた。その筆頭が「会議改革」だ。

会社によると、世界100か国以上で展開するマイクロソフトのオフィスの中で、日本は会議にかける時間がとりわけ長かったという。

会議の時間が60分に設定される割合が高く、参加者の数も、世界の平均より11%多かった。
そこで、2つのルールを作った。

1 会議は1回30分に
2 参加者は5人まで

会議のメリハリを効かせることで、5日で行っていた業務を4日でもこなせるようにしようというのだ。

8月初旬に開かれたマーケティングの会議を取材すると、みな、時間を気にしてサクサクと意見を出し合っていた。

現状の課題や解決策。そして次の会議までにすべきことを洗い出し、ちょうど30分。やや慌ただしさも感じたが、決して無理ではなさそうだ。

参加した男性社員も「時間を意識することで、やるべきことによりフォーカスできる」と話していた。

検証結果も公表へ

会社は、週休3日の結果、業務がどう削減され、生産性がどう変わったか。そして社員の満足度はどうだったかなどを検証し、10月に結果を公表する方針だ。そして、東京オリンピックが本番を迎える2020年8月も、同じ試みをする。

ただ、週休3日を恒常的に取り入れるつもりではなく、社員一人一人が自分のニーズにあった働き方、休み方を選べるということを実感するきっかけにしてほしいという。
「社員には、短く働いて、よく学び、よく休み、人生の充足感を味わってほしい。そしてさまざまな知見を得ることで、よりよい会社のカルチャーを作って行ければよいと思っています」

ボーっと生きてんじゃねーよ!

そもそも日本で週休2日が定着したのは昭和40年ごろとされる。松下電器産業(現パナソニック)の創業者、故・松下幸之助が「1日休養、1日教養」と訴え、土曜日を休みにしたのがきっかけだと言われている。
根底にある考え方は、今回の週休3日の試みも変わらないと感じる。さらに、今はかつてのように経済が高成長することが見込めない時代。少子高齢化をはじめ、社会構造が大きく変わっている。テクノロジーの進化も著しい。

そんな時代だからこそ、がむしゃらに働くだけでなく、多くを学び、遊びや社会貢献で刺激を受けることで、これまでにない新しいアイデアを生み出していくことも求められている。

皆さんは仕事にどう向き合い、休みをどう活用していますか?
経済部記者
川瀬 直子

平成23年入局
新潟局 札幌局を経て
現在 情報通信業界を担当