「ゼッタイ自殺しないで!」 中川翔子さんの思い

「ゼッタイ自殺しないで!」 中川翔子さんの思い
夏休みの終わりに増加する子どもたちの自殺。
タレントの中川翔子さんは中学生のころ、いじめにあった経験をもとに若者向けの本を執筆しました。
タイトルは「死ぬんじゃねーぞ!!」
作品に込めた思いは何か。中川さんに話を聞きました。
(ニュース7 井上裕貴アナウンサー)

いじめで頭が真っ白に…

中川さんは中学生のころ、いじめがきっかけで不登校になりました。

「絵ばっか書いていて気持ち悪い」や「オタク」といった悪口や陰口に加え、靴が隠されるなど目に見えるいやがらせ。

休み時間は、ずっと机に突っ伏して、寝てるふり。
時には廊下で教科書を入れ替えて、忙しいふり。

「1人でいるわけじゃなくて忙しいからしょうがない」というふりをしてやり過ごそうとしましたが、一方で「それもバレている」と気付いている自分がいたと言います。

一日がすごく長いと感じる日々。
ふと、ある思いが頭をよぎりました。
「『もういい』『もう知らない』『もう死ぬ』『もうやっぱり私はだめだ』と真っ白になってしまって、そういう衝動になってしまった時がありました」
心が折れてしまったと言います。

若者に寄り添うことば

中川さんが、みずからの経験をもとに執筆した「死ぬんじゃねーぞ!!」。
副題は「いじめられている君はゼッタイ悪くない」としました。

いじめに苦しみ、周りに相談できない状況にある子どもたちにエールを送ろうと考えたのがきっかけでした。
「『いじめで学校に行くのが怖い』『死んじゃいたい』『あの子に会いたくない』いろいろな気持ちに襲われてしまう思春期の10代の子にどんなことばをかければよいのか。しかも押しつけではない、大人の寄り添えることばとはなんだろうなって思って書き始めました」
いじめに苦しんでいた頃は、大人のことばに耳を貸したくなかったという中川さん。
30代になった今の自分は、あの頃の自分にどんなことばをかけることができるか考えました。
「SNSでのいじめだとか、今のいじめは多様化していますが、一方で根本的に変わってないこともあります。大人になってから『ああそうなのか』って気付いたいろいろな気持ちも含めて、残しておきたいことばがたくさん見つかった」

好きなことをたくさん見つけて

いじめに悩み、苦しんでいたころ中川さんを救ったのは本や漫画、それに音楽と触れ合う時間でした。
「これが好きっていうことが未来を助けてくれる気がする。私はとにかく心を守る、心の穴を防ぐために、いろいろな本を読んだり音楽を聴いたりして気を紛らわせていました。だからなんとか生き延びて、ちょっとでも心のアンテナが動く何かを見つけてほしいなと思う」
今回の著書のなかで、中川さんはみずから描いた漫画で若者たちに語りかけています。
「学校の外では色んな人が 色んな生き方しているよ」
「死にたくなるくらいなら 行かなくていい」
「それは逃げることじゃない」
「一度しかない人生の自分にとっての正しい道を選択する、ということ」
「自分の好きなことをたくさん見つけて居場所を作ってほしい」という思いを込めました。
「誰かと同じ趣味で話せるのはすごいこと。好きっていう概念で知らない人どうしがつながることができるのはすごい。わらにもすがる思いでつかんだものって、確実に栄養になっている。死なないでよかった、あの時にあれを見つけていてよかったと思います」

周囲の大人はどうすべきか

学校や家族は、どうふるまうべきなのか。
いじめをめぐって問題となることが多い、“周囲の対応”についても聞きました。
「いじめをなくすことはできなくても、自殺をする人はなくせると思いたいです。生き延びていれば、なんとかなるかもしれないっていうことを知ってるのは大人じゃないですか。死にたい夜を乗り越えた、その先に生きている大人だからわかることが、その瞬間その時にいる子は分からないんですよね、その先が」
そのうえで強調したのは、ただただ“隣にいる人”になってほしいということでした。
「どんな小さな声にも耳を傾けてくれたら。ただ、そばにいて一緒にいて笑ってくれるとか全然違うことで話せるとか、普通にしてくれる人、そういう人がいるだけでも違います。大人がちゃんと被害者を守って、被害者の声を聞いてあげる。そして、そばにいる。話を聞く。いろんなできることがあると思います」

あなたの命はあなたのもの

子どもたちにいちばん伝えたいことを聞きました。
「いじめられている君はゼッタイ悪くない。あなたの命もあなたのもの。誰にも奪うことはできない。大丈夫。なんとかなる、なんとかするために、わたしたち大人がいます」
「いじめている人のために、あなたの大事な時間やエネルギーを費やすなんて、ほんとうにもったいないことです。ましてや、大切な命が失われるなんて、絶対あってはならないことです」

取材を終えて

今の明るく元気な中川さんからは想像もつかないような壮絶な体験。

訴えかけてくる表情はどれも哀しく、長い間胸にため込んでいた、苦しみの発露のようにも感じられました。

中川さんはこの本を3週間余りで一気に書き上げたといいます。

そこには、かつていじめられた当事者だからこそ分かる危機感があり、何としても、この夏休み中に届けたいという思いがありました。

私も取材で不登校になっている高校生に話を聞きましたが、いまこの瞬間も、学校に行きたくない、行くことができないと感じている子どもたちが全国にたくさんいるという現実を目の当たりにしました。

その子どもたちに、中川さんの「いじめられている君はゼッタイ悪くない」というメッセージが届いてほしいと強く感じました。