深海のプラスチックごみ 初の本格調査へ

深海のプラスチックごみ 初の本格調査へ
プラスチックごみによる海洋汚染が深刻な問題となるなか海洋研究開発機構は、深海の汚染状況や生態系への影響を初めて本格的に調査することになりました。
海洋研究開発機構では、ことし4月にプラスチックごみによる海洋汚染の実態を研究するグループを新たに立ち上げ、準備を進めてきました。

調査は今月28日からおよそ3週間、相模湾沖や房総半島沖などで行われます。

水深1200メートルから9200メートルにかけて堆積物を採取し、生態系への影響が懸念される大きさ5ミリ以下の「マイクロプラスチック」の量や堆積した年代を測定するほか、生物の胃の中にマイクロプラスチックがないかなどを調べます。

また、一般に販売されているプラスチックと、微生物によって水や二酸化炭素などに分解される特殊なプラスチックを、水深1200メートルの海底に3年間置いて、深海でプラスチックがどれくらい分解されるのか、実験を行うということです。

海洋プラスチック動態研究グループの土屋正史グループリーダー代理は「プラスチックごみがどれくらいの範囲に広がっているのかやどれくらいの量が深海にたまっているのか、分かっていないことが多い。自分の捨てたごみが遠くマリアナ海溝まで到達しているかもしれないなどと、海洋汚染の問題を考えるきっかけになればと思う」と話していました。

台風通過後の海岸にはプラごみが

台風10号が通過した16日、神奈川県藤沢市の片瀬海岸には、レジ袋やペットボトルのふたなどのプラスチックごみが打ち上がっていました。

海岸を訪れていた岡山県の30代の男性は「鳥などがプラスチックごみに絡まったりごみを食べたりして、死んでしまうと聞くのでかわいそうに思います」と話していました。

また京都府から来た10代の女性は「ちゃんとゴミ箱に捨てるように気をつけていますが、みんながそうしたら海もきれいになるのではないかと思います」と話していました。

プラスチックごみによる海洋汚染の現状

プラスチックごみによる海洋汚染は世界的な課題となっています。
プラスチックごみがいったん海に流れ出ると回収は難しく、クジラなどが餌と一緒に飲み込んでしまい死ぬおそれがあるなど、生態系に影響を及ぼすとされています。

また、長期間、海に漂ううちに波の力や紫外線の影響などで細かく砕け、大きさ5ミリ以下の「マイクロプラスチック」になって有害物質が付着しやすくなる上、魚や甲殻類などの小型の生き物の体内に入ってしまうケースも確認されています。

ことし6月のG20大阪サミットではプラスチックごみによる海洋汚染が主要な議題となり、世界全体で対策を進めていくことが合意されました。

プラスチックごみによる海洋汚染は各国で調査・研究が進められていますが、深海の実態については詳しいことがわかっていません。

海洋研究開発機構はこれまでも深海でさまざまな調査を行っていますが1982年以降の調査の際に撮影した映像や画像を確認したところ、プラスチックごみなどが多数、映り込んでいたということです。

そこで、深海の現状を知ってもらおうと、2年前から、ごみの映像をデータベース化しインターネットで公開しています。

このうち、1985年5月に撮影された相模湾の水深1100メートル付近の映像には、プラスチック製とみられる袋が散乱している様子が写っています。

また、2012年5月に撮影された岩手県大槌町沖の水深およそ500メートル付近では、イソギンチャクがレジ袋のようなものをすみかにしている様子が確認できます。

一方、ことし5月にアメリカ人の海底探検家が、太平洋のマリアナ海溝で水深1万927メートルの単独潜水に世界で始めて成功した際に、プラスチック製の袋などによる汚染を目の当たりにしたことを明らかにしていて、深海のプラスチック汚染に関心が寄せられています。

調査する海域

UNEP=国連環境計画によりますといったん海に流れ出たプラスチックごみは、海流や風などの影響で特定の場所に集まりやすいということです。

このうち日本に近いのが「太平洋ごみベルト」と呼ばれる場所で、今回の調査では人口が多く、経済活動も活発でごみの排出が多いと想定される東京都や神奈川県などに面した相模湾や房総半島沖、それに伊豆諸島の周辺海域を調べます。

こうした場所には海流の影響で日本だけでなく、アジア各国などから流れ出たごみも集まり、多くのプラスチックごみが深海にたまっている可能性があるということです。

マイクロプラスチックに焦点

今回の調査では、特に「マイクロプラスチック」と呼ばれる小さなプラスチックのごみについて詳しく調べることにしています。

マイクロプラスチックは、プラスチックが波の力や紫外線などによって5ミリ以下の大きさに細かく砕かれたもので、有害物質を付着しやすい上、魚などが飲み込みやすいため、生態系への影響が懸念されています。

調査では、有人の潜水調査船「しんかい6500」を使い、水深1200メートルから6000メートルにかけての海底から堆積物を採取して、含まれているマイクロプラスチックの量や種類、それに堆積した年代を測定するほか、チューブ状の装置で海底の生物やマイクロプラスチックを直接、採取することにしています。

また、「しんかい6500」ではたどりつくことができない水深9200メートルでも無人の装置を使うことで堆積物のほか生物を採取し、胃の中にマイクロプラスチックがないかなどを調べます。

さらに、紫外線が届かず水温が低く水圧が高い深海で、プラスチックがどれくらい分解されるのか、実験を行います。

海水やプランクトンが出入りできるように穴を空けた小さな円柱状の容器に一般に販売されているプラスチックと、微生物によって水や二酸化炭素などに分解される「生分解性」と呼ばれる特殊なプラスチックをそれぞれ入れて、静岡県の初島沖の水深1200メートルの海底に3年間、置いておくということです。

このほか、長さ1メートル75センチあるネットを船につないで引っ張り、調査地点の海面上のマイクロプラスチックを採取することで、深海と海面にあるごみの種類や量の違いからごみがたまっていく過程を推測することにしています。