福島第一原発 トリチウムなど含む水 タンク増設で保管を検討

福島第一原発 トリチウムなど含む水 タンク増設で保管を検討
福島第一原子力発電所にたまり続ける、トリチウムなどを含む水の扱いについて、国の有識者会議は、タンクを増設し長期に保管し続ける方法を、新たな選択肢として検討することになりました。海などへの放出に根強い反対の声がある中、現状の計画では3年後にタンクが満杯になるとの見通しを東京電力が示していて、国は今後、難しい判断を迫られることになります。
福島第一原発で出る汚染水を処理したあとの水には、取り除くのが難しいトリチウムなどの放射性物質が含まれ、これまで構内に1000基近くのタンクをつくり、およそ115万トンを保管していますが、今も毎日170トン前後増え続けています。

この水の扱いについて、国の有識者会議は9日、タンクを増設し長期に保管し続ける方法を、新たな選択肢として検討していくことを決めました。

国はこれまで、濃度を基準以下にして海や大気中など環境中に放出する5つの案を示してきましたが、住民参加の公聴会などで風評被害を心配する声が上がったためだということです。

一方、9日は、タンクによる長期保管については、8日に東京電力が示した見解についても議論されました。

東京電力は、現状の計画のままでは3年後にタンクが満杯になるほか、敷地内には今後、廃炉のための別の施設をつくる必要があり、タンクを増設する用地確保が厳しくなってくるとしています。

これに対し委員からは、「構内の工事で出た土砂をためている場所をタンクに使えるのではないか」とか、「敷地の外に用地を確保することを今後検討する必要がある」といった意見が出されていました。

国の有識者会議では、これから開催のペースを上げて議論を進めるとしていますが、いずれの方法も課題が示されていることから、国は今後、難しい判断を迫られることになります。

有識者会議 委員の1人は

国の有識者会議のメンバーで風評問題に詳しい、東京大学の関谷直也准教授は、東京電力が現在の計画では2022年夏ごろにタンクが満杯になるなどと説明したことについて、「東京電力の説明はわからなくはないが、原発構内のほかの敷地がなぜタンクに使えないのか。もう少し具体的に『こういう設備が必要なので、これくらいの敷地が必要だ』と明示してほしい。そうでないと、敷地が足りないから放出すべきという議論に終始してしまうおそれがある」と指摘しています。

そのうえで、議論の方向性について、「そもそも福島第一原発の事故による影響を受けた自治体の復興を最優先に考えるべき。水を処理をするために、地元の復興とか漁業や農業の再生が犠牲になってはいけない。その順番を間違えてはいけない」と話しています。

双葉町長「国が責任を持ち判断を」

福島第一原発が立地する双葉町の伊澤史朗町長は、トリチウムを含んだ水を長期保管する案の検討が始まったことについて、「いずれタンクの保管容量がひっ迫することは明らかで、水の扱いについては、国と東京電力が国民の理解を得られるよう説明を尽くしたうえで責任を持ち、判断すべきである」とするコメントを発表しました。

漁業者「現場に来て話を聞いて」

福島県沖でヒラメやカレイなどを取っている、福島県新地町の漁業者、小野春雄さんは、去年8月、トリチウムを含む水の処分をめぐる公聴会に参加し、基準以下に薄めて海に放出する案に反対しました。
小野さんは「きのうも水揚げしたカレイが震災前より高い値段で買い取られるなど、徐々に風評被害がなくなってきていると感じる。そこでトリチウムを含む水が海に放出されれば、風評被害がまた広がり、今まで積み上げてきたものがすべて台なしになる。福島の子どもたちに豊かな海を引き継ぐためにも、タンクへの保管など海への放出という選択肢以外の対応をとってほしい」と話していました。

また、トリチウムを含んだ水の海への放出に反対している、福島県のいわき市漁業協同組合の江川章組合長は、東京電力が水を保管するタンクが3年後には満杯になる見通しを明らかにしたことについて、「ただ3年後にタンクがいっぱいになるからと言われても、海に放出することは到底納得できない」と話しています。
福島県沖では震災の次の年から試験的な漁が再開され、今では原発事故の前とほぼ変わらない魚種が漁獲の対象になっていますが、失われた販路の回復や風評被害への対策が進んでおらず、去年1年間の水揚げ量は震災前の15.5%にとどまっています。
江川組合長は、こうした状況への対策がなく、保管の限界だけを議論しても意味がないと指摘し、「風評被害が最も懸念され、解消されるにはまだ時間がかかると思う。小委員会には現場に来てもらって、漁業者や流通関係者の話も聞いたうえで、消費者にも理解をえられる対応を議論してもらいたい」と話していました。