原発事故 避難住民訴訟 国の責任認めず 名古屋地裁

原発事故 避難住民訴訟 国の責任認めず 名古屋地裁
東京電力・福島第一原子力発電所の事故で東海地方に避難した住民120人余りが、生活の基盤を失い精神的な苦痛を受けたなどとして国と東京電力を訴えた裁判で、名古屋地方裁判所は、東京電力に対し、原告のうち109人に総額9600万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。一方、国の責任は認めませんでした。
福島第一原発の事故で福島県から愛知県、岐阜県、静岡県に避難した42世帯・128人は、生活の基盤を失い精神的な苦痛を受けたなどとして、国と東京電力に1人当たり1100万円、合わせて14億4000万円余りの賠償を求めました。

裁判では国が大規模な津波を事前に予測して被害を防ぐことができたかや、東京電力が避難した人たちに支払った賠償額が妥当かなどが争われました。

2日の判決で、名古屋地方裁判所の桃崎剛裁判長は「平成14年に政府の機関が公表した地震の評価には一定の信用性が認められ、国は遅くとも平成18年には津波の到来を予測することが可能だった。しかし、防護措置を取っても事故までに完成しなかった可能性が高く、電源の喪失という事態を回避できたとは認められない。国が東京電力に対策を命じなかったことが著しく合理性を欠くとは認められない」として、国の責任を認めませんでした。

一方、東京電力に対しては原告のうち109人に総額9680万円余りの賠償を命じました。

このうち避難区域ではない地域から自主的に避難した人については「事故発生当初は、十分な情報がない中で放射線被ばくへの恐怖や不安から避難することは合理性が認められる」として、妊婦と子どもに1人当たり100万円、それ以外の人に1人当たり60万円の慰謝料を認めました。

福島の原発事故で避難した人などが国と東京電力を訴えた集団訴訟の判決は9件目で、1審で国の責任が認められなかったのは千葉地裁の2件の判決に続いて3件目です。

原告側 控訴の意向「不当判決で納得できない」

判決のあと記者会見した原告側の弁護団長の細井土夫弁護士は「原発を国が推進し電力会社が運転してきた背景を考えると、国の責任は当然存在する。不当判決で納得できない」と述べました。

また、認められた賠償についても「ふるさとを離れて別の地域へ来ることによる生活の厳しさや被害の程度は、避難対象地域か自主避難かどうかで変わるものではない。これほど明確に差をつけることも納得できない」と述べ、控訴する意向を示しました。

妊娠中に4人の子どもを連れて福島県伊達市から名古屋市に避難した原告の1人、岡本早苗さんは「絶対に安全でなければいけない原発で事故が起きても誰も責任を取らない。避難者の苦しみやつらさが何も解消されない判決だ」と話しました。

東京電力「内容を精査し対応」

判決を受けて東京電力は「原子力発電所の事故により大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めておわび申し上げます。判決については今後、内容を精査し対応を検討してまいります」とコメントしています。

原子力規制庁「国の主張が認められた」

判決について原子力規制庁は「国の主張が認められたものと受け止めている。福島の事故を踏まえて策定された新規制基準への適合性審査を厳格に進めることで、適切な規制を行っていきたい」とコメントしています。