65年でどう進化?ビジネス・ファーストの旅

65年でどう進化?ビジネス・ファーストの旅
1966年、羽田空港に降り立った「ビートルズ」が着ていた「はっぴ」。実は、旅客機のファーストクラスのサービスと関係があったこと、知っていましたか?その根底に流れるのは「日本のおもてなしの心」。あれから半世紀余り。ビジネス・ファーストクラスは大きな変化を遂げています。(経済部記者 木下健)

全席ファーストクラスから

ビジネスやファーストクラスの歴史をひもとくと、65年前にさかのぼります。
日本航空は、1954年に東京(羽田空港)-サンフランシスコ線に定期便を就航。当初、国際線は、座席すべてがファーストクラスでした。当時は留学や仕事などの目的を持つ人にしかパスポートは支給されず、観光目的での海外旅行は認められていませんでした。

サンフランシスコまでの運賃は片道650ドル、1ドル=360円だったことから日本円で23万4000円。当時の大卒初任給がおよそ1万円。とても高額なフライトだったことがわかります。機体もまだ小さく、第1便の乗客はわずか21人でした。

はっぴに着物、日本らしさを追求

ファーストクラスでは一風変わったサービスも行われていました。それが、冒頭でも紹介した「はっぴ」です。
ビートルズのメンバーが着ていたのは、「ハッピーコート」と言われるもので、1960年代にファーストクラスを利用していた乗客に機内のリラックスウェアとして提供されていたものです。背中には「寿」の文字があしらわれ、襟の部分には「日航」と「JAL」の文字がデザインされていました。

1970年には、ジャンボジェット機を導入。座席数が大幅に増え、他の航空会社との間で顧客の争奪戦が起こります。ナショナルフラッグとして、ファーストクラスでは日本らしさを前面にアピールします。
ファーストクラスの前方の壁には、戦後を代表する日本画家、加山又造の巨大な日本画が描かれ、客室乗務員は着物でサービスを行っていました。日本では、大阪万博が開催されていて、訪れる要人に日本らしさを機内から感じてほしいという思いからでした。

快適性を追求 進化する座席

1985年のプラザ合意で急激な円高が進むと、バブル景気も後押しして、海外旅行が一般化。ビジネスクラスでの海外出張も盛んになります。

1986年から国際線に参入した全日空は、こうした需要を取り込もうと、成田ーロサンゼルス線にビジネスクラスを導入しました。最初はエコノミーの座席が大きくなっただけのものでしたが、その後、快適性を追求して座席は進化していきます。

長距離や直行便が増えたことで、機内で少しでも眠りたいという要望が多く寄せられます。2002年には、座席が完全に水平とはいかないものの、座面が平らになる「ライフラットシート」が登場。

そして、2010年。ライフラットでは角度があるためやっぱり寝にくい!という声に応えて、完全に水平になるフルフラットシートが登場。機内でいかに快適に過ごせるかがポイントになっていきます。

最新の機体 日本らしさを

この7月。9年ぶりにビジネスやファーストクラスのデザインを一新しました。公開された新しいデザインでまず目を引いたのが、木の存在感です。建築家の隈研吾さんがデザインの監修を行っていて、機内は座席に木目調のパネルを使い日本らしさが感じられるつくりになっています。
ビジネスクラスは全席にドアが付いて個室にすることができるようになります。そして、シートの幅はこれまでの2倍となり、座席を水平に倒すと寝返りを打つこともできます。
「洗練さと日本の美を兼ね備えて最上級のくつろぎ空間を実現した。『見る、食べる、寝る』だけでなく、大切な時間を有効に活用できるように最大限工夫した」
新しいシートは羽田とロンドンを結ぶ路線に導入され、今後、ビジネス需要の高いニューヨーク線などにも導入していくとしています。

ビジネス・ファーストは会社の顔

ビジネスやファーストクラスには、海外の航空会社も力を入れています。

例えば、中東のエティハド航空は、ベッドのほか、トイレ、シャワーなどがあり、まるでマンションの1室のように広いファーストクラスを導入。カタール航空はビジネスクラスに、席の仕切りを取るとダブルベッドにもなる座席を2年前に取り入れました。
なぜ各社は、座席数の少ない上位クラスの座席に力を入れるのでしょうか。

まず、収益性が高いことがあります。ビジネスマンや富裕層を中心に、機内で快適に過ごしたいという需要があり、そうした利用客を取り込もうと、より快適な空間をアピールしようとしているのです。

そして何よりも会社の「ブランド」のためでもあります。ビジネスやファーストクラスは、その会社の「顔」とも言える存在で、会社のステータスを示すためにも欠かせない存在なのです。

「日本のおもてなしの心」でどうライバルに対抗していくのか。これからのビジネス・ファーストクラスの進化に注目したいと思います。
経済部記者
木下 健

平成20年入局 さいたま局、 山口局岩国報道室などを経て
現在 国土交通省を担当