大企業製造業の景気判断 2期連続で悪化 日銀短観

大企業製造業の景気判断 2期連続で悪化 日銀短観
日銀が1日発表した短観=企業短期経済観測調査で、製造業の景気判断がまた悪化しました。米中の貿易摩擦に日本企業が根強い懸念を持っていることが統計にもあらわれ、大企業の製造業の景気判断の指標は、前回の調査より5ポイント下がり2期連続で悪化しました。
日銀の短観は、国内の企業およそ1万社を対象に3か月ごとに景気の現状などを尋ねる調査で、今回は5月下旬から先月末まで行われました。

景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指標で景気を判断し、注目される大企業の製造業は前回より5ポイント悪化しプラス7ポイントに下がりました。悪化は2期連続です。

中小企業の製造業も7ポイント悪化し、マイナス1ポイントになりました。マイナスは2016年9月以来、2年9か月ぶりです。

米中の貿易摩擦に日本企業が根強い懸念を持っていることが今回の統計にあらわれています。

特に5月に米中の貿易交渉が事実上、決裂しアメリカと中国が互いに輸入品にかける関税をさらに引き上げたため自動車や半導体向けの部品メーカーの景気判断が大きく悪化しました。

一方、大企業の非製造業は、プラス23ポイントと前回を2ポイント上回り、2期ぶりに改善しました。

29日の米中首脳会談で米中の対立がさらにエスカレートする事態はひとまず避けられましたが、引き続き、日本企業の景気判断を大きく左右することになりそうです。

西村官房副長官「内外の経済活動を注視し万全を期す」

西村官房副長官は記者会見で「中国経済の減速などから輸出の伸びが鈍化し、製造業を中心に生産活動の弱さが続いているが、賃上げや企業収益など内需を支えるファンダメンタルズ=経済の基礎的な条件は、これまで同様しっかりしている。緩やかに回復している経済全体の傾向を反映したものだ」と述べました。

そのうえで、「G20大阪サミットでも、世界経済の成長促進に向けたメッセージを発出したところであり、引き続き内外の経済動向を注視しながら、経済財政運営に万全を期していきたい」と述べました。

また西村官房副長官は、ことし10月の消費税率引き上げについて「方針に変わりはない」と述べました。

中小企業からは安どの声

米中貿易摩擦がこれ以上激しくなれば受注が大きく減ると心配していた中小企業からは、米中首脳会談が決裂する最悪の事態は避けられたと、安どの声が上がっています。

東京 葛飾区にある金属加工会社、「ミツミ製作所」は、社員6人で自動車のエンジンや半導体関連の金属部品を加工し、中国で事業展開する日本の大手メーカーなどに納入しています。

もともと中国経済の減速の影響で取り引き先からの発注はじわじわ減っていて、去年の秋以降、売り上げは前の年の同じ時期と比べて2割ほど落ち込んでいました。

米中の貿易摩擦が一段と激しくなるような状況になれば、取引先からの受注がさらに減り、生産を一時見合わせる事態もあるのではないかと心配していました。

ミツミ製作所の山田賢一社長は、先月29日の米中の首脳会談をテレビでずっと見ていたということです。最悪の事態はなんとか避けられたと、安どしています。

山田社長は「ひとまずほっとした。米中の貿易摩擦は、自分たちのような末端の製造業でも非常に大きな影響を受けてしまう。週末の会談結果を楽観視することはできないが、マイナスな話ではなかったので、摩擦の解消を期待したいと思う」と話していました。

中国の生産拠点の閉鎖・売却 検討の動きも

米中両国が貿易交渉の再開を決めたとはいえ、対立がいつまで続くか全く見通せないとして、日本企業には中国にもつ生産拠点の閉鎖や売却を検討する動きも出ています。

東京・品川区の従業員およそ100人の金属部品メーカー「富士セイラ」は、印刷機やATMに使われるシャフトの製造工場を中国に持っています。

進出したのはおよそ20年前ですが、当時よりも人件費が上がってなかなか採算が取れなくなってきたやさきに、中国の景気減速や米中の貿易摩擦に直面しました。

すでに年間の売り上げは、5年前のおよそ3分の1にまで減っていましたが、貿易摩擦が激化すれば中国での事業はますます苦境に陥りかねないとして、工場の売却を検討しています。

今後、生産は日本やタイの工場で行い、中国には販売の拠点だけを残す方針ですが、不安はつきないといいます。

「富士セイラ」の高須俊行社長は「先行きは不透明なままだ。関税がさらに上乗せされると製品が売れなくなり大きな影響を受ける。急激な変化に対応するのは資本的にも難しい」と話しています。

専門家「明確に悪影響が出ている」

今回の短観の結果について、大和総研の小林俊介シニアエコノミストは「中国で製造してアメリカに売るというバリューチェーンが相当寸断されている。生産用機械や業務用機械、金属製品に明確に悪影響が出ている」と述べ、米中貿易摩擦が日本の製造業にはっきりと悪影響を及ぼしていると指摘しました。

また米中首脳会談で貿易交渉の再開を決め、アメリカが追加の関税上乗せを見送ったことについては「いったん延期されたが、やらないとは決まっていない。今後の米中貿易交渉は妥結もあるが、破談もある。企業はどちらに賭けて事業戦略を練ればいいのか難しい局面が続く」と話しています。

そして景気の先行きについては「海外需要が復活するのか、消費税率の引き上げの影響がどれくらいでるのか。この2つが、この先1年の日本経済を見る上で重要だ」と述べました。