JOC新会長に山下泰裕氏が就任

JOC新会長に山下泰裕氏が就任
JOC=日本オリンピック委員会は27日、理事会を開き、退任した竹田恒和会長の後任に山下泰裕氏が就任しました。東京オリンピックの開幕までまもなく1年となる中、招致活動をめぐる贈賄の疑いで傷ついた大会のイメージを回復できるか、山下氏の手腕が問われます。
JOCをめぐっては、東京オリンピック・パラリンピックの招致委員会による贈賄の疑いを受けて、竹田会長が任期いっぱいでの退任を表明し、27日午後、都内で開かれた評議員会で正式に退任しました。

これに伴い、新たな理事には文部科学省の女性幹部など外部人材を含む27人が選任され評議員会の後の理事会で会長に山下氏が、また会長を補佐する専務理事には福井烈氏が就任しました。

一方、理事の候補に挙げられていた消費者庁長官の岡村和美氏は就任を辞退したということです。

今回の改選を受けてJOCのかじ取りは歴代で最も長い10期18年、トップを務めた竹田氏から、山下氏に託されることになります。

東京大会が1年後に迫る中、開催国のオリンピック委員会のトップが交代するのは異例の事態で、山下氏は東京大会のイメージを回復させ選手の強化などに注力できるか、手腕が問われます。

山下新会長「責任の重さを痛感」

山下氏は記者会見で、「東京オリンピック・パラリンピックを1年後に控えたこの時期に会長に就任する責任の重さを強く痛感している」と心境を述べました。

退任した竹田恒和前会長の贈賄の疑惑については、「潔白を信じているし、必ずやそのような判断が下ると思っている。疑惑が晴れるためにJOCとして必要なことは何でもやるつもりだ」と話しました。

そのうえで、東京オリンピックの1年前に開催国のオリンピック委員会のトップが交代する影響については、「通常では起こりえないことではないかと思っている。今は就任したばかりでどんなマイナス面が出るのか想像はできないが、トップが変わってもできるだけスムーズにやっていけるように準備はしてきたつもりだ」と述べました。

山下新会長はこれまで選手強化本部長を務めてきたことを踏まえ、「選手たちが明るくいきいきと夢に挑戦し、夢を現実のものにするためにJOCがすべきことは何なのか、真剣に考えながらできるかぎりのサポートをしたい。選手たちが誇りと自覚を持って夢に挑戦すれば金メダル30個という目標は十分、達成可能だと思う。みんなで一つのチームになって大会成功のために前に進んでいきたい」と抱負を述べました。

山下泰裕新会長とは

JOCの山下泰裕新会長は熊本県出身の62歳。

1984年のロサンゼルスオリンピックの柔道では、右足のけがを抱えながらも無差別の決勝でエジプトのラシュワン選手を破り金メダルを獲得、この年に国民栄誉賞を受賞しました。

また、柔道日本一を決める全日本選手権では、前人未踏の9連覇を成し遂げたほか、203連勝のまま1985年に現役を引退、柔道界で一時代を築きました。

現役を引退したあとは、指導者としてシドニーオリンピックとアテネオリンピックで日本代表の監督を務め井上康生選手などのオリンピック金メダリストを育てました。

おととし6月から全日本柔道連盟の会長を務め、IJF=国際柔道連盟の理事や東海大学の副学長なども務めています。

また、JOCではおととし選手強化本部長に就任し東京オリンピックに向けた選手強化のトップとして「金メダル30個」という極めて高い目標を掲げて競技団体との連携を図ってきました。

招致委員会をめぐる贈賄の疑いが持ち上がったことで竹田恒和前会長が東京大会を前に退任を表明したことを受け、実直な人柄や全日本柔道連盟のトップとして暴力問題の対応にあたった実績などを踏まえ、山下氏を新しい会長に推す声が強まり、JOCの新たなかじ取り役を担うことになりました。

信頼回復と金メダル30個が課題

JOCの新しいかじ取り役を担うことになった山下新会長。

東京オリンピックを1年後に控えたタイミングで退任に追い込まれた前会長のあとを受け信頼の回復とともに東京オリンピックに向けて掲げた「金メダル30個」という高い目標をどう実現させるのかという難しい課題に向き合うことになります。

JOCで18年間トップを務めた竹田前会長はみずからがトップを務めた東京大会の招致委員会をめぐる贈賄の疑いについて一貫して潔白を主張して来ましたが、IOC=国際オリンピック委員会の強い懸念などもあり、今月の任期満了での会長退任に追い込まれました。

後任を務めることになった山下新会長は柔道界で国内外の要職を経験してきたほか、JOCでも常務理事で選手強化本部長という要職を務め、スポーツ界での確固たる地位を築いてきました。

また、政界にも人脈があるほか、国民の知名度も高く、竹田会長の退任表明の前から後任候補として名前が挙がっていました。

ただ、東京オリンピックの1年前のタイミングで開催国のオリンピック委員会のトップを担うにあたり課題は少なくありません。

まず、国内外で失われたJOCへの信頼やイメージの回復です。竹田前会長が退任したとしても、招致をめぐる疑惑が解明されたわけではなく、フランスで裁判が開かれるかどうかは結論が出ていません。

疑惑が再燃する可能性もある中でJOCへのイメージや信頼をどう取り戻していくのかが問われます。

また、選手強化にも課題があります。選手強化本部長を務めてきた山下新会長は東京オリンピックでの「金メダル30個」という極めて高い目標を掲げ、実現に向けて競技団体との連携を図ってきました。

ただ、日本の得意種目、「お家芸」として複数の金メダル獲得が期待される体操や競泳などでは近年の国際大会での結果などを踏まえると、東京大会に向けた見通しが明るいわけではありません。

大会の成功はメダルの数だけでは計れませんが、大会が近づくにつれて選手の活躍に国民の注目が高まる中で山下新会長が掲げた大きな目標をどう実現させるのかに関心が集まります。

竹田恒和氏「何も後悔はしていない」

JOC=日本オリンピック委員会の会長を退任した竹田恒和氏は、評議員会の最後にあいさつし、「会長を拝命して以来、多くの方々にご支援やご協力をいただいたことに心からお礼を申し上げたい。オリンピックムーブメントの推進や選手強化など確実に成果を上げたと思っているし、私の人生の中で極めて重要で貴重な時間だった。東京オリンピック・パラリンピックまで残すところ1年となったが、大会は必ず成功させなければならない。新しいメンバーでスタートするJOCに対してこれまで以上のあたたかいご支援とご協力をお願いしたい」と述べました。

また、終了後に報道陣から東京オリンピック・パラリンピックの招致委員会による贈賄の疑いについて今後の対応を問われると「特に今、お答えすることはありません」とだけ答えました。

そのうえで、東京大会の1年前に退任することについては「私が考えた結果なので、何も後悔はしていません」と話しました。