そんな言い方しなくても ~アプリで変わるか上司と部下~

そんな言い方しなくても ~アプリで変わるか上司と部下~
「何でそんな言い方しかできないんだろう」「モチベーション下がるよ」上司に対してこんな気持ちを抱いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。いつの時代にも悩みの種となるのが上司と部下のコミュニケーション。特に、人手不足が深刻化する中ではコミュニケーションの問題は社員の離職にもつながりかねません。こうした中、アプリを通じて職場のコミュニケーションを改善しようという企業がありました。(富山放送局記者 福島雅博)

いつの時代も悩みの種

「部下がミスをするとすぐに落ち込んでしまう。叱らないといけないが、どう叱ればいいのか分からない」「指示を出した意図が伝わらず、期待通りにまったく動いてくれない」。

私が訪れたのは、ドアや窓の保守点検を手がける富山市の中小企業。この会社の管理職と、人材コンサルティング会社との打ち合わせに同席させてもらうと、管理職が部下との関係をめぐる悩みを次々と打ち明けていました。
こうした悩みに応えようと導入したのが、社員間のコミュニケーションを円滑にするアプリ“伝え方ラボ”です。富山市の人材コンサルティング会社が、専門家の監修のもと去年6月に開発。大手物流会社など10社が導入しています。

伝え方ラボとは

このアプリは15の質問をもとに従業員一人ひとりの性格を分析。1臨機応変に動きたいか、目標を決めて計画的に動きたいか、2また自分のペースを重視するか、相手のペースに合わせるかという2つの軸をもとに、従業員を4つのタイプに分けます。そして、4タイプごとに合った接し方を、具体的なフレーズとともに教えてくれます。

浮かび上がる上司と部下の不一致

アプリの開発会社は、導入した企業に出向き、診断結果をもとに具体的な改善策をアドバイスします。この日、私は導入企業の全社員が集まる研修会を取材しました。この会社では、ある営業所で働く入社2年目の若手2人と、指導役の所長のタイプが合っていないという課題が浮かび上がりました。
若手2人は、業務の全体像をつかんだ上で、計画的に動きたいと考えるタイプ。一方、指導役の所長は、必要な情報をその都度伝えるタイプで、2人にはその時に必要なことしか指示していませんでした。このため若手2人は、「所長の指示が、いつもざっくりとしていて分かりにくい」と感じていたのです。
若手の1人は、「『これやっといて』って言われても、『え、いつまでですか。どういうことですか』って聞くことが多くある。上司に何度も質問するのは気が引け、ストレスになっている」と話しました。
これに対し、所長は「やることさえ決まっとれば、やってくれると考えていた。実際伝わってないところがあるので、ちょっと直していかないといけないな」答えました。
タイプの違う、上司と部下。コンサルティング会社は、当事者の間に入って、部下の性格に合わせた指示の出し方に変えてもらうよう促していきますが、今回、講師が注目したのが、若手2人と同じタイプの主任でした。

コンサルティング会社は、これまで指導役だった所長に対し、「先輩の主任に指導役を任せることで所長としての仕事もやりやすくなる」と提案。2人の指導は主任が担当することになりました。

アプリで職場はどう変わるか

2人が働く職場はどのように改善されたのでしょうか。研修から3週間後、高岡市の営業所を訪ねました。
この日は新たに指導役となった主任が、2人にドアノブの外し方、取り付け方を指導していました。アプリや研修会を通じて若手2人が自分と同じタイプだと知った主任は、自分の知識や経験を細かく説明することを心がけているといいます。

この日も、作業の流れを順を追って丁寧に説明し、ドライバーのあて方など、作業の注意点を細かく伝えていました。
若手2人は、「わからないことを何度も尋ねることによる申し訳なさも減り、働きやすくなった」「上司の考え方がわかるようになり、冗談を言い合えるようになった」と話していました。
なんだか、指導役を外れることになった所長が少しかわいそうな気もしましたが、アプリを開発した人材コンサルティング会社の稲場真由美社長は「良い悪いではなく、あくまでタイプの違い」だと強調します。

また、「今回の会社のように同じタイプの上司と部下を組ませることができるケースは多くない。上司がアプリをきっかけにタイプの違いを認識して部下の性格に応じた声の掛け方を工夫していくことが重要だ」と話します。

多くの職場に広がるか

一方、導入した会社の水口猛史社長が日頃感じていたのは、社員どうしが理解しあうことの難しさ。アプリは人を型にはめるようで、抵抗を感じる社員がいるかもしれないという懸念もあったといいますが、統計学に基づいていると知り、相互理解を深めるためのツールとして導入したということです。

水口社長は「アプリの導入をきっかけに社員がコミュニケーションを大事にするようになる。その積み重ねが社内風土を作り、相互理解が深められることがゴールだと思う」と話していました。

アプリで上司と部下のコミュニケーションを改善しようというこの取り組み。私のこの原稿を見ている上司のデスクも大いに思うところがあったようです。多くの職場で今後、広まっていくか、注目して見ていきたいと思います。
富山局記者
福島雅博

平成28年入局 京都市出身
遊軍(教育・科学など)を担当