香港 審議を当面延期 容疑者引き渡し条例改正案

香港で、容疑者の身柄を中国本土にも引き渡せるようにする条例の改正案について、香港政府トップの林鄭月娥行政長官は、「さらに説明し、意見を聞く時間を持つことにした」と述べて、条例の改正案の審議を当面、延期すると発表しました。抗議活動が相次ぎ、多くのけが人が出たことを受けてこれ以上の混乱を避けるためだと強調しています。
香港では、容疑者の身柄を中国本土にも引き渡せるようにする条例の改正案をめぐり、今月9日には主催者の発表で103万人の市民が参加したデモが行われるなど抗議活動が相次ぎ、16日も再び大規模なデモが予定されています。

これに対し、香港政府の林鄭月娥行政長官は日本時間の午後4時すぎから記者会見し、「説明が不足しており、多くの市民が疑問や不安を感じていることが分かった。時間的な制限を設けず、市民にさらに説明し、異なる意見を聞く時間を持つことにした」と述べて、条例の改正案の審議を当面、延期する方針を明らかにしました。

そのうえで、「多くのけが人が出る事態となり、責任ある政府としてできるだけ早く、安定した状態を取り戻す必要がある」と述べて、これ以上の混乱を避けるための決断であると強調しました。

ただ、香港政府は条例の改正案を撤回しないとしているうえ、市民の間には、警察が抗議活動の際に催涙弾などを使ったことに対して政府の責任を追及する声も強まっていて、抗議活動が収束に向かうかは不透明な状況です。

民主派団体 16日もデモ実施

今月9日に主催者の発表で103万人の市民が参加したデモを呼びかけた民主派の団体は香港政府の林鄭月娥行政長官が条例の改正案の審議を当面、延期すると発表したことを受けて、「当面、延期するということは、撤回ではない」として、あくまでも条例の改正案の撤回を求めて、16日も大規模なデモを行うと表明しました。

そのうえで抗議活動の際に警察が催涙弾やゴム弾などを使って多くのけが人が出たことに対し、林鄭長官が会見で謝罪しなかったとして、当局側の暴力行為の責任を追及するとともに、抗議活動を「暴動」と位置づけた政府側の評価を取り消すよう求めるとしています。

中国政府 審議延期を支持も 条例改正は「必要かつ正当」

香港政府トップの林鄭月娥行政長官が、条例の改正案の審議を当面延期する考えを明らかにしたことについて、中国政府で香港問題を担当する国務院香港マカオ事務弁公室の報道官が談話を発表しました。

談話では条例の改正案について「現在の制度の欠陥を補い、犯罪を撲滅し、法治を進めるためには必要かつ正当なものだ」と意義を強調したうえで、審議が延期されたことについて「各界の意見をさらに幅広く聞くことで社会に落ち着きを取り戻すものであり、決定を支持し尊重する」としています。

また、条例の改正に反対する抗議活動について「中国政府として暴力行為を強く非難するとともに、香港の警察が法律に基づいて処罰し、香港の治安を守ることを強く支持する」として批判しました。

一方、中国外務省の報道官も談話を発表し「中国の特別行政区である香港に関する事案は中国の内政問題であり、いかなる国や組織も関与することはできない」として、条例改正の動きに「重大な懸念」を表明したアメリカなどをけん制しました。

アメリカ総領事館 香港政府は「現地と国際社会の意見に関心を」

香港にあるアメリカの総領事館のスポークスマンは「条例の改正案の審議を延期したことを歓迎する」というコメントを出しました。

そのうえで「アメリカ政府は香港政府に対し、現地と国際社会の意見に大きな関心を払い、考慮に入れるよう求める」と述べて、今後の香港政府の動向を引き続き注視する考えを示しました。