“老後2000万円必要”麻生副総理・金融相「報告書受け取らぬ」

“老後2000万円必要”麻生副総理・金融相「報告書受け取らぬ」
老後の資産形成をめぐり「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会の指針について、麻生副総理兼金融担当大臣は「世間に対して不安や誤解を与えており、政府のスタンスと違う」と述べ、正式な報告書としては受け取らないことを明らかにしました。
この中で麻生副総理兼金融担当大臣は、老後の資産形成をめぐり「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会の指針について「公的年金の問題を指摘したわけではなく、赤字という表現を使ったのは極めて不適切だ」と述べました。

そのうえで、「世間に対して不安や誤解を与えており、政府のスタンスとも違う。担当大臣としては正式な報告書として受け取らない」と述べ、この指針を正式な報告書として受け取らないことを明らかにしました。

さらに、「年金制度が崩壊するかのごとき表現になっていたが、そういったことは全くない」と述べて、公的年金の信頼性は変わりがないという認識を強調しました。

問題の「報告書」とは

麻生副総理兼金融担当大臣が受け取らない意向を示したのは、金融庁の審議会が今月3日に公表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書です。

報告書は、高齢化や長寿化が進む中、お金の面で個人が備えるべきことや求められる金融サービスについて、審議会のもとに設けられた有識者会議の1つ、「市場ワーキング・グループ」で、大学教授や金融機関の代表者ら21人の委員が去年9月から12回議論を重ね、取りまとめました。

この中では、収入が年金中心の高齢夫婦の世帯は、収入よりも支出が上回るため、平均で毎月およそ5万円の赤字になっているとしています。

これが老後の30年間続けばおよそ2000万円が必要になると試算していて、この分は貯蓄などの金融資産から取り崩す必要があるとしています。

そのうえで、現役世代から長期の投資などを行って資産形成を進める必要性を指摘しています。

これについて野党などからは、「政府の公的な責任を放棄している」といった批判が相次ぎ、麻生副総理も、「一定の前提で割りふった単純な試算を示しただけで、貯蓄や退職金を活用していることをあたかも赤字ではないかという表現をしたのは不適切だった」と述べていました。

本来は、このあと審議会の総会で了承され、麻生副総理に提出されるはずでした。
麻生副総理が受け取らない意向を示したことで、報告書は金融庁に提出されず、内容が政策に反映されないことになります。
審議会の報告書が提出されないのは異例です。

報告書まとめた委員「残念」

報告書を取りまとめた審議会の市場ワーキング・グループの委員の1人で、みずほ総合研究所の高田創エグゼクティブエコノミストは、老後の30年間におよそ2000万円必要になるという試算について、「あくまでも1つの事例というかサンプルとして示したのだと思っていて、そうした実態を踏まえてどうしていくのかが非常に重要なことだと思う。入り口のところで注目が止まってしまったというのは残念な気がする」と述べました。

そして、「高齢化が進む中での資産形成の在り方や生活設計について、現役世代から高齢者までいろいろな観点から考えるための道筋を示したかった。今回、皆さんの関心が高く、心配や不安を抱えているかたも多いことが確認されたとも言えるので、これを1つの機会と捉え、建設的な議論につなげていってほしい」と述べました。

菅官房長官「議論の過程の段階のもの」

菅官房長官は午後の記者会見で「あくまでも金融庁の審議会の中の、民間委員からなるワーキンググループの報告書なので、撤回するのではなく正式な報告書として受け取らないことになった。また今回は審議会の総会も了承しておらず、議論の過程の段階のものであり、政府として受け取らないという判断をした」と述べました。

自民 森山国対委員長「予算委の集中審議には応じず」

自民党の森山国会対策委員長は、記者会見で、「国民に誤解や不安を与えたことは極めて遺憾だ。特に年金に関わることは国民の関心が高く、正確な発表をしてもらうことが大事だ」と述べました。

一方、野党側が求めている予算委員会の集中審議の開催については、麻生副総理兼金融担当大臣が正式な報告書としては受け取らないことを踏まえ、「報告書そのものがなくなった」として、応じない考えを示しました。

また、森山氏は、参議院選挙への影響について、「正式な報告書として受け取らない決定をしており、論点になりようがない」と述べました。

公明 山口代表「説明足りない 猛省を」

公明党の山口代表は記者会見で、「国民に誤解を与えないよう金融庁がしっかり説明し、政府も金融庁だけの問題にせず、きちんと国民に説明すべきだ。説明が足りなさすぎる。猛省を促したい」と述べました。

また、野党側が年金制度への批判を強めていることについて「年金制度の運用は揺るぎなく行われている。人生100年時代の過ごし方と年金制度の問題とは全く次元が違うことで、きちんと区別して議論すべきだ。年金について不安をあおる言動は罪深い」と述べました。

立民 枝野代表「あぜんとせざるをえない」

立憲民主党の枝野代表は、党の常任幹事会で「『選挙前では都合が悪いから、受け取らない、撤回しろ』という話には、あぜんとせざるをえない。『いかに、国民に説明をせず、ごまかすか』ということが、いよいよ顕著になってきたのではないか。説明責任を果たさせる場を作り、国民に選択や判断の材料を提供する役割を果たしていきたい」と述べました。

国民 玉木代表「不都合なこと ないものに…」

国民民主党の玉木代表は、記者会見で、「『都合が悪い報告書は受け取らない』というのは、聞いたことがない。老後の生活が十分でないのであれば、『どうすればいいのか』ということを考えるのが、政治の仕事だ。不都合なことをないものにするのでは、ますます、老後の暮らしが不安になる。こういう政権の態度自体が、年金制度に対する不信感を募らせている」と述べました。