育休明けの転勤内示は「パタハラ」?

育休明けの転勤内示は「パタハラ」?
男性の育児休業をめぐるツイッターへの投稿がネットで話題になっています。

育休が終わった直後に転勤を命じられた場合、それは、育児をする男性への嫌がらせ、パタニティ・ハラスメント(パタハラ)にあたるのか。

労働問題に詳しい専門家は「転勤させるかどうかは就業規則に定められた範囲内なら企業の裁量」とした上で、「場合によっては法律で禁じられた不利益な取り扱いになる」と話しています。(ネットワーク報道部記者 岡田真理紗)

きっかけはツイッター

今月1日、ツイッターに、「夫が育休を取ったら明けて2日で関西に転勤内示/いろいろかけ合い、有給もとらせてもらえず、結局昨日で退職」「私産後4か月で家族4人を支えます」という投稿がありました。

これをめぐってネット上で反響が広がり、最初のツイートは6日までに4万件リツイートされています。

「夫は復帰直後に転勤内示」

ツイッターに投稿した女性に取材したところ、夫は、ことし1月に第二子が産まれたあと、3月下旬から4月下旬まで育休を取りました。女性が仕事に復帰することや、新居に引っ越すことなど、さまざまな事情が重なったため、夫は育休を取ったそうです。

4月下旬に仕事に復帰した夫は、その直後に、関西への転勤を内示されたといいます。女性によりますと、夫は育児と仕事を両立できなくなると考え、5月末で退職しました。

女性は、この転勤は、育休を取ったことへのハラスメントではないかと考えているということです。

その理由を尋ねると「私たちの家庭環境をわかっていたはずなのに、このタイミングでの内示。新しいプロジェクトが始まるわけでもなく、夫でなければならない理由はあったのでしょうか」と話していました。

会社は「育休への見せしめではありません」

夫が勤務していた化学メーカー「カネカ」は、6日、ホームページに見解を載せました。

育休明けの直後に転勤を内示したことについては、「本件では、育休前に、元社員の勤務状況に照らし異動させることが必要であると判断しておりましたが、本人へ内示する前に育休に入られたために育休明け直後に内示することとなってしまいました」としています。

また、弁護士を含めた調査委員会を立ち上げ、対応に問題はないことを確認したとした上で、「転勤の内示は、育休に対する見せしめではありません」としています。

SNSでは…

ソーシャルメディアでは、多くの意見が投稿されています。

「出産直後で、育休を必要とし、新築に引っ越したばかり、の若手社員をわざわざ転勤させるっていうのはどんな理由でそうするのかな。他に行ける社員いないんですかね」とか、「世の中で起きまくっている氷山の一角だと思う。日本の世の中は男性が育休とれるレベルにまで全くいってない」などといった、転勤で家族の事情が軽視されていることへの不満や、男性が育児に参加しにくい現状をなげく声が多く見られました。

一方で、「育休直後に転勤を通達したのは、そこまで問題じゃないと思うんだけどな」「会社都合で転勤させるのは当たり前」など、会社に転勤制度がある以上、しかたがないといった意見もありました。

育休明けの転勤 専門家の見方は

一般的に、育休が明けてからすぐに転勤を命じることは、法的に問題となるのでしょうか?
労働問題に詳しい圷由美子弁護士に聞きました。

圷弁護士によると、従業員の配置転換は、就業規則で定めてあれば、その範囲内なら会社に裁量があるということです。(権利の乱用にあたるようなものは除く)
ただ、育休後については、厚生労働省の指針で、原則として元と同じ仕事に復帰させるよう配慮することが定められています。

圷弁護士は「育休直後に配置転換を行うことは、場合によっては法律に違反する可能性もあります」と話しています。
育休の取得を理由とする不利益な取り扱いは法律(育児介護休業法)で禁じられています。
「配置転換が育休の直後など、時間的に近い場合は、育休の取得が理由だとされる可能性があります。そして、配置転換が『不利益な取り扱い』にあたるかどうかは、賃金や通勤事情などをもとに総合的に判断すべきものとされていますが、厚生労働省の指針によれば、通常の人事異動ルールからは十分に説明できない転勤で、労働者に経済的、精神的に大きな負担が生じる場合は該当するとされています」
圷弁護士は、最後にこう指摘していました。
「企業が子育て中の従業員にとって『ホワイト企業』と言えるかどうかは、育休の取得率ではなく、育休明けの処遇にポイントがあると思います。私が相談を受けたある企業のケースでは、育休の取得率は100%でしたが、実際は育休を取った人たちが、その後、みんな退職していきました。企業は、従業員が『不利益な扱いを受けた』と受け止めないように育休後の処遇を考えていく必要があると思います」