自分の経験がお金になる?スポットコンサルの魅力とは

自分の経験がお金になる?スポットコンサルの魅力とは
「副業」というと、どんなイメージをお持ちだろうか。エンジニアやデザイナーなど特殊な才能や特技がある人が、それを生かして報酬を得るもの…と思っている、あなた。実は、自分にとっては当たり前の知識や経験が、別の会社の人にとっては、貴重なアドバイスになることもあるという。これをビジネスにしたコンサルティングが今、注目されている。
(経済部記者 川瀬直子)

スポットコンサルって何

「スポットコンサルティング」と呼ばれる、この手法。1時間などの短時間だけ、自分の知識や経験を別の企業に教えるというものだ。

個人と企業をマッチングしているのは、東京のスタートアップ企業「ビザスク」。
ビジネスで得た知見を提供したいという人は、専用のサイトにキャリアや専門分野を登録。一方、コンサルティングを依頼する企業は、どういう知見を求めているかを登録する。それぞれがオファーを出したり、立候補したりしてマッチングが成立する。

企業側が支払う代金は1時間1万5000円ほど。このうち7割が個人の収入となる。登録している人は現在9万人。月に1000件以上のマッチングが成立しているという。

実際のコンサルティングは

では、実際どのような知見が売買されているのか?実際のスポットコンサルティングの場面を取材させてもらった。
今回、コンサルタントとなったのは、大竹信行さん。「コニカミノルタ」で20年間、経理担当として働いていて、中国とマレーシアの子会社での勤務経験がある。ちなみに今回がコンサル初体験だ。

その大竹さんにオファーを出したのは、家計簿アプリや経理ソフトを手がけるIT企業「マネーフォワード」。海外でのビジネスチャンスを探ろうと、経理の現状に詳しい人を探していたのだ。

大竹さんは、自分の仕事を終えたあと、依頼者のオフィスを訪れた。IT企業の担当者からまず尋ねられたのは、日本と中国、マレーシアで経理処理にどのような違いがあるのかということ。
大竹さんは「中国では、発票という領収書が発行されるが、品物や店名が書かれていないことがあった」「中国もマレーシアも紙の帳簿をつけている、手順は日本と一緒」など、実体験をもとにした情報を伝えた。

このほか、「働いている人の違いは?」「困ったのはどんな時か」などの質問があり、担当者は、「へえ-!」を繰り返した。

この1時間で企業側が支払ったのは1万5000円だった。

マネーフォワードの担当者は「ネットでは何を信じていいのか分からない部分もある。調査会社やプロのコンサルに頼むという手もあるが、お金もかかるし、手軽に現地の話を聞けるのはいい」と話していた。

大竹さんは「海外赴任の経験は思い出として自分の中でしまっておくものだと思っていた。それが最先端の分野の人たちに興味を持ってもらえるとは驚き。もっと伝えていきたい」と話し、次に意欲を示していた。

こんなモノでも売れる!!

今回は「海外での経理の経験」という眠っていたお宝が売買された。では、他にはどういうものが売買されているのだろうか?

ビザスクのサイトには、企業側からのさまざまなニーズが掲示されている。
▼店長経験がある人にバイトの教育のしかたを教えてほしい。
▼薬局向けのサービスを考えたが、実際に薬局を経営している人にニーズを聞きたい。
▼新卒採用の方法を知りたい…などなど。
ビザスクによると、BtoBの新サービスを始めたいという大手企業やベンチャーなどから、ユーザーの意見を聞きたいというオファーが多いという。

人気の分野は「モビリティー」や「ヘルスケア」といった、今、ビジネスが広がっているもの。特殊な分野の経験は、ニーズは少なくても単価は高い傾向にあるという。

マッチングのきっかけは

ビザスクの端羽CEOがこのサービスを立ち上げたきっかけは、自分自身の経験だったという。

かつて起業を目指している時に、ある電子商取引(EC)のビジネスが可能性ありそうだと、経営者の先輩に相談に行った。その時、その経営者から「自分はECの専門ではないから、専門の人からアドバイスをもらうべきだ」と指摘され、ECビジネスを立ち上げたことのある経験者の紹介を受けた。

端羽CEOが、その経験者を訪ねると、「全然ECビジネスをわかってない。これもダメ、あれも考えられてない…」と厳しい指摘を受けることとなった。

その時、知見者から直接アドバイスをもらえる価値は大きなものがあると気づき、「ビジネス課題と経験者をマッチングしよう!」と考えたのだという。

背景にあるのは

このサービス、なぜ今人気が高まっているのか。労働問題に詳しい日本総研の山田久主席研究員に聞いた。
「企業側では、今までとは違う新規事業を始めたいというところが増えている。その中で、社内にはない知識を安くスピーディーに吸収したいというニーズが高まっているのではないか。一方の個人の側は、終身雇用制度がなくなりつつある中で、自分の専門性を高めて一生働きたいという意識を満たしてくれる。今後、一定程度広がる可能性があるビジネスだと言える」
スポットコンサルのサービスは、「シェアリングエコノミー」の1つとされている。経済産業省の指針では、シェアリングエコノミーで収入を得ることは、会社の就業規則で兼業が禁止されていたとしても、その内容が本業に支障をきたさない場合は、兼業禁止の規定の効力が及ばないと考える、としている。
つまり、スポットコンサルは、兼業が禁止されている会社に勤めていたとしても、法律や一般常識の解釈では問題はなく、誰でも参加できることになる。

だが、山田さんは注意点も指摘する。
「どこまでが自分自身の知識で、どこまでが会社側の知見なのか線引きは難しい。守秘義務に抵触すれば、所属する企業とのトラブルになる可能性もあり、安易に考えてはいけない。どこまでなら話してもいいのか、事前に勤め先と相談するなどして、自分のなかで線引きをしてからコンサルティングに望むべき」
実際、ビザスクでは、ライバル企業とのマッチングを禁止しているほか、コンサルタントに対し、取引先の情報や経営戦略を教えないように指導しているという。

多くの人に可能性

ビザスクがコンサルタントを対象に行ったアンケートでは、「コンサルティングをしたことで、スキルアップや学習の意欲が高まった」と答えた人が73%にのぼった。

また、「現在の仕事の意欲が高まった」という人も45%と高く、自分の仕事にもよい影響を与えていることがわかったという。

自分の知識と会社の知見の線引きが難しいなど、まだまだ課題はあるが、スポットコンサルは、多くの人に自分の知見を生かすチャンスを与える可能性を秘めていると言えそうだ。
経済部
川瀬直子

平成23年入局
新潟局 札幌局をへて
現在 情報通信業界を担当