川崎殺傷事件 憤りの中で広まるつぶやき

川崎殺傷事件 憤りの中で広まるつぶやき
川崎市多摩区で起きた、あまりに痛ましい事件。
その衝撃の大きさに加えて容疑者が自殺したことなどから、SNS上ではやり場のない憤りの声や真偽がわからない情報が渦巻いています。

こうした中、インターネット上に流されたうそでひぼう中傷を受けた経験を持つ、あるタレントのつぶやきが広まっています。
「ストレスを感じた時はいったん情報から離れましょう」

(ネットワーク報道部記者 目見田健・伊賀亮人)

悲しみと憤り

「心底怖い思いをした子どもたちや亡くなった人たち、その家族の気持ちを考えると怒りと悲しみとやるせなさでいっぱい」
「残酷で非道で怒りしか覚えないし何より遺族の方々の心中がはかりしれない」
今回の事件では、発生直後から数多くの人がSNSで投稿を寄せています。

岩崎隆一容疑者(51)が自殺したことに対しての憤りの声も多く、「親はどこに怒りをぶつけていいのか」「子どもを巻き込んだあげく自殺なんて絶対許せない」などとツイートされています。

「無敵の人」で議論も

こうした中、注目されたのが「無敵の人」というキーワードです。

無敵の人とは、仕事や社会的な信用がなく「失うものがない人」が、社会に敵意を抱いて犯罪を犯した時に、ネット上で使われるようになったことばです。
平成20年に東京・秋葉原で7人が死亡、10人が重軽傷を負った通り魔事件で、死刑が確定した男などが、「無敵の人」と言われました。

今回の事件でも、発生の当日から「失うものがない『無敵の人』の事件。たいてい『貧困』だけじゃなく『孤独感』や『承認欲求』がセットになってるし、たぶんそちらが本命の動機に感じる…」、「この世に絶望し憎悪しかない死をも恐れぬノーフューチャーノーマネーの無敵の人、こんな人はこれからめちゃくちゃ増える」などという投稿が相次いでいます。

否定的な意見も

一方で、現時点では岩崎容疑者の経歴や生活などが詳しく分かっていないことから、否定的な意見も多く寄せられています。

「中年男性、無差別殺人、最後に自殺。たったこれだけで『無敵の人』の犯行だと思ってしまうのは、さすがに短絡的」、「強い社会的な偏見に基づいている」、中には、「『理不尽で痛ましい事件に対してせめて納得出来る理由が欲しい』というやりきれない思いの表れだろうな」などと分析する投稿もあります。

「不安が恐怖に変わり感情に引火」

さらには、SNS上では岩崎容疑者の個人情報を特定するような投稿のほか、経歴などに対して不確かな情報に基づいた投稿も多く見られます。
こうした状況について、社会学者で国学院大学教授の水無田気流さんは、次のように指摘しています。
「現代は、自分自身が労働市場や社会関係から排除される不安に加え、その中で孤立した人間が、自暴自棄になり危害を加えてくる不安がまん延している。そこに実際に無差別殺人者が現れたことにより、『不安』が『恐怖』に変化して、ネット空間での感情の『引火』が起き、ツイートがあふれていると思われます。ネットが普及した今は、そうした感情の爆発的な相乗効果が生まれやすい」

お笑いタレントのつぶやき

こうした中、お笑いタレントのスマイリーキクチさんのつぶやきが広まっています。

ネットリンチからの提言

実は、スマイリーキクチさんは、ある殺人事件から10年ほどたった頃に、犯人グループの1人だと全くのうそをネット上に流された経験があります。

仕事先へ嫌がらせの電話などが相次ぎ、その後、うそを書き込んだ人物が書類送検されたものの、今でも、殺害予告を受けるなど被害が続いているといいます。
今回の事件について、ネット上のやり取りを見ていると、「許せないという気持ちが個人情報を明らかにすることに向かっている。誤った情報でも拡散して事実になってしまい周囲の家族も含めたネットリンチにつながりかねない」と感じると同時に、社会全体に険悪な空気が広がりかねないと指摘します。

そのうえで、最初のツイートをした理由について、「人は向き合える情報量に許容があり、デマなどを含めた情報に多く触れているとその後、正しい情報を自分の中に取り込んでいくことが大変になると思う。冷静な判断が難しくストレスを感じる人がいれば今は、情報から距離を置いてもいいのではないかと思った」と語ってくれました。

もちろん、今回の事件がなぜ起きたのか、そこから目を離すことはあってはならないと思います。一方で、スマイリーキクチさんのツイートを読んだ人たちからは次のようなコメントが寄せられています。
「嫌なニュースばっかりでみんなイライラピリピリ…。デマに踊らされて関係ない人が被害に合う可能性だってある。そんな時は離れるのがいちばんいいですね…」
「このままじゃあ世間の怒りの矛先は本来向かうべきでない方向に向かってしまうと思います」