非正規公務員が急増 公共サービスがなくなる!?

非正規公務員が急増 公共サービスがなくなる!?
「私たちが行政サービスを担っていることを認めてほしい」
非正規公務員として働くある女性から切実な声が寄せられました。全国で増える非正規公務員。取材を進めると、これまで「当たり前」だと思っていた図書館や学校などの“公共サービス”が曲がり角を迎えているという現実が見えてきました。ある日突然、町の図書館がなくなる。そんな現実が遠くない将来起きるかもしれません。(水戸放送局記者 齋藤怜)

いつまで働くことができるのか

メッセージを受け取った私が向かったのは東京都内のアパート。送り主の女性はワンルームで1人暮らしをしていました。
女性は8年前から非正規公務員として都内の区役所などで働き続けているといいます。女性は非正規公務員として23区のうちの1つの区役所に勤務。週4日、1日7.5時間のフルタイムで働く契約を1年ごとに結んでいます。

女性が現状に不安を覚えるようになったのは4年前のある出来事でした。
当時、別の区役所で同じように非正規公務員として働いていました。
しかし1年の契約期間が満了を迎える2か月前になって、突然、「契約更新はできない」と告げられたのです。
女性がその区役所で働き始めてちょうど1年。採用された時には契約が更新される可能性が高いと聞いていましたが、契約を打ち切られる際には何の説明もありませんでした。

女性は労働組合などにも相談しましたが契約更新はかなわず、急いで探した職場が今の区役所です。

今の職場も契約期間は1年。契約期間が満了となるおよそ1か月前に来年度も契約を更新できるか告げられるといいます。
「いつまでここで働くことができるのか」
先が見えない女性は、今年度の契約を結んだ際に、来年度の更新があるかを区の担当者に尋ねました。
しかし、その答えはこれまでどおり「直前にならないと分からない」というものでした。
女性は「いつ契約が終わるかわからない不安定な状況では先が見通せず暮らしも落ち着かない」と話します。
女性はもし、次に職場を探すことになったら、業務内容を給与や待遇に反映して評価してもらえる民間企業で働くことも視野に入れているといいます。

担うのは専門的な仕事

区の障害者福祉課で働く女性は、障害者の元を訪れて、障害者支援の区分を判定するための聞き取り調査や、障害者手帳の申請の受付など社会福祉の重要な業務を担っています。
大学を卒業したあと取得した社会福祉士と精神保健福祉士の資格をもっているからです。その資格を生かそうと区の福祉専門職に応募しました。

今この女性のような非正規公務員が、正規の公務員と同じような責任の重い役割を担っているといいます。

女性が所属する部署でも8人中5人が非正規公務員だといいます。
女性は「非正規公務員がいないと公共サービスが回らない。非正規公務員が地域の公共サービスを担っていることをもっと認めてほしい。そしてそれに応じた適切な条件を提示してほしい」と訴えています。

公共サービス維持できない?

非正規公務員がいないと公共サービスが回らない。だとすると、非正規公務員が感じている待遇への不満が膨らめば将来的には公共サービスそのものが立ちゆかなくなるのではないかと思い、実際に多くの非正規公務員を雇う現場に向かいました。
非正規公務員が占める割合が50%を超える、茨城県守谷市です。人口約6万8000人の守谷市は759人の職員のうち391人が非正規の職員です。

背景には人口減少があるのではないか。そう思って取材を進めると、実はそう簡単な話でもなさそうです。

確かに、将来的な人口減少とそれに伴う税収の減少は全国の自治体にとって大きな課題になっています。

ところが、守谷市の人口は、市内を走るつくばエクスプレスの開通などにより、この10年間で6000人増えていたのです。市の人事担当者に尋ねるとこんな答えが返ってきました。
「正規の職員を採用すると、その職員が退職するまで何十年か抱えることになる。その何十年先を財政的に担保できるか読めない中で、公共サービスを維持するためには非正規の職員に頼るしかない」
つまり、将来の人口減少を見越して、必要な今の時期だけ非正規公務員に頼りたいという自治体側の考えがあるというのです。

しかもその根幹にあるのは「今の公共サービスを維持するため」ということでした。

「非正規公務員がいなければ公共サービスが維持できない?」
非正規職員として都内で働く女性が訴えたとおりでした。人口が増加している町でもそんな事態が起きようとしているのです。

民営化を断念した図書館

守谷市は今年度、新たに37人の非正規公務員を採用しました。

その職場は市立図書館です。市は3年前、職員の人件費を削減するためこの図書館の運営を民間に委託しました。
公共サービスの1つの運営を民間に任せるという判断をしたのです。しかし、民間運営となった図書館では司書の資格を持つ人を必要な数だけ確保できず、職員が相次いで退職するなど運営の維持が難しい事態に陥りました。
そこで、今年度から再び市が運営する状態に戻す決断をしました。非正規公務員は図書館職員のうちおよそ8割を占めます。

非正規公務員に頼ることで何とかして公共サービスを維持していこうというのです。
「人口減少社会においてどう公共サービスを維持していくかということが最大の焦点になっている。できるかぎりサービスの質を下げないように職員の確保に努めたい」(市の人事担当者)

“公共サービスが届かなくなる”

今のままの公共サービスを受け続けようとすること自体が限界なのではないか。

私たちが当たり前だと思っていた「公共サービス」が曲がり角に来ているのではないかと思い、専門家を訪ねました。
地方自治総合研究所の上林陽治研究員は「自治体は財政がひっ迫する中でも公共サービスを維持するために賃金が低い非正規公務員の雇用を増やしてきた。しかし、非正規公務員は賃金が安く雇用も不安定でベテランになるほど離職する傾向にある。非正規公務員になる人自体が不足するようになってきていて、このままだと公共サービスを本当に必要としている人たちに届かない」と警鐘を鳴らします。
非正規公務員の問題は、これまで当たり前に享受してきた「公共サービス」が、その在り方を考え直す時期に来ていることの一端を示しているのかもしれません。

この「非正規公務員」の問題。私たちはこれからも取材を続けていきたいと考えています。読んでいただいた皆様からの情報提供をお待ちしています。

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