厚労省で妊婦が深夜3時まで残業!働き方改革はどこに…

厚労省で妊婦が深夜3時まで残業!働き方改革はどこに…
霞が関の働き方について取材を続ける私たちに、ある省庁で「妊娠中の職員が深夜3時まで残業している」という情報が。その職場を調べてみて、驚きました。(霞が関のリアル取材班記者 松尾恵輔 福田和郎)

働き方改革の旗振り役なのに…

妊娠中の職員が深夜まで働いていたのは、厚生労働省でした。
確かに取材班には、これまでも省内の職員から働き方をめぐる悲痛な声が相次いでいます。
20代男性
「働き方改革と言われても、仕事が全く減らず上司がキレていた」
30代男性
「もう限界かもしれません」
20代女性
「霞が関は働き方改革においていかれる」
霞が関の異常な働き方は厚生労働省に限ったことではなさそうです。
でも、おかしいと思うのは、やはりこの省が働き方改革の旗振り役だからです。大企業の場合、先月から時間外労働の上限が月100時間未満となり、罰則も設けられたというのに…。

妊婦が午前3時まで!

実際、省内の取材を進めると、驚きの実態が明らかに。

ある課では、妊娠中の女性職員が午前3時を過ぎても働いていました。彼女は国会待機や法案の対応をしていました。
そのため月の半分以上、午後10時以降まで仕事をし、タクシーで帰宅する日が続いたといいます。

女性も、「妊娠しているため勤務を配慮してほしい」と訴え上司も人事課に増員を求めていました。

しかし、「不祥事の対応などに人を割いているため増員はできない」として、改善はみられなかったといいます。

女性を知る40代の職員は「少子化対策をしている厚生労働省で妊婦を守れないのはシャレにならない。もし体に影響があったら、どうやって責任を取るんだ」と憤りをあらわにしていました。

職場で倒れた人も

さらに、過度な残業で体調を崩した人もいました。

30代の古田一郎さん(仮名)は仕事中に意識を失って、倒れた経験があります。
「ある夜、翌日の国会に向けた準備を進めているときに、急に意識がなくなり、床に倒れました。気付いたら周りで、同僚たちが心配そうに顔をのぞき込み、自分の名前を呼んでいました。体力には自信があったんですが…」(古田さん)
LINEでのやり取り
当時は国会対応で、自分の働く部署にあす質問があるかどうか分かるまで、帰ることができませんでした。質問が決まっても、1つの行、段落を書くだけで決裁や協議が必要になり、帰宅が朝になることも。残業は月平均100時間以上が当たり前でした。

残業が長い時は、上司が翌日の勤務開始を遅らせる配慮をしてくれたといいますが、蓄積した疲労は回復しないといいます。

古田さんは、自身の経験を振り返り、こんな言葉を漏らしました。
「いかに労働時間を減らそうとしても、国会の会期中などは無理。働き方改革と言っている自分たちがいちばん実感がない」

時間外の在庁が100時間超 なんと374人!!

いったい、この省ではどのくらいの残業が行われているのか?

ちなみに人事院が公表している国家公務員の時間外勤務は年平均350時間です。
しかし職員らは、「そんなに少ないはずはない」と口にします。

取材を進めていると、私たちに一枚の内部資料が寄せられました。手にして思わず、ため息が。それがこちらです。
紙には、ことし2月の厚生労働省の部署ごとの平均の退庁時間や在庁時間が記録されていました。

そこには、時間外の在庁時間が100時間を超える職員が374人に上ると記されています。
(在庁時間は職員PCのログイン・ログオフ等で管理 一般企業の在社時間に相当)

局ごとに見てみると、障害者雇用や雇用保険の支払いなどを担当する「職業安定局」が58人、統計問題担当が53人、児童虐待防止法を担当する「子ども家庭局」が32人など。

今の重要な政策や不祥事の対応に追われた部署が目立って多くなっていました。
本省で働く職員は3800人ほど。そのおよそ1割が、時間外に100時間を超えて、在庁している実態。さすがにおかしくないですか?

人事院に直撃!! 何で休めないの?

こんな足元の状態を厚生労働省はどう考えているのか。
今月16日正午時点で、コメントはまだもらえていません。
そこで人事院にも取材しました。すると、こんな回答でした。
「国家公務員には、労働基準法は適用されていません。つまり民間と同様の長時間労働の規制はあてはまりません」
国家公務員の働き方を規定しているのは、人事院規則です。
この規則は、新年度の働き方改革のスタートにあわせて見直され、残業の上限も原則月45時間と明記されました。

しかし、民間企業と違って罰則はありません。しかも、他律的な業務の比重の高い部署は月100時間未満の超過勤務が行えるという例外規定もあります。その部署をどこに定めるかも各省庁に委ねられているため、過度な勤務をどこまで規制できるのか、疑問が残ります。

専門家「人員増やすのもタブー視するな」

専門家にも意見を求めました。日本総合研究所の山田久主席研究員です。

山田さんは厚生労働省が開いた働き方検討会の委員も務め、厚生労働省の職員についてよくご存じです。
こちらの問題意識を伝えると、少し考えたあと、こんな意見を口にしました。
「確かに働き方改革を進める厚生労働省が模範を示すべきだという思いは理解できますしそうあるべきです。しかし、働いている職員の実態をみると極めて難しい。公的セクターとして、行政サービスを提供する義務と国会対応などの政治ニーズ。いずれの業務量も増えていますからね」
そのうえで、改善に向けては次のように提言しました。
「まずは仕事の効率化を。電子化やデジタル化を本気で進めていくことが必要だ。しかし、財政事情が厳しく人員が抑制されているので、現場は限界に近いです。税金を入れるという話なので難しいかもしれないが、人員を増やすこともタブー視をせずに議論すべき時期に来ているのではないでしょうか」

残業理由は国会対応?

国会が開かれると、厚労省の地下にあるコンビニは、夜遅くまで夜食を買い求める人であふれかえります。終電がなくなっても、目をこすりながら働き続ける職員を「国家公務員だから」とか、「労働基準法による規制がないから仕方がない」と切って捨てることはできないと感じます。

今回は厚生労働省を中心に取材しましたが、ほかの省庁でも、似たような状況があるかと思います。私たちは取材を続けます。

具体的なリアルな体験、残業の温床とされている国会対応の実態などの情報をお待ちしています。https://www3.nhk.or.jp/news/special/kasumigaseki/