交差点から対策を考える

交差点から対策を考える
保育園児2人が犠牲になった大津市の事故。ネット上で1枚の画像が注目されています。同じ現場で以前に撮影されたもので、保育園児と見られる子どもが車道から離れたところで大人に守られながら信号待ちをする様子です。「ここまで気をつけていても事故が起きてしまうと考えると恐ろしい」。それでも対策はないのか、改めて取材しました。(ネットワーク報道部記者 鮎合真介 郡義之)

ここまで気をつけても…

冒頭の写真はGoogle Earthで見ることができる事故現場の写真。2018年に偶然、撮影されたものですが、痛ましい事故が起きて以来、多くのコメントが寄せられています。
「ここまで気をつけていても事故が起きてしまうと考えると恐ろしい」
「これ以上ないってくらいに守っている」

一方でこんな投稿も目立ちました。
「ガードレールがあれば…」
「いや、あの場所には設置不可能だよ」
「ポールがあれば事故を防げたかもしれない」
「全国の横断歩道にポールの設置を進めて」

そもそもガードレールって

この交差点でガードレールやポールが有効なのか、取材しました。

まずはガードレール。国土交通省によると、ガードレールは車線を逸脱する車を防止するため車道と歩道の境界に設置されるもので、その強度なども一定の条件が定められています。

このうち車が衝突する角度は20度以下と想定され、そうした条件のもとで実験が行われています。
国土交通省では、「今回のような交差点に設置する場合、真正面から衝突することも考えられるほか、横断歩道を渡る人の障害になるため設置は難しい」としています。

注目されるポール “ボラード”

SNSで指摘が相次ぐポールはどうでしょうか?
ちなみにポールは専門用語で「ボラード」と言うそうで、国土交通省に聞くと予想していなかった答えが返ってきました。
「ボラードは、そもそも特定の場所への車の侵入を防ぐために運転手に注意喚起を促すもので、突っ込む車を止めるような目的は想定されていません。ガードレールのように道路施設の一部としては見なされていないため設置基準もありません」
どういうことなのか?
ボラードを製造しているメーカーに聞いてみました。
「ボラードは、衝突してくる車を止めるための実験がそもそも行われていません。あくまで、『ここから車は中に入ってはいけませんよ』という抑止の位置づけでしかないのです。仮に大型トラックが80キロで突っ込んできたら、防ぐことは難しいでしょう」(「帝金」営業統括部長 奥田浩也さん)
突っ込んでくる車を止めることを目的に作られたボラードもありますが、それはテロ対策用で、1本何十万円もかかるそうです。
ただ、今回の事故を受けてボラードに注目が集まっていることも実感しているそうです。
「大津の事故を受けて、私たちも効果が実証され、さらに費用が抑えられた普及しやすいボラードを今後作らなければならない、と社内で話し合っています」(奥田さん)

生活者の死亡事故割合 先進国で最多

対策を考えるうえで、もう1つ気になるデータがあります。世界銀行によると、日本は歩行中や自転車乗車中の交通事故による死者の人口10万人当たりの数が先進7か国の中で最多。
さらに人口10万人当たりの市区町村別の死傷者数をNHKが独自に算出したところ、東京都や大阪府、愛知県など都市部で多い傾向にあることが分かりました。
これまで40年間、交通事故を取材してきた自動車雑誌「JAF Mate」元編集長の岩越和紀さんは「日本は、市街地に車を乗り入れることが少ない欧州に比べると、歩車分離がなされておらず歩行者の事故が起きやすい」と指摘しています。
交通事故による死者数が去年は3532人と、過去最低を記録する中で、生活者が犠牲になる事故をいかに減らすかが大きな課題なのです。

住民も声を上げよう!

市民が声を上げたことで、対策が進められたケースがあります。

横浜市で10年前、歩道にいた女性が車にはねられたことをきっかけに遺族が市や警察に安全対策を要望。
その結果、事故現場の歩道と車道の間にボラードが設置されました。

注意喚起に加えて低速で走る車に対しては、一定の効果があると考えて導入を決めたそうです。住民の意向を受けて行政が対策を講じた1つの例と言えそうです。

大津市での事故以降、交通安全対策の相談や要望が増えていると言うことで、横浜市道路局の安達秀昭施設課長は「市として、危険な場所をすべてを把握しているわけではないので、まずは市民の皆さんから声を上げてくれるとありがたいです」と話しています。

スマホで言っちゃお!

また浜松市では、4年ほど前から、市民がスマートフォンを使って、道路やガードレールなど設備の破損を市に連絡。それをもとに、市が対応する仕組みを作りました。

連絡の対象は、すでに設置してあるものの補修に限られますが、年間300~400件の連絡が市民から寄せられ、そのうち約8割に市が対応できているということです。
「いっちゃお!」と名付けられたこの仕組み、市民が「言っちゃお!」行政が「行っちゃお!」ということでこう名付けられました。

大津市での事故を受け、各地でも保育園周辺の危険な場所を改めて調べて対策を考える動きが進んでいます。今回のような痛ましい事故を防ぐために、行政や企業、そして住民がこれまでにとらわれない対策を検討する必要があると感じました。