“御朱印” 10時間待ちでびっくり!?

“御朱印” 10時間待ちでびっくり!?
「御朱印」知ってますか? 神社などに参拝した証しとして受け取るものとされ、カラフルなデザインも増え、熱心に集める人が出るほど、ここ数年、人気が高まっています。平成から令和へと時代が移るのに合わせ、10連休中も「御朱印」を求める人が各地で列を作りました。「御朱印」をめぐって何が起きているのでしょうか。(ネットワーク報道部 飯田暁子 大窪奈緒子 鮎合真介 新井智明 富田千尋)

御朱印求めて長い列

平成最後となった4月30日、「平成」と記された御朱印を求める多くの人の姿が各地でみられました。

そして、令和初日の5月1日。東京タワーに設けられた神社では「令和元年五月一日」と記された御朱印を求める長い列ができ、最大2時間待ちの人も。
明治神宮 5月1日
とりわけ、東京・渋谷区の明治神宮では、最大10時間待ちになるという案内が!
あまりの混雑ぶりに、閉門時間までに対応しきれなくなるとして、午後1時半ごろには順番待ちの受け付けが締め切られました。

その混雑ぶりは

5月1日、明治神宮はどのくらい混雑していたのでしょうか。
訪れた人の数を携帯電話の位置情報をもとに推計したところ、最も混雑した時間帯は午後2時から3時にかけてで、明治神宮中心部の100メートル四方のエリアだけでも4000人近い人が詰めかけたとみられます。去年5月1日の同じ時間帯と比べると、20倍以上の人が訪れていました。
また、三重県にある伊勢神宮の内宮では、最も混雑したのが午前9時から10時にかけてで、参道周辺の100メートル四方だけでも5000人余りに上り、去年の同じ日の同じ時間帯と比べて、およそ45倍の人が詰めかけたとみられます。

指はしびれ、肩は張り…

こうした混雑の中、ほかにも休みなく対応に追われた神社がありました。

北九州市小倉北区にある到津八幡神社ではふだん、御朱印を求める参拝者は平日で1人か2人、土日も多くて10人から15人ほど。
ところが、5月1日は朝から御朱印を求める人が次から次にやってきます。神職2人がかりで午前8時半から午後5時すぎまで、飲まず食わずのノンストップ、差し出される御朱印帳に筆を走らせたそうです。

神職の三浦崇嗣さんは「こんなに大勢、いらっしゃるとは予想していませんでした。すごい長蛇の列でした。御朱印をきっかけに、神社に興味を持ってもらい、お参りに訪れる人が増えればうれしいです」と話していました。


茨城県守谷市にある守谷総鎮守八坂神社の宮司、下村良弘さんは、5月1日を振り返り、ブログにこう、つづっています。
「いつものように朝出社。油断していた。例年のGWって神社はそんなに忙しくはない。午前8時過ぎくらい。御朱印の方がポツポツと来社。あぁ、やっぱり来るんだなって思っていたら9時過ぎに行列」「最大2時間待ちで社務所の中は御朱印帳の列」
「昼ご飯を食べず、トイレも行かず、刻々と時間は過ぎて午後2時になる頃。これはマズい…さばききれない。そして午後4時……ダメだ。行列が終わらない。午後5時過ぎまで書いて慌てて出張祭典へ。社務所へ帰ると疲れ切った妻の顔。午後6時過ぎまで並んでいたらしいです」
「5月5日…まだ親指のしびれが取れません」
下村さんは「まさかこんなに行列ができるとは思っていませんでした。何百冊もの御朱印帳に文字を書き、そして印を押しました。皆さん、新たな時代を迎え、大切な人と神社に詣で、記念の日が記された証しを求めていたようです。日本人はとても節目を大切にしているのだなと感じました。今も、指も肩も腰も痛いですが、時代の節目に立ち会えたのだとうれしい気持ちです」と話していました。

御朱印はどんなもの?

守谷総鎮守八坂神社の御朱印
そもそも、御朱印とは何でしょうか。

各地の神社を包括する「神社本庁」によると、御朱印は「お参りした人と神様とのご縁の証し」。

起源は平安時代のころにさかのぼると言われているそうですが、御朱印という呼び方が定着してきたのは意外と最近で、昭和10年ごろ。

関所の廃止や鉄道網の整備によって全国を移動しやすくなった明治時代に「巡拝旅行」と「集印」が盛んに行われるようになったそうです。それに伴い、旅行ガイドといった本も発行されるようになり、御朱印という呼び方が定着していったとみられるということです。

ネット上にさまざまな声

ネット上にも、改元を機に御朱印を受け取ってきたという人の声が、数多く投稿されました。
「御朱印受付がTDL(東京ディズニーランド)並みの待機列できてる」「御朱印もらうのにすでに7~8時間待ちと言われておる」など行列の長さを嘆く声が多く、中には「御朱印、500人以上の列が。仕事があるのであきらめます」など、断念したという声も。

一方、「御朱印ってただのスタンプラリーになったのか?」「参拝してから並びなさいよ」などの苦言も目立ち、以前から御朱印を集めているという人は「別にレアなのとか平成最後とか令和最初とか気にしてない。その神社のお話を聞きながらじっくり書いてもらえた御朱印のほうが、見返すとお参りした時を思い出せていいのよね」と投稿していました。

御朱印の売買も

大勢の人が御朱印を求める中、インターネットのオークションサイトや個人が品物を出品するサイトなどで売買されるケースもありました。
このうち、明治神宮の御朱印は、5月1日の午後5時の時点で数千円から高いものでは5万円の値が付けられ、売買が成立したものもありました。

また、三重県にある伊勢神宮の御朱印は高いもので3万円、福岡県太宰府市にある万葉集ゆかりの地とされる坂本八幡宮の御朱印は高いもので数千円の値が付けられていました。

御朱印が売買されていることについて、明治神宮と伊勢神宮は「コメントできない」としていて、坂本八幡宮は「御朱印は参拝の証しであって、参拝をせずに受け取ることはありえないので、絶対にやめてほしい」と話しています。

“御朱印ブーム”どこへ

御朱印をめぐるマナーについて、各地の神社や寺で長年、御朱印を集めてきた人はどう思っているのでしょうか。

趣味が高じて、御朱印の研究成果をウェブサイトに公開している会社員の村上哲基さんに話を聞きました。
「私が御朱印を集め始めたのは平成元年ですが、当時は御朱印をもらう人はそれほど多くありませんでした。今のように行列ができるなんて夢にも思っていなかったので、隔世の感があります。ただ最近は、少し過熱しすぎだと感じます」

「最近の動きをみると、御朱印帳を送りつけて返送を求める人がいるなど、想像すらしなかったケースまで出ています。御朱印は『参拝の証し』なので、いただく人は最低限、参拝する必要がありますし、その本質をはき違えると、ただのスタンプラリーになってしまいます。また、神社と寺に迷惑をかけないといった当然のマナーを守ることが大切です」

そのうえで、村上さんは、こう強調しました。
「忘れてはいけないのが、神社や寺には本来、御朱印を授ける義務はないことです。だからこそ、参拝する側にはマナーが求められますし、マナーを守ってもらえるのであれば参拝に訪れる人を増やしたい神社や寺も御朱印に力を入れるようになり、お互いにとってプラスになると思います」
「御朱印ブーム」の今、これから先もこの文化が続くよう、御朱印を受け取る側と授ける側が互いに気持ちよくやり取りできる。そうあってほしいと感じました。