NPT会合 米ロ対立で核軍縮進まない現状に強い危機感

NPT会合 米ロ対立で核軍縮進まない現状に強い危機感
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ニューヨークの国連本部で開かれているNPT=核拡散防止条約についての会合で各国のNGOが、中距離核ミサイルの全廃条約などをめぐるアメリカとロシアの対立で核軍縮が進まない現状に強い危機感を表明しました。核保有国は条約にしたがって核兵器を削減するよう求める声が相次ぎました。
NPT=核拡散防止条約は、およそ190か国が加盟している国際社会の核軍縮の基本的な枠組みで、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの5か国に核兵器の保有を認める一方、削減を義務づけています。

国連本部で開かれているNPTについての会合では、1日、各国のNGOが意見を表明し、世界の核兵器の90%を保有しているアメリカとロシアが対立を深め、INF=中距離核ミサイルの全廃条約が破棄されようとしていることなどに強い危機感を示しました。

アメリカの民間シンクタンク、「軍備管理協会」のダリル・キンボール事務局長は、米ロが核兵器の削減義務を果たしていないと批判するとともに「このままでは冷戦期以来、初めて条約に縛られない事態に陥る」と述べて核軍縮を進めるよう訴えました。

また国連での核兵器禁止条約の採択に関わっておととし、ノーベル平和賞を受賞したICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの代表は、「核軍縮を進める環境を作るために、核兵器禁止条約に加わるべきだ」と述べ、NPTの加盟国に対し、核兵器禁止条約への支持を強く呼びかけました。

「胎内被爆者」核兵器廃絶訴え

会合で、広島の被爆者が各国の代表を前に演説し、核兵器廃絶を速やかに実行するよう訴えました。

国連本部で開かれているNPTについての会合は1日、被爆者やNGOなどが演説する場が設けられ、母親のおなかの中で被爆した、「胎内被爆者」として初めて、濱住治郎さん(73)が出席しました。
濱住さんは、原爆で父親を亡くし、父親を探しに行った母親の胎内で被爆しました。

演説で濱住さんは、「父の死と引き換えに生かされ、父のことを思わない日はありません。戦争は終わっていません。いまだに世界に核兵器が存在するからです」と述べました。

また胎内被爆者がおよそ7200人いることを伝えたうえで、「胎内で被爆したからこそ、放射能の影響は計り知れません。病気への不安、子や孫への不安は消えることがありません」と述べ、今も被爆者が苦しんでいると訴えました。

濱住さんは、最後に「核兵器も戦争もない、青い空を世界の子どもたちに届けることが、被爆者の使命であり、全世界の大人一人一人の使命です」と述べ、国際社会が核兵器の非人道性を受け止め、各国が協力して、核兵器廃絶を速やかに実行するよう訴えました。

被爆者が940万人の署名提出

演説のあと、広島と長崎の被爆者は、すべての国が核兵器禁止条約に参加するよう求める941万筆余りの国際署名の目録を国連で軍縮を担当する中満事務次長や今回の会合のハスリン議長に手渡しました。

そして「世界の市民と国家が信頼し合い、手を取り合って一日も早く核兵器を無くすことを願っています」と述べました。

長崎で被爆した日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の木戸季市事務局長は、「国連の会合の内容を聞いていると危機感が募る。原爆は人類を破滅させる武器なので、世界の市民の力で核兵器を無くし、人類を守っていってほしい」と話していました。

また広島の胎内被爆者の濱住治郎事務局次長は、「国どうしの争いという現実もあるが、原爆が人間に与えた被害こそが現実だ。どちらを重視して考えていくのか、核兵器を今後も持ち続けていいのか、よく考えてほしい」と話していました。

広島・長崎 両市長は

広島市の松井市長は、「核保有国は、核軍縮の誠実な交渉義務を果たすどころか、近代化を進めている。核兵器をめぐる国際情勢は、核使用のリスクにさらされている。早急な対処が必要だ」と述べ、懸念を示しました。

そのうえで、「すべての国が立場の違いを超えて真剣に対話し、具体的な核軍縮・不拡散措置を進展させるため、創造的な解決策を生み出すことに期待している」と述べ、来年予定されているNPTの再検討会議に向け、各国が核軍縮についてきちんと交渉するよう求めました。
長崎市の田上市長は、アメリカとロシアの対立によって核軍縮が進まない現状について「核兵器廃絶への道は、現在のリーダーたちによって再び閉ざされようとしている。小型で使いやすい核兵器の開発競争はすでに始まっていて、核兵器使用のリスクはむしろ高まっている」と述べ、強い危機感を示しました。

そのうえで核保有国に対し、「NPTで世界と約束した核軍縮にもっと誠実に取り組み、核兵器の脅威を削減する具体的なプロセスを早急に示してほしい」と述べアメリカとロシアがまず対話を進めるべきだと訴えました。