どうして即日廃棄?~大臣の日程表

どうして即日廃棄?~大臣の日程表
皆さんは、大臣の日程表ってご存じですか?
いつ、どこで大臣が誰と会い、どんな仕事をしたのか、そんな内容が記されています。

この日程表、実は公文書なんですが、各省庁が極めて短期間で、廃棄していたことが分かりました。どうしてなんでしょうか?(「霞が関のリアル」取材班 記者 北村洋次 森並慶三郎)

これが日程表!

そもそも日程表とはどういうものなのか?

これは森友学園の問題で辞職した国税庁の佐川元長官の日程表です。去年1月17日の午前10時に国際業務課、午後1時半ごろに広報広聴室、午後2時に会計課のそれぞれの担当者と会っていたと記されています。

この日程表は、れっきとした公文書として、各省庁が毎日作成しているそうです。

秘書官経験者に聞いてみた

では、当事者たちは、この日程表をどんなものだと考えているでしょうか。

大臣の秘書官を務めた経験がある国会議員秘書に聞いてみました。

すると、「日程表には大臣が誰と面会するのかや、どんな会議に出席するのかなど、1日のスケジュールが詳細に書かれている。実際どれくらい、保存されているのかはわからないが、後で確認することを考えるとすぐに廃棄されることは常識的には考えにくい」と語りました。

また、副大臣の秘書官を務めていた官僚にも尋ねました。すると、「書かれている面会のなかには、副大臣としての仕事か、それとも政治家としてなのか、はっきり区別できないグレーなものもある。正直、積極的に開示したくないという気持ちもある」と打ち明けてくれました。

なんか大事な文書なのではないかという気がします…。

その保存状況は?

この日程表を各省庁はどれだけ保存しているのか? それを調べた人がいました。
東京のNPO、「情報クリアリングハウス」の理事長、三木由希子さんです。長年、公文書管理の問題を扱ってきた専門家です。

その三木さんが、2017年4月からことし2月までの、13の省庁すべての大臣の日程表について情報公開を求めた結果、回答がまだの防衛省と復興庁を除く、すべての省庁が「すでに廃棄している」と回答し、一切残されていないことがわかったのです。

三木さんは、各省庁に廃棄の理由も聞きました。
それが以下のとおりです。
▽外務省:役割が終わった時、随時廃棄
▽農水省:保有していない。上書きしている
▽環境省:即日廃棄
▽法務省:決まっていないが、随時廃棄
▽経産省:役割がおわった時点で廃棄
▽財務省:用務終了後に廃棄
▽総務省:即日廃棄
▽内閣府:即日廃棄
▽厚労省:日程終了後に随時廃棄
▽文科省:使用目的が済んだ時点で随時廃棄
これを聞いてどう思ったか、三木さんに聞きました。
するとこんな答えが返ってきました。
「驚きでした。日程表は大臣が何をしたかということを日々記録していく非常に重要な記録だと考えていました。この問題はきちんと向き合わなくてはいけないと考えるようになったのです」(三木さん)

指針では1年未満保存と明記

でも、どうして短期間で廃棄できるのか?
公文書の扱いを取りまとめている内閣府に聞いてみました。

すると、意外にもこうした廃棄そのものは問題と考えていないと回答しました。
なぜなのか、その理由は日程表の保存期間を定めた国の指針にあるといいます。

指針によると、その保存期間を1年未満にできると書かれています。つまり1年未満で廃棄できるから、仮に即日や短期間で廃棄されても問題ないということでした。

でも、ちょっと待ってください。公文書の管理は、あの問題で厳しくなったのでは?

相次ぐ問題で見直された指針 しかし…

覚えていますか?

財務省の森友学園との国有地売却をめぐる交渉記録、そして、防衛省の南スーダンでのPKO活動の日報をめぐる問題。

いずれも、文書の廃棄が問題となり、国会でも長く追及されました。政府も公文書管理の見直しに動きました。
議論は、内閣府の公文書管理委員会で行われましたが、そこで、これまであいまいだった保管期間を1年未満とする文書を具体的に定めて指針に明記することになったのです。

「行政の効率化」というのがその理由で、定型的・日常的な業務連絡、出版物を編集した文書などが1年未満に廃棄できるものとして例示されます。

ところが、そこに今回の大臣の日程表も加えられていたのです。

これには当時、議論に参加した有識者からも「日程表は歴史の検証に必要だ」と異論の声も上がったそうですがそのまま日程表は1年未満の保存文書として、扱われることになりました。

どうも釈然としません…。
公文書管理の問題に詳しい、東洋大学の早川和宏教授に当時の議論をどう思ったか聞いてみました。
「本来、この委員会では、公文書に対して、国民のチェックが働く仕組みが話し合われていました。ところが議論の途中で、内閣府側が行政の効率化という別の観点で提案をしてきたのです」

三大都市の知事の日程表は?

大臣の日程表は、1年未満で廃棄できる文書なのでしょうか?

そこで気になったのが東京・大阪・愛知の知事の日程表はどう扱われているかでした。

かつて、都知事の動静といえば、何かと物議を醸しました。それらは情報公開によって、知事の日々の行動が明らかになったことがきっかけでした。
これは東京都知事の日程表です。
知事の面会や担当課からのレクチャーの時間などが細かく記されていて、情報公開の対象にもなっているそうです。

東京都によると保存期間も知事の在任期間の終了後1年間までとされているというとです。
大阪府でも知事の日程表は、1年間は保存されていました。
過去には、災害時の知事の動きを、議会から求められて秘書課が作成した資料を提出したこともあったそうです。
愛知県は、知事の1日の動きをまとめた文書を地元新聞に提供していて、日程表と合わせて1年間は保存することにしているということでした。
こうみると、国より地方のほうが、少なくとも行政トップの情報公開の度合いは進んでいるように見えます。

さらに調べると…

さらに、取材していくと、今のルールの中であっても、今回廃棄された日程表の中に、やはり残されるべきものがあったのではないかという疑問を持ちました。
それは、指針の作成を話し合った、公文書管理委員会の議事録にこんな記述を見つけたからです。
★議事録(2017/12/20)
そこでは、大臣の日程表などは1年未満の保存から外すべきではないかという意見が出されたのに対する、内閣府の見解が記されていました。以下がその内容です。
「日程表のすべてが直ちに1年未満になるというわけではありません。例えば大きな災害があった場合の日程でありますとか、重要法案の国会審議に係る日程等、そうした場合については、歴史公文書等あるいは跡づけ、検証が必要な資料として、1年以上として保存しないといけない場合もあると考えてございます。(以下略)」
つまり日程表も、大きな災害があった時や、重要法案が審議された時のものは歴史的な検証が必要な資料となるので、1年以上保存しないといけないと内閣府も認めていたのです。事実、指針にも、「重要または異例な情報を含む場合には1年以上の保存期間を設ける」と明記されていました。

重要かどうか検討せずの省も

これを知り、早速、三木さんに確認すると…。

請求の対象期間にあった、2018年7月の西日本豪雨と2018年9月の北海道胆振東部地震は、いずれも甚大な被害を出した災害でしたが、国土交通省や総務省など災害対応にあたった省庁で、大臣の日程表は残されていませんでした。

取材すると、こんな回答が寄せられました。
「一律に1年未満でいいと認識していたので、日程表は1日使ったら廃棄していた。今後は保存の在り方を検討したい」(国交省)
「重要な日程かどうか検討は行っていないが、災害時の大臣の動きは別の資料でも確認できるので問題ないと考えている」(総務省)
この問題、今後どう考えていけばいいのか。東洋大学の早川教授に改めて聞きました。
「日程表の保存期間を1年にしても行政の効率化が落ちることはないと思う。1日で廃棄したことによる国民の信頼が失われることのほうが大きい。大きな災害の時の対応を検証する際にも日程表は必要だ」(早川教授)

皆さんはどう考えますか?

公文書管理の問題というと、ちょっと、とっつきにくいテーマかもしれません。
しかし、取材すると、今回の日程表をめぐる問題は、まだまだ分からないことが多くあります。

この日程表は廃棄してもいいものだったのか、それとも、ひょっとして廃棄されずに残されていたりしないのか。

私たちは、今後も取材したいと思います。霞が関の皆さんからの意見、また、広くこの問題に関心を持つ皆さんの意見、以下のアドレスまで、お待ちしています。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/kasumigaseki/