スリランカ同時爆破テロ 過激派組織のメンバーら40人拘束

スリランカ同時爆破テロ 過激派組織のメンバーら40人拘束
スリランカの最大都市、コロンボを中心に起きた同時爆破テロ事件で、スリランカの捜査当局はこれまでに国内のイスラム過激派組織のメンバーら40人を拘束しました。事件の背後に国外のテロ組織が関与していた可能性が高いとして、23日、全土に非常事態宣言を出し、捜査を進めています。
スリランカでは21日、最大都市コロンボと、その郊外などのホテルとキリスト教の教会、合わせて6か所でほぼ同時に爆発が起き、捜査当局は、いずれも自爆テロだったという見方を示しています。

スリランカ政府は、23日、一連の爆発による死者がさらに増えて321人になったと発表しました。

死亡した人のうち少なくとも31人が外国人で、日本人1人が含まれています。
また、けが人はおよそ500人に上っています。

捜査当局は、今回の事件に関連して、これまでに国内のイスラム過激派組織「ナショナル・タウヒード・ジャマート」のメンバーら40人を拘束したと発表しました。

捜査当局は、事件の背後に国外のテロ組織が関与していた可能性が高いとして、現地時間の23日午前0時、全土に非常事態宣言を出しました。

新たなテロへの厳戒態勢をしくとともに裁判所の令状がなくても身柄を拘束できるなど、治安機関の権限を強化して、捜査を進めています。

「ナショナル・タウヒード・ジャマート」とは

事件への関与が疑われている「ナショナル・タウヒード・ジャマート」という組織は、スリランカ東部を拠点にしているイスラム過激派組織です。

スリランカの捜査当局によりますと、イスラム教の中でも厳格なことで知られるサウジアラビアのワッハーブ派の影響を強く受けていると言われています。

これまで、あまり注目されることはありませんでしたが、3年前に、仏教批判を展開するようになり、去年、スリランカ国内で仏像を破壊するなどしてメンバーが逮捕されました。

捜査当局は、この組織の活動が次第に過激化しているとして監視対象とし、おととしの時点では、およそ2000人のメンバーがいたとされています。

ただ、最近ではサウジアラビアなど、中東に働きに出ていたスリランカ人が地元に戻って組織に加わり、開発が遅れている東部の貧困層への勧誘も活発化させているということで、急速に人数を増やしているとして当局が懸念を強めていました。

スリランカ政府は謝罪

スリランカ政府は今回の事件について、事前にテロの情報が寄せられていたものの、その情報が内部で十分に共有されず、事件を未然に防ぐことができなかったことを認め、謝罪しています。

スリランカ政府の報道官は、22日の会見で、コロンボを中心に起きた同時爆破テロ事件について、国内のイスラム過激派組織、「ナショナル・タウヒード・ジャマート」のメンバー7人による、自爆攻撃だったと指摘しました。

さらに報道官は、政府は、事前に外国の情報機関から複数回にわたって、キリスト教の教会やホテルなどを狙ったテロ事件が計画されていると、警告を受けていたことを明らかにしました。

そのうえで報道官は、「すべてわれわれの責任だ」と述べ、事前に情報が寄せられていたものの政府内部で十分に共有されず、事件を未然に防ぐことができなかったことを認め、国民に謝罪しました。

列車の車内でも不審物騒ぎ

最大都市コロンボで現地時間の23日午前8時半ごろ、走行中の列車の車内から持ち主が分からない不審なかばん2個が見つかり、軍の兵士や警察官が途中の駅で列車を止めて確認にあたる一幕がありました。

およそ2時間後に不審物ではないことが確認され、列車の運行は再開されました。

当時、駅では大勢の通勤客などで混み合っていて、兵士や警察官があわただしく出入りするなど構内は一時騒然としました。

スリランカ国内では、同時爆破テロ事件のあと軍や警察が各地で不審物の捜索を行っていて、22日も、コロンボ中心部のバスターミナルで87個の起爆装置が見つかるなど緊張した状態が続いています。

日本人の死者とけが人

関係者によりますと、スリランカで起きた同時爆破テロ事件では、日本人1人が死亡し、4人がけがをしています。

亡くなったのは現地在住の高橋香さん(39)で、高橋さんの39歳の夫、そして4歳の娘も、けがをしたということです。

さらに携帯電話会社のKDDIの社員でスリランカに出張中だった46歳の男性と、スリランカの日本大使館の32歳の男性職員もけがをしたということです。

病院長「搬送当時 高橋さんは意識あった」

スリランカの同時爆破テロ事件で死亡した高橋香さんが、病院に搬送された時の様子についてコロンボのカルボーウィル国立病院のグナワルダナ院長がNHKの取材に応じ、「搬送当時、高橋さんは意識があり、目立った傷はないように見えたが痛みで苦しんでいるようだった」と述べました。

その後の治療ではCTスキャンを使い、高橋さんは内臓に出血していることがわかったため3度にわたって手術を行ったということです。

また現在、捜査当局が死因について、調べを進めているということです。

グナワルダナ院長は、「多くの外国人も巻き込むテロが起きたことは悲しい。この10年テロがなかったのでとても心配だ」と話しています。

日本人シェフ「驚いた」

今回の事件についてコロンボのレストランでシェフを勤める長浩也さんは、「内戦も終わり、平和だと思っていた。スリランカでこういうことがあるとは、驚きました」と話していました。

この店では、日本人の駐在員の利用が多いということですが、事件後、予約のキャンセルが相次いでいるということです。

長さんは、同じくレストランでシェフを勤め今回犠牲となった高橋香さんの夫とも交流があったということで、「不安な部分はあるがテロに負けずにやっていきたい」と話していました。

専門家「テロの脅威は広がっている」

スリランカの同時爆破テロ事件について、国際テロに詳しい公共政策調査会の板橋功研究センター長は「6か所同時に爆破するのは、非常に計画的で組織的だ。今、イラクやシリアで過激派組織IS=イスラミックステートに参加したあと、各国に戻った帰還戦闘員が非常に脅威になっている。彼らはテロリストとして訓練を受けているので組織だった活動に慣れており、今回も関与している可能性がある。世界では最近、テロが沈静化していたので、脅威はなくなったと勘違いしていた人も多いと思うが、むしろ広がっていると考えるべきだ」と指摘しました。

そのうえで、「日本ではことし、G20サミットやラグビーワールドカップ、そして来年には東京でオリンピック・パラリンピックが開かれ、国際的な存在感は高まっていくのでテロに十分警戒しないといけない。特に最近は、空港や観光地など『ソフトターゲット』が狙われているので、警戒が必要だ。インターネットを見て、爆発物を作れる時代なので、安心してはいけない」と話しています。

イスラム団体幹部が語る”NTJ”とは

イスラム過激派組織「ナショナル・タウヒード・ジャマート」について、スリランカ・イスラム評議会のヘルミ・アフマド副会長が、NHKのインタビューに応じ、「イスラム教徒以外はこの世にいるべきではないという過激な思想をもっていてスリランカ政府に対して注意を呼びかけていた」と述べました。

この中でアフマド副会長は「この組織は、もともとスリランカにあったイスラム組織が4つに分かれて、そのうち最も過激化したもので数百人が従っているだろう」と述べました。

組織のリーダーを名乗るのはモールビー・ザヘラーンという人物で、現在、インド南部にいて、ビデオメッセージでスリランカ国内のメンバーに指示を出しているとしています。

そのうえで「イスラム教徒以外はこの世にいるべきではないという過激な思想をもち、異教徒に対する嫌悪を広めている」と述べ、スリランカ政府に対して注意を呼びかけていたことを明らかにしました。