日米 宇宙空間での連携強化確認 中国ロシアへの危機感が背景

日米 宇宙空間での連携強化確認 中国ロシアへの危機感が背景
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日米の外務・防衛の閣僚協議が19日、アメリカのワシントンで開かれ、日米双方は軍事力を拡大させている中国などを念頭に宇宙やサイバー空間でも連携を強化していくことを確認しました。背景には、中国とロシアが宇宙空間での軍事力を急速に強化していることにアメリカが危機感を募らせていることがあります。
アメリカ国防総省の情報機関、国防情報局はことし2月、宇宙空間の脅威に関する報告書を発表し、中国については来年までに低軌道の人工衛星をねらったレーザー兵器を配備する可能性が高いと指摘しました。また、ロシアについても去年の7月までにレーザー兵器の配備を始めたとしたうえで、人工衛星をねらった兵器である可能性が高いとしています。さらに、アメリカのシンクタンクCSIS=戦略国際問題研究所は今月発表した報告書で、中国が実効支配し人工島を造成したミスチーフ礁に去年、衛星の電波を妨害するための装置を設置したとする分析結果を公表しました。

背景にあるアメリカ軍のぜい弱性

アメリカが人工衛星に対する攻撃に強い危機感を抱くのはアメリカ軍全体が衛星に大きく依存しているためです。世界中に展開する部隊どうしの通信から、ミサイルの早期警戒、兵器を誘導するためのGPSの位置情報まで、アメリカ軍は人工衛星を通じて高度に統合されています。裏を返せば、その要である衛星が攻撃を受ければ軍の能力が一気に低下し、地上や航空戦力で圧倒していても宝の持ち腐れになりかねないのです。

とりわけ中国軍は、世界最強とされるアメリカ軍と真っ向から競うのではなく、アメリカが比較的、開発に力を入れてこなかった領域に力を入れることで、アメリカの優位性を覆す戦略をとっているとされます。宇宙分野は、まさにこの戦略の要なのです。
先週、アメリカ議会上院の軍事委員会で証言したアメリカのシャナハン国防長官代行は「中国とロシアはアメリカの能力を危機にさらすために、宇宙空間の軍事利用を進めている。われわれが優位に立つためには変革が必要だ」と述べ、中国とロシアに対する危機感を改めて示したうえで、対応を急ぐ考えを強調しました。

アメリカが進める宇宙空間での対抗策

宇宙空間を新たな戦闘領域と位置づけるトランプ政権。中国やロシアに対抗するため、来年までに宇宙での監視活動や装備の更新などに専従する「宇宙軍」の創設を目指しています。

さらに、アメリカが今、目指しているのが日本など同盟国との宇宙空間での同盟の結成です。アメリカ空軍はコロラド州で今月行われたアメリカ最大の宇宙シンポジウムに合わせ、日本やイギリス、オーストラリアなど12か国の空軍の代表が宇宙の安全保障問題について議論する初めての会議を開催。会議では、中国とロシアによる宇宙空間での活動に対し各国が懸念を表明したということで、宇宙の監視などで協力を進めることで一致しました。

その具体策としてアメリカが進めているのが、西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地にある作戦センターへの同盟国からの連絡官の受け入れです。この場所では、軍事衛星に対する攻撃への警戒のほか、宇宙ごみの監視などをしています。アメリカとしては、連絡官の受け入れを通じて各国との情報共有を進めたい考えで、日本の自衛隊からも連絡官の派遣を受ける方向で最終的な調整を進めています。
作戦センターを管轄する部隊のホワイティング副司令官は、日本が持つ衛星の打ち上げ能力などを高く評価したうえで、「日本はアメリカにとって欠かせないパートナーだ。連絡官の派遣を通じて、日本との連携が深まることを期待している」と述べました。

一方、アメリカ軍としては、同盟国との情報共有に加え軍事同盟の結成によって中国とロシアをけん制したい思惑もあります。アメリカ空軍のハイテン戦略軍司令官は「もしアメリカが攻撃を受ければ、それは同盟国に対する攻撃ということになる。同盟国と連携して対抗したい」と述べており、将来、宇宙空間でアメリカが攻撃を受ければ日本も同盟国としての対応を求められる可能性もあります。さらに今回の日米の外務・防衛の閣僚協議で、双方は日本の人工衛星にアメリカのセンサーを搭載して宇宙の監視体制を強化することで合意しました。新たなミサイル防衛網を構築することで中国が開発を進める「極超音速兵器」に対抗するねらいがあるとみられます。

専門家「宇宙での日米連携の可能性」

宇宙空間の安全保障問題に詳しいCSIS=戦略国際問題研究所のトッド・ハリソン上席研究員はNHKのインタビューに対し、「アメリカは世界各地で活動するために人工衛星などの宇宙での能力に大きく依存している。他の国はそれをよく理解している」と述べ、中国とロシアが宇宙空間でアメリカに攻撃を仕掛けることは極めて現実的な脅威だと指摘しました。

そして、「中国とロシアは宇宙空間での最新の兵器開発を進める一方で、アメリカは攻撃を防ぐための兵器を開発できていない。アメリカは宇宙での防衛力という面では遅れをとっている」と述べ、宇宙空間での中国とロシアからの攻撃に対する備えができていないことがアメリカの焦りの背景にあると分析しました。

そのうえでハリソン氏は、日本とアメリカは宇宙分野でも台頭する中国の脅威という共通の問題に対処するために互いに連携を深めたいという思惑があると指摘。「日本の衛星にアメリカ軍の設備を搭載することで2つの異なるタイプの衛星が使えるようになる。アメリカが目指す次世代のミサイル警戒システムの実現のために日米が連携を深める可能性がある」と述べました。