「会社への批判は迷惑だ」レオパレスオーナーたちのジレンマ

「会社への批判は迷惑だ」レオパレスオーナーたちのジレンマ
「レオパレス21への批判に、大半のオーナーは迷惑している」レオパレス21のアパートを所有するオーナーの男性から寄せられた手紙の内容の一部です。記者が書いた記事(詳しくは3月20日公開「レオパレス住民の憂鬱」など)に対するご意見でした。入居者たちの不満の声を取材してきた私にとっては、正直、意外ともいえる内容でした。そこで直接、話を聞いてみると、オーナーたちのジレンマと根底の課題が見えてきました。(社会部記者 藤島新也)

オーナーたちの本音は?

3月下旬。私に届いた手紙には、レオパレス21に批判が集まる現状に対する、オーナーの憤りの気持ちが込められていました。私は、本音を聞きたいと、差し出し人の西野(仮名)さんの元を訪問しました。
西野さんに聞いてみると…。
「私の所有している物件は、しっかりと管理され、賃料も滞ることはありませんので、会社を信頼しています。会社はミスを認め、徹底的な調査と修理、入居者への対応を約束しています。それにもかかわらず、会社への批判が続いていることに憤りを感じています。メディアが取り上げている、会社を批判しているオーナーはあくまで一部で、オーナー全体の代表ではありません。むしろ、大半のオーナーは迷惑しています。不満があるなら個人で賃貸管理や運営をすべきだと思います。他のオーナーに迷惑をかけないでほしい」
実は、こうした考えを持つオーナーは、少なくないようです。3月9日、東京・中野区のレオパレス21本社で開かれたオーナー説明会でも、参加者からは…。

記者:会社の説明を聞いてどう感じましたか?
男性:納得しました。これで安心して寝られます。

記者:説明会はどんな雰囲気でしたか?
女性:ほとんどが「ともに頑張りましょう」という方で、社長のあいさつ後は拍手が上がっていました。

記者:会社に対して不信感や怒りなどは感じないのでしょうか?
女性:怒り?無いです、無いです。人間は神様じゃないので失敗することはあるんじゃないですか?「問題だ」と騒いでいるのは、一部の方だけではないでしょうか。
会社が実施した、各地の説明会に参加したオーナーへのアンケートでも、実に85%が、会社の説明を「理解できた」「おおむね理解できた」と回答していて、「理解できなかった」と回答したのは、わずか0.5%だけだったといいます。

私は、施工不備の今回の問題では、物件を所有するオーナーも、退去を求められた入居者と同じ被害者だと思っていたので、会社に好意的なオーナーたちが多いことに驚きました。一体、どうしてなのでしょうか?

固定資産税対策で多額のローン

背景の1つと考えられるのが、オーナーの抱える金銭的な問題です。

レオパレス21のアパートを複数所有する岡田さん(仮名)が、最初に契約を結んだのは20年ほど前。きっかけは「固定資産税」でした。父親から相続する土地の固定資産税が年間150万円を超えたのが理由でした。

「驚きましたし、とてもじゃないが払えないと思いました。単に土地を持っているだけではお金は出ていくばかり。使わずに雑草が生えれば、消防から『火事になると困るのでしっかり管理をして』と指導もされます。定期的な草取りも負担が大きいので、何とかならないかと考えていました」

こうした時に出会ったのがレオパレス21でした。レオパレス21は「サブリース」という手法で成長した企業です。土地を持つオーナーにアパートの建設を提案。完成後は、建物を一括で借り上げ、入居者に「また貸し」します。オーナーには集めた家賃から「賃料」を支払う仕組みです。レオパレスは、空室の有る無しにかかわらず、事前に決めた賃料を支払う家賃保証を売りにしていました。これならオーナーは安定した収入を得るメリットがあるのです。ただ、オーナーの中には、アパートを建設する費用を、金融機関からの融資で賄った人もいて、賃料をローンの返済に充てるケースも少なくありません。
実は、岡田さんもこのケースでした。営業担当から「税金対策になる」「安定した賃料が得られる」という勧誘があり、興味を持ったといいます。子どもに資産を残してあげたいという気持ちもありました。

レオパレス21の社員とともに銀行を訪問すると、その場でおよそ1億円の融資が決まり、トントン拍子でアパートの建設に進みました。

その後も契約を増やし、結局、銀行から借りた総額は3億円に達しました。今もローンの返済は終わっていません。岡田さんのアパートでも施工不備が見つかりましたが、こうした状況では、会社に対する批判の声を上げたくても、ためらってしまうと話します。
「問題発覚後の会社の対応は遅く、不信感を持っています。入居者のことを考えれば、会社を追求したい気持ちはあります。ただ、騒ぎが大きくなって、会社が倒産でもしようものなら、ローンの返済はできませんし、破産してしまうかもしれません。複雑な気持ちで、正直、今はどうしたらよいのかわかりません」

「住宅」ではなく「金融商品」?

ほかにも、不動産賃貸を行っているという意識が低いケースもあるようです。中部地方にアパートを所有するオーナーの男性に話を聞くと、アパートの建設を資産運用の一環で行っている場合には、その後の不動産賃貸管理には興味が無いオーナーも多いのではないかということでした。

「私も含めてオーナーの中には、アパートを『住宅』ではなく、もはや『金融商品』に近い感覚で見ている人がいると思います。投資をする人からすると、株を購入しようと思っても、銀行はお金を貸してくれませんが、アパートを建てるとなれば、簡単に貸してくれる。これは非常に魅力的な金融商品です。こうしたオーナーからすると、管理に興味が無いので、突然、建物の安全性を問われてもピンと来ないと思います」

住宅政策は時代遅れ?

こうした状況を不動産のプロはどう見ているのでしょうか。不動産コンサルタントの長嶋修さんは、オーナーの自己責任で片づけるのではなく、根本にある日本の住宅政策の課題についても、真剣に議論すべきだと話してくれました。
記者:オーナーの事情をどう分析していますか?
長嶋:オーナーは本来、入居者にサービスを提供する立場で、いわばレオパレスと同じ事業者です。ただ、アパート購入の経緯を見ると、不動産賃貸業の経験が無いうえ、事業者としての意識も薄い人がいるのだと思います。さらに、多額のローンを抱えているオーナーは会社が倒れては困るので、会社に対して批判的なだけではいられないのだと思います。

記者:問題はどこにあると考えていますか?
長嶋:今回の問題の根底には、日本の住宅政策の問題点があると思います。現在、建物を建てたほうが固定資産税が安くなるので、オーナーはアパートを建てたくなるのは当然です。住宅が不足している時代であればよいですが、各地では空き家が問題になるなど、住宅が足りている現代には合っていない制度です。また、建設できる住宅の上限はなく、簡単に、どんどんアパートを建設できるという点も問題です。海外では、住宅の数を決めているところも多いのが現状です。今回の問題をきっかけに、こうした日本の住宅政策についても考えていく必要があると思います。

被害者なのに運命共同体?

レオパレス21の施工不備の問題では、入居者もオーナーも、会社に裏切られたという意味で同じ被害者だと考えていました。ところが、オーナーは多額の出資をしている、いわば運命共同体で、会社が倒れれば、自分も倒れてしまうリスクがあります。その点が入居者との最も大きな違いで、会社に対する好意的な姿勢の一因だと感じました。

アパートを建てた理由は、税金を支払うため、子どもに資産を残すため…とさまざまですが、どのオーナーもレオパレス21を信頼していたのは事実です。じくじたる思いを持ちながらも、現状では「会社を信頼するしか選択肢が無い」オーナーがいることもわかりました。会社はこのことを重く受け止める必要があります。また、こうした状況を生み出す住宅政策についても、しっかりと議論しなければいけないと感じます。