そこまでするか。うらやましい福利厚生

そこまでするか。うらやましい福利厚生
皆さんの勤め先にはどんな福利厚生がありますか。各種の手当てや、保養所、社内割引…いろいろありますが、満足していますか。4月に社会人になった人、転職した人も多いと思いますが、使い勝手がよいのかどうか、気になりますよね。実は今、アメリカで福利厚生がスゴいことになっています。ということで最前線の動きをあちこちで取材しました。読んだらうらやましくなること間違いなし、です。(ロサンゼルス支局長 飯田香織)

食べ放題に、昼寝スペースも

グーグル本社のカフェテリア
シリコンバレーの大手テック企業の取材に行って、ほぼ確実に目にするのが充実のカフェテリアです。朝食も昼食も無料で用意され、日本茶のペットボトルを含めてさまざまな飲み物やお菓子が取り放題。
洗面所に行ってみると、使い捨ての歯ブラシが「ご自由に」と大量に置いてあります。昼寝用のスペースを常設している会社さえあります。

いずれも社員の福利厚生。ソフトウエアエンジニアなど会社の成長に不可欠な人材を確保しようと思うと、給料はもちろん、働きやすい環境を用意することがますます大事になっているのです。

お金かけずに満足度アップ

ただ、こうした福利厚生には当然、お金がかかります。そこで大手以外では、お金をかけず、ちょっとした工夫で社員の満足度をアップしようという取り組みが広がっています。私がいるロサンゼルスも、ゲームの開発会社や動画コンテンツの制作会社などが集まり、人材の争奪戦が激しくなっています。
AI活用した広告サービスのガムガム
そうした会社のうち、AI(人工知能)を活用した広告サービスを手がけるガムガムを取材しました。2008年の創業で、ロサンゼルスのオフィスには160人のエンジニアやマーケティングの担当者が働いています。

癒やしのもふもふ

この会社の福利厚生は、わんちゃん。犬の同伴出勤を認めているのです。取材した日は、チワワや柴犬、大型のゴールデンレトリーバーまで15匹が“出勤”していました。こうした犬は「オフィス・ドッグ」と呼ばれ、社員と車で通勤してくるのが一般的です。会社の採用のホームページの福利厚生欄には健康保険や休暇制度と合わせて、「犬の同伴可」と明記してアピールしています。

チワワを毎日連れてくるというグラフィック・デザイナーの女性は「一緒にいると癒やされます。仕事が煮詰まったとき、犬と遊んだり、散歩したりするとストレスが解消されてよいアイデアが浮かびます」と手放しで喜んでいました。

鳴き声がうるさかったり、トイレが問題になったりするような犬を連れて出勤する社員はさすがにいません。ですので、オフィスに犬がいてもあまり気にならないといいます。
社長のフィル・シュレーダーさんと愛犬
社長のフィル・シュレーダーさん(42)も毎日、犬と同伴出勤しています。

「会社が大きくなっているので常に優秀な人材が必要です。大手企業は豊富な資金でさまざまな福利厚生を用意できますが、われわれはそこまでリソースがありません。犬を同伴できる職場環境というのは会社のよさを伝えられるし、ほかの会社と差別化できると思っています」

ガソリン出前します

福利厚生の充実を競い合う波にうまく乗ってビジネスを拡大している会社もあります。その1つがサンフランシスコに本社があるヨシです。ネット通販が普及して、あらゆるモノが配達されるようになっていますが、この会社が運ぶのはなんとガソリン。アプリで注文を受け、どこでも届けます。いわばガソリンの出前です。
テネシー州ナッシュビルでヨシの配達を取材しました。ナッシュビルは、アマゾンが配送拠点を新設する予定で、「テックの街」として成長中。人材の取り合いも起きています。

ヨシは、GM製のピックアップトラックの荷台に小型のタンクを積んで、この街のあちこちを給油に回ります。ガソリンは引火しやすく危険なため、配達は、特別な訓練を受けた「フィールド・テクニシャン」が担当します。私が同乗取材したトラックを運転するラリー・クロケットさんは元消防士でした。

この日、トラックが向かったのは会計事務所。1年前から福利厚生の一環でヨシと契約しています。事務所のスタッフはほぼ全員が車で通勤。毎週月曜の朝、スマホに「きょうはヨシ・デー」というメッセージが届きます。その日は、スタッフは給油口のフラップを開けて車を駐車。職場に向かいます。すると勤務中にヨシのトラックがやってきて1台1台、給油していきます。1人当たり月16ドル(約1800円)の会費は事務所もち。ガソリン代は本人が負担します。アプリで頼めば、オイル交換や洗車もしてくれます。
「夕方、ガソリンスタンドに寄ることなく自宅にまっすぐ帰れるのは便利です。健康保険や退職金はもちろん大事なのですが、どの会社も力を入れているので、こうしたちょっとした工夫が社員から求められているんです」

会計事務所で福利厚生を担当するジュリア・ジョンソンさんはそう解説します。

ヨシ、行くぞ

ガソリンを出前するヨシは、2015年創業。日本語の「よし、行くぞ!」という意味と響きが気に入った創業者3人が会社の名前にしました。ただ、日本には縁もゆかりもないそうです。
創業者でもあるブライアン・フリストCEO(31)は、1910年にアメリカで最初のガソリンスタンドが誕生して以来、全く変わっていない業界に変革をもたらしたかったと言います。創業から4年で事業は20都市に拡大。顧客の95%は会社の福利厚生として利用している人たちだそうです。
ブライアン・フリストCEO
「何でも配達してもらうのが当たり前になったという大きな流れが前提にありますね。ガソリンスタンドにいる時間を節約でき、時間を有効に使えると顧客は増えています」

フリストCEOは、そう話し、さらにエリアを拡大すると意気込んでいます。

あの手、この手で満足度アップ

今回、調べてみると、実にいろいろな福利厚生がありました。休暇中の海外旅行の行き先が初めて訪れる国ならば、5年に1度、費用を補助するソフトウエア会社。アマゾン・ドット・コムは、社員の配偶者が別の会社に勤め、育児休暇制度がないなど一定の条件がそろうと、配偶者が休業中の給料も合わせて、最大6週間、アマゾンが負担します。

こうした動きが過熱しているのは、人材争奪戦が起きている一部の分野に限られています。とはいえ社員の満足度をどうやってアップさせるかは、あらゆる会社の課題だな、と思いました。
ロサンゼルス支局長
飯田香織

1992年入局
京都局、経済部、ワシントン支局などをへて2017年からロサンゼルス