外国人に日本は選ばれるか

外国人に日本は選ばれるか
4月1日に施行された改正出入国管理法。「特定技能」の1号、2号という資格が新たに設けられ、事実上、単純労働分野で外国人材の受け入れが拡大することになった。国は今後5年間で最大34万人以上の外国人材の雇用拡大を見込んでいる。受け入れ拡大に向け、ベンチャー企業が新たな事業に乗り出している。(経済部記者 茂木里美)

企業に代わってビザを確認、日本語レベルもチェック

外国人専用の求人サイトを運営するベンチャー企業の「ヨロジャパン」。人手不足に悩む企業に代わって、日本で働きたい外国人の在留資格をチェックしたうえで、マッチングするサービスを展開している。
求人サイトのサンプル画面
日本の在留資格は全部で40種類近くある。就労が認められない資格がある上、留学生のように勤務時間は週に28時間までと決められている資格もある。就労が認められない外国人を採用したり、条件を上回る勤務を課したりした場合、雇用主には罰則もある。資格の確認を代行することで、マッチングを円滑にすすめようというサービスだ。

さらに「特定技能」資格の新設による外国人労働者の増加を見込んで、4月からはこれまでのアルバイトだけから、正社員の求人サービスも始める予定だ。「特定技能1号」の在留期間は最長で通算5年、「特定技能2号」には期間の上限はない。特徴は優秀な外国人労働者の「青田買い」だ。特定技能を取得するには日本語の試験と、業種ごとに実施される技能試験に合格する必要がある。
求職者の日本語能力なども掲載
このベンチャーでは、特定技能の取得を目指す、日本に暮らしている技能実習生や留学生の能力を、試験の前にチェックし、企業とマッチングする。資格取得後、スムーズに採用が進むことで人手不足に悩む企業の要望に応えると考えている。

OJTをすべてデジタル化

研修に関するサービスを展開している「クリップライン」は、外国人向け事業の拡大をねらっている。
映像をつかった研修をデジタル化して提供していて、このうち、外食向けでは、おじぎのしかたや「いらっしゃいませ」のあいさつのイントネーションなど、業務に必要な動作を30秒ほどの単位で細かくまとめ、見やすくしている。
研修の様子を動画でチェック
さらに、クラウド上で管理することで、全国どの店舗にいても、いつでもタブレットで正しい見本を確認することができる。また、研修の様子を撮影し、クラウドに上げることで、本社などからチェックすることもできるようにしていて、大手の牛丼チェーンや、居酒屋チェーンなどが導入しているということだ。研修を受ける外国人が増えることを見込んで、日本語に加えて5か国語の字幕をつけるサービスを2017年から始めた。

外国人の権利、どう守るか

さらに仕事以外のサポートをしようという企業もある。日本での生活を支援しようという「ワンビザ」だ。
岡村アルベルトさん
代表を務める岡村アルベルトさんは、日本人の父親とペルー人の母親のもとに生まれ、8歳の時に来日。大学を卒業後、東京入国管理局で勤務した経験を持ち、「日本で働く外国人をとりまく環境は決してよいものとは言えない」と感じ、会社を設立した。

例えば、外国人が銀行口座を開設するには、日本人に比べて必要な書類が多かったり、銀行によっては、勤務先が決まっている必要があったりと手続きが複雑だ。このため、岡村さんの会社では、在留資格や雇用状況などの外国人労働者の情報を把握。必要な情報の信頼性を会社が担保することで、口座を作りやすくしている。

すでに「セブン銀行」や大手カード会社の「クレディセゾン」と協力関係を築いているほか、今後は住まいを探しやすくするため、大手家賃保障会社と連携したりして、外国人が住みやすい環境作りのサポートを行っていく計画だ。
(岡村さん)
「これまでの日本は外国人にとっては住みにくく、実際に東南アジアでは働き先としての日本の評判が悪くなっている。このままだと日本に外国人が働きに来てくれないおそれもある。単なる労働力ということだけでなく、彼らの生活をサポートしていくことが必要だ」。
人手不足を解決しようと、外国人に広く労働市場の門戸を開いた日本。しかし、単なる労働力として捉えるだけでは、彼らにとって日本は魅力的な場所にならず、人手不足も解消しないだろう。「一緒にどう働くのか」、「生活の支えは」などさまざまな課題をビジネスチャンスととらえ、新たな事業に乗り出したベンチャー企業。外国人の受け入れに向け、多様なアイデアを持ち、スピーディーに動ける彼ら、ベンチャーの存在感が増していきそうだ。
経済部記者
茂木里美

フリーペーパーの編集者を経て
NHKに入局
現在は電機業界の取材を担当