香港の若者は なぜ青森で結婚するのか

香港の若者は なぜ青森で結婚するのか
香港から来たカップルは青森市役所に手を組んで現れ2人の名前を書き入れた婚姻届を出しました。沖縄県ではおととしの時点で、香港を中心に婚姻届を出した海外のカップルが400組となりました。自治体のねらいと最近の若者の思惑、それが相まった、香港カップルの急増です。
(青森放送局記者 桐山渉・ネットワーク報道部記者 玉木香代子・管野彰彦)

愛を誓った2人は香港から来たカップル

2人はゆっくりと手を組みながら青森市役所の廊下を歩いてきました。ピンクのコートの女性、茶色のコートの男性、2人が座ったのは市民課の前です。

目の前に出てきたのは婚姻届。職員の説明を聞いています。
2人は香港から来たカップル。婚姻届を出してから結婚式までは一直線。このあと2人が向かうのはスキー場です。

雪景色の前で愛を誓う

ウエディングドレスとタキシードに着替えると、(ちょっと寒そうですが)白銀のゲレンデをバックに記念撮影。すぐに近くの教会に移り、指輪を交換して結婚式を挙げました。
「とてもうれしいです、これから旅行でも青森に来ます」(男性)
「夢がかなったわ!すてきな場所、そしてすばらしい経験だわ!」(女性)
この結婚式、青森県や青森市やそれに観光連盟が企画した「リーガルウエディング」の第1号です。雪景色や青森市のねぶたをバックに記念撮影できることも売りに、ことし2月からインターネットを通じて海外のカップルに青森での結婚を呼びかけてきたのです。
第1号の2人はあちこちで写真を撮ってはSNSで投稿していました。
「カップルがSNSで幸せそうな青森での姿を発信してもらえば、海外から青森に来る人が増えるのではと期待しています」(青森市交流推進課主査 滝浪千絵さん)

先進県 沖縄

香港で行われたウエディングフェア
青森が参考にしたのは沖縄です。実は世界には日本の婚姻届が有効な国や地域があり、そこに目を付けて沖縄県が大々的なカップル誘致を進めているのです。

「リーガル(法律)ウエディング」と名付けられたのも“日本の法律に基づいて婚姻届を出して、結婚を成立させる”ことを指しています。

数も急増しています。沖縄県でリーガルウエディングを挙げた海外のカップルは
平成22年 1組
平成24年 100組
平成29年 400組。
そのほとんどが、香港のカップルです。
「香港では結婚するのに、婚姻登記所という場所に親族を集めて、宣誓式という儀式を行うんです。香港ではこれが面倒で煩わしいと考える若いカップルもいるようです。一方、日本では婚姻届を役所に出すだけで済みます。また香港と沖縄という距離の近さもありますし、日本で式をあげることがちょっとしたステータスのようなものになっている感もあります」(沖縄県観光振興課 知名耕平さん)
カップルにSNSを通じて沖縄の魅力を発信してもらい、イメージアップと観光客の誘致につなげようというねらいは青森県と同じです。

142組の村

ただ実際に婚姻届を受け付けるのは市町村の役場。おととし沖縄県でもっとも多い142組のリーガルウエディングを受け入れた読谷村に聞くと、婚姻届を受理するためには二重の結婚になっていないか、名前が正確に表記されているか、実際はたくさんの審査や確認が必要になるそうです。

このため手続きがスムーズにいくよう、ブライダル業者に仲介に入ってもらい、外国語で書かれた証明書を翻訳してもらったり、書類に不備があった時に対応してもらったりして協力して手続きを進めているそうです。
「日本にはない漢字にも対応して書類はつくっていますが、翻訳する事業者の仲介がなければ難しいので助かっています」(読谷村担当者)
でもなぜ142組も?
「海が見渡せるチャペルが人気で世界遺産の石造りの城をバックに思い思いの写真を撮るカップルもいます。口コミで人気が広がっているのではないでしょうか」(読谷村担当者)

逆リーガルウエディングはできるのか

それでは、逆に日本人が海外で結婚したとなると、戻ってきてからの扱いはどうなるのでしょうか。

東京 渋谷区の担当者に聞くと、重要なポイントは発行された婚姻証明書が日本で有効かどうかだそうで、もし海外での結婚を考えるのなら事前に法務局などで、相談しておいたほうがよさそうです。

証明書が結婚式を挙げた教会が発行したものだったりすると法的な効力がないことがあります。

また婚姻証明書が有効と認められても、日本の役所に戸籍謄本と日本の婚姻届を合わせて提出しなければなりません。

結局、日本の婚姻届を提出しないといけないことには変わりはなく、違いと言えば証人が不要になることだけとも話していました。
「海外の婚姻証明書を持ってくる方もかなりいますが、多くは日本人と外国人の夫、または妻のパターンです。日本人どうしが海外で結婚してその後、日本で届け出るというケースは少ないですね」(渋谷区担当者)
ちなみに戸籍上は海外で婚姻した日付が「婚姻日」として記載されるほか、「婚姻の方式」という欄には「アメリカ合衆国○○州の方式」とか、「フランス共和国の方式」などと記載されるとのことでした。

思惑は海を越え

国内では少子化や挙式を挙げない「ナシ婚」の動きもある中で、海外のカップルを結婚で呼び込もうという動きはほかの自治体でもあり、地域を世界にPRする作戦のひとつにもなってきています。海をまたいだリーガルウエディング、さらに広がっていくのでしょうか?