日の丸オーディオ 選ぶ道は

日の丸オーディオ 選ぶ道は
音楽細胞が、うずくーーー。中森明菜さんのCMも話題になった80年代後半のパイオニアのコンポのキャッチコピーだ。先駆的なオーディオ機器で人気を集めたパイオニアの株式は26日、東京証券取引所で最後の取り引きを終えた。上場を廃止し、今後は海外ファンドの傘下で経営再建を目指す。名門企業として肩を並べてきた「山水電気」は破産するなど、かつて世界を席けんした日の丸オーディオメーカーに当時の勢いは見られない。
一方で、ブランド復活を期した挑戦も始まっている。それぞれのメーカーが選ぶ道を見つめた。(経済部記者 井田崚太)

“開拓者”は海外ファンドの傘下に

セパレート型ステレオ
スピーカーとレコードプレーヤーなどを分離した「セパレート型ステレオ」、“絵が出るレコード”としてカラオケで話題をさらった「レーザーディスク」、「DVDレコーダー」、「大型プラズマテレビ」。“開拓者”という社名のとおり、パイオニアは、時代の最先端を行く製品を次々と世に送り出してきた。
DVDレコーダー
しかし、2000年代に入ると経営不振に陥り、4年前には主力の家庭用オーディオ事業を売却。その後は、カーナビゲーション事業などに集中してきたが、ここでも行き詰まった。経営再建のために香港のファンドの傘下に入り、今後、カーナビゲーション事業とともに、自動運転で使われるセンサーの開発・販売などを強化していく。
株式の上場を廃止することになり、26日には東京証券取引所一部での最後の取り引きが行われた。ピーク時の平成2年に6880円だった株価は、この日の終値は65円だった。

デジタル化の波にのまれた日の丸オーディオ

日の丸オーディオメーカーの衰退が指摘され久しい。

高性能なアンプを売りにしてきた「山水電気」は平成26年に破産。

「ケンウッド」も、生き残りをかけて、平成20年に「日本ビクター」と経営統合し、現在は「JVCケンウッド」として、主にカーナビ事業に注力している。
ケンウッドと日本ビクターが経営統合を発表(2008年)
衰退の背景にあるのは、携帯型音楽プレーヤーやインターネットを通じた音楽配信の普及、さらにはスマートフォンなどの登場によるオーディオ機器の存在感の低下だ。

かつてオーディオの“御三家”と称されたパイオニア、山水電気、それにケンウッドは、こうしたデジタル化の波にのまれた。

ブランドが次々復活

一方、デジタル世代の中でも、音にこだわるユーザーをねらい、ブランドを復活させようという動きもある。
アイワ 初代ラジカセ
ラジカセなどで知られた「アイワ」。

ソニーに吸収合併され、その後、ブランドとしての生産が終わっていたが、2年前復活した。秋田に本社を置く「十和田オーディオ」がこれまでの製造受託から新たに自社製品を展開するため、ソニーから商標の使用権を取得。”新生”アイワを立ち上げた。
アイワの社長を務める三井知則さんは「“アイワ”というブランドには、昔からのファンが世界中に大勢いて、このままにしておくのはもったいないと感じた。オーディオ自体は衰退する傾向にあるが、音や映像を感じたいというユーザーの需要はなくならず、形を変えながら必ず残っていく」と展望を語った。
“新生”アイワのスピーカー
ラジカセなど、かつてをほうふつさせるレトロ感のある製品に加え、若い世代に使ってもらおうとブルートゥースでスマートフォンと連携するスピーカーなども販売している。

このほかにも、「パナソニック」は5年前にオーディオブランド「テクニクス」を、またJVCケンウッドも、2年前に「ビクター」のブランドを復活させた。

各ブランドとも、CDをはるかに超える情報量を持つ「ハイレゾ」など、高い音質に対応する製品をラインナップしている。価格は決して安くはないが、蓄積されてきた技術やノウハウをもとにリアリティーある音の表現力でユーザーの心をつかむことを目指している。

往年の輝きを取り戻せるか

“復活”と言っても、それぞれのメーカーが置かれた状況は依然、厳しさがある。

オーディオ機器の市場縮小が続く中、復活で昔からのユーザーには歓迎されているとしても、当時を知らない若い世代にいかに魅力を伝え、スマホなどとの差別化をどう図っていくかは今後の大きな課題だ。

ブランド価値の再構築、そして、これまで以上に、急速に変化する時代に対応していく技術力が問われるだろう。往年の輝きを取り戻す日は来るか、日の丸オーディオメーカーのこれからの挑戦に期待が集まる。
経済部記者
井田崚太
平成25年入局
京都局をへて
現在、電機業界を担当