スキー場は もうダメなのか?

スキー場は もうダメなのか?
平年より早く桜が咲き、スキーシーズンも終わろうとしています。ただでさえスキー・スノボ人口が減少するなか、ことしは暖冬で雪不足のところも多く、多くのスキー場が厳しい経営環境に置かれました。「スキー場はもうダメなのか?」と思いきや、意外にも元気なスキー場が存在することが分かりました。何が明暗を分けるのか。探っていくとビジネス全般にも通じるヒントがありました。(おはよう日本 おはBizキャスター 豊永博隆)

来場者激減

平成が始まったころ、スキー場はバブル経済に酔いしれていました。1993年(平成5年)にスキー場来場者は1860万人に到達しました。しかし、長野オリンピックのあとは右肩下がり。今ではなんとも寂しい数字になっています。
去年、日本能率協会総合研究所が行った調査では赤字経営のスキー場が63%を占めるまでにいたっています。ここでふと思ったのは黒字の36%のスキー場はどうしているのか、ということです。

黒字のスキー場は何をしているのか?

私は岐阜県郡上市にあるスキー場「高鷲スノーパーク/ダイナランド」を訪れ、スキー場再生の仕掛け人、堀江政志さんに会いました。堀江さんはスキー場の再生を手がける運営会社マックアースのマーケティング担当の取締役です。
最初に連れて行ってくれたのは山頂のレストランです。多くの人でにぎわっていました。スキー場来場者の多くが若者、しかも女性というデータからSNS映えする場所をつくろうと今シーズンからテラスを設置したのです。
遠く長野県と岐阜県にまたがる乗鞍岳が見える絶景と撮影スポット。レストランのメニューもSNS映えを意識したものに一新しました。
こちらは私が撮影した地元産にこだわったサンドイッチ。新テラスとSNSによる拡散効果もあってレストランの利用者は昨シーズンの2倍に増えたそうです。

徹底したマーケティング

堀江さんについていくと、オフィスではなにやら真剣にパソコンを見ています。WEBで販売されるリフト券の時間ごとのグラフでした。売れ行きが増加する山の少し前にフェイスブックなどでスキー場情報を発信することで、スキー・スノボに行くかどうか迷っている人たちの背中を押すことを狙っていました。
ナイター営業も、一般のスキー場では21時までのところ、異例の毎日23時までやることにしました。当初、従業員からは反対の声ばかりでしたが「それぐらいやらないとスキー場は変わらない」と説得したそうです。

始めてみると、仕事終わりに滑りたいという社会人から大好評。このエリアは名古屋から車で1時間半という距離のため、早めに仕事を終えれば23時までなら十分滑ることができるというわけです。暖冬だとスキー場の来場者は減る傾向にあるのですが、ナイター客は底堅く推移しているというのがおもしろいところです。

キャッシュレスも

レジでリフト券をタッチ
さらに、堀江さんの会社が運営する同じ岐阜県内の「鷲ヶ岳スキー場」では今シーズンからスキー業界で初という、ICリフト券とキャッシュレス決済が1つになったサービスを導入しました。リフト券を購入した人の属性(男性か女性か)や、どんなものをいつ何点購入したのかが分かります。将来的にはリフトの乗車回数などのデータとひも付けして、顧客の購買行動を「見える化」し、ニーズにあったサービスを見つけ出そうとしているのです。
スキー場再生を仕掛けた 堀江政志さん
「スキー場が衰退した原因のひとつにマーケティングをきちんとしていなかったことがある。顧客が何を求めているのか、何がつらいのか、何が楽しくないのかしっかり受け止めて改善して投資をしていく。顧客が行きたいと思うところ、人に勧めたくなるものをつくっていきたい」

インバウンド対策の徹底

スキー場が大きな期待を寄せているのが外国からのスキー・スノボ客。インバウンド対策を徹底することも大事なカギです。
長野県の「斑尾高原スキー場」が力を入れているのが「ツリーラン」という林の中を滑るコースの設置です。大自然のなかを滑るのが好きな欧米のスキー・スノボ客。許可なくコース外に出て遭難事故を起こされては迷惑ですが、スキー場内にこうしたコースがあれば手軽に安全に楽しんでもらえるのではないかと考えたわけです。

斑尾とパウダースノーをかけて、海外ではmadapow(マダパウ)と呼ばれるようになり、訪れる外国人が6年間で7倍に増えました。スキー場に行くと、ここは一瞬外国かと思うぐらい、英語が飛び交っています。

将来の客を呼び込む

目先の利益にとらわれず、将来の需要をつくりだそうという取り組みも広がっています。
リクルートが2011年/12年シーズンから取り組んでいるのが19歳のリフト券をそのシーズンは無料にするという「雪マジ!19」というプロジェクト。スキー場にとって最大の収益源であるリフト券を無料にするという大胆な対策に当初は反発するスキー場も多かったそうです。しかし、今シーズンは180以上のスキー場が参加。すそ野が広がっています。

なぜ19歳なのか。小学生のとき両親に連れられてスキー・スノボを体験した人が、高校卒業後、友人たちと楽しさを味わうと、その後リピーターになってくれるだろうとの読みからです。さけの遡上みたいなものでしょうか。

リクルートが調べたところ、19歳無料を経験した世代は、経験しなかったそれより上の世代よりもスノーボードを楽しむ割合が上がっているそうです。また、ことし2月末時点のデータで、この暖冬・雪不足にもかかわらず、のべ動員数が対前年比で7%増えていることが分かっています。

成功体験から抜け出せないと…

あるスキー場経営者は取材に対して「昔はどんぶり勘定だった。例えば人工降雪機を使うとき、電気代など考えずにただ大量の人工雪をつくっていた。経営というものが分かっていなかった」としみじみ語っていました。

バブル期は、リフトを動かせば黙っていても客が来た。その成功体験が強烈だっただけに、スキー場経営に携わる人の多くがなかなか自分の方法を変えられなかったという側面はあるのでしょう。しかし、レジャーが多様化するなか、「昔と同じ」ではうまくいきません。顧客目線にたち、変化に素早く対応すれば「スキー場はもうだめ」なのではなく、まだ、いろんな可能性が残っていることを取材を通じて感じました。
おはBizキャスター
豊永博隆

平成7年入局
函館局 サハリン駐在をへて経済部
金融・通商・エネルギー取材を長く担当
現在は経済部デスクを兼任