夫婦別姓訴訟 “戸籍法の規定は合憲” 訴え退ける 東京地裁

夫婦別姓訴訟 “戸籍法の規定は合憲” 訴え退ける 東京地裁
結婚するときに夫婦別姓を選べない戸籍法の規定は憲法に違反するとして、ふだんは旧姓を使っている会社社長などが国を訴えた裁判で、東京地方裁判所は、憲法に違反しないという判断を示し、訴えを退けました。
東京のソフトウエア開発会社「サイボウズ」を経営する青野慶久社長(47)など男女4人は、戸籍法の規定で日本人が外国人と結婚するときには夫婦別姓を選べるのに、日本人どうしの結婚で選べないのは法の下の平等を定めた憲法に違反するなどとして、国に対して合わせて220万円の賠償を求めました。

25日の判決で、東京地方裁判所の中吉徹郎裁判長は「そもそも日本人と外国人の結婚については民法が適用されないと解釈され、日本人どうしの結婚の場合とは状況が異なる」と指摘しました。

そして「結婚後の夫婦別姓を認めれば法律上の名字が2つに分かれ、そのような事態は現行法で予定されていない。夫婦別姓を認めないことには制度上、合理性がある」として、戸籍法の規定は憲法に違反しないと判断し、訴えを退けました。

夫婦別姓をめぐる裁判では、過去に別姓を認めない民法の規定が憲法に違反するかが争われ、最高裁判所が4年前に憲法に違反しないという判断を示していました。

原告の青野社長「大変残念だ」

判決について、訴えを起こした「サイボウズ」の青野慶久社長(47)は会見で、「夫婦別姓は何十年も議論されているが、国会では放置されている。司法が国会に意見しないことは大変残念だ。旧姓を通称として使用する人が増えれば増えるほど、会社では、誰がどの2つの名字を使っているか把握しなければいけなくなるなど、社会の中で不安定さが増えていく。裁判所にはそこまで踏み込んで判断してほしかった」と話していました。

また、原告の代理人の作花知志弁護士は「家族としての名字と社会的・経済的な名字は、機能が分かれていているはずだが、今回の判決は、昔の家族としての名字にこだわりを持っている判決だ。女性の社会進出が進んでいるにもかかわらず、名字の社会的な意味を考慮していない。4年前の最高裁判決から進歩がないが、早くこの問題を解決したい」と述べ、控訴する考えを示しました。

法務省民事局「国の主張が認められた」

法務省民事局は「国の主張が認められたものと認識しています」というコメントを出しました。

夫婦別姓 民法と戸籍法の規定

夫婦の名字について、民法750条では「夫婦は、結婚の際には夫または妻の名字を称する」と定められ、夫婦別姓は認められていません。

これについて、4年前に最高裁判所が判決で、「夫婦が同じ名字にする制度は社会に定着してきたもので、家族の呼称を1つにするのは合理性がある」と指摘して憲法に違反しないという初めての判断を示しました。

そのうえで、「社会の受け止め方によるところが少なくなく、制度の在り方は国会で論じられ、判断されるべきだ」と指摘していました。

一方、戸籍法107条は、日本人が外国人と結婚した場合に夫婦別姓を認めています。

「結婚相手の外国人の名字に変更するときには6か月以内に届け出ることができる」としていて、届け出なければ、夫婦で別の名字となります。

内閣府の世論調査 別姓認める回答が約4割

内閣府はおととし、家族に関する法制度について世論調査を行い、59%に当たる2952人から回答を得ました。

それによりますと、夫婦別姓に対する考え方を尋ねた質問で、「夫婦が希望した場合に別の姓を名乗れるよう法律を改正してもかまわない」と答えた人が42.5%と最も多くなりました。

一方で、「結婚する以上、夫婦は同じ名字を名乗るべきで、法律を改正する必要はない」と答えた人が29.3%。「夫婦は同じ名字を名乗るべきだが、結婚前の旧姓を通称としてどこでも使えるように法律を改正することはかまわない」と答えた人が24.4%でした。

マイナンバー旧姓併記を検討

職場などで旧姓を使い続ける人が増えていることから、政府ではマイナンバーカードやパスポートは旧姓を通称として併記できるようにしようと検討を進めています。

マイナンバーカードは、ことし11月ごろから旧姓の併記が可能となるように関係法令の改正やシステムの改修が進められています。

パスポートについては、現在は仕事などで外国で旧姓が浸透している場合などに限って、併記が認められていますが、今後は、希望する人は誰でも併記できるようにすることが検討されています。

「民法と戸籍法まとめて議論を」

判決について、家族法が専門の早稲田大学の棚村政行教授は「4年前の最高裁判決と同様に、家族の問題は立法によって解決すべきだとしていて、民法と戸籍法のずれについて積極的に判断しなかったことは、裁判所の役割を放棄していると言わざるをえない。一方、今回の裁判で、原告側は戸籍法の改正によって夫婦別姓の実現を求めたが、民法を改正しないまま夫婦別姓を認めると、かえって社会的な混乱を招くという批判もある。民法についてではなく、戸籍法についての判断という点からすれば、やむをえない判決とも評価できる。民法と戸籍法とを分けて考えるのではなく、まとめて議論することが必要ではないか」と話しています。