これ先生の仕事?

これ先生の仕事?
「高松さん、ネタにしてください!」私はお笑い芸人として活動しながら、全国の学校で出張授業を続けてきた。しかし、先生たちの仕事はネタにしようにも悲惨すぎて笑えない。(おはよう日本ディレクター 高松奈々)
以下はすべて私が先生から聞いた実話だ。
「引きこもりの生徒の家に訪問。親の代わりに風呂に入れる」(50代男性)
「年度末に、教室・廊下・階段の手すりのペンキ塗りを行う」(30代女性)
「教材費や修学旅行費が未納の保護者に電話し、家へ訪問し回収する」(30代女性)
「地域の夏祭りで、夜中23時までパトロールをする」(40代女性)
「英検の試験監督」(30代女性)
皆さんはこれらが先生の仕事だと思いますか?

確かに、こうした先生の働きがなければもたない地域や家庭があることは間違いない。今、大きな問題となっている虐待防止にも学校は大事な役割を担っている。
でも、そうした業務が先生たちを追い込み、授業に集中できなくなったら本末転倒だ。

実際に「忙しくて授業の準備をする時間が足りない」と回答した小学校の先生は、全体の9割に上ったという民間の調査結果もある(ベネッセ教育総合研究所調査2016年)

先生の多忙が、教育の質を低下させれば、保護者にとってもゆゆしき問題だ。私たちは、学校に過度な期待をしてはいないだろうか。

「受験に有利だから、部活で結果を出してほしい」「学校で検定を受けさせてほしい」など。

そろそろ私たちの側も考え方を変える必要があると思いませんか?

白羽の矢は「保護者・地域」に

ようやく国も先生の働き方を改善すべく乗り出した。
4月からは働き方改革がスタート。これまで規制がなかった先生の残業時間。そこに月45時間という上限が示された。

ただ、そうなると必要となるのが学校業務の新たな担い手。そこで国が白羽の矢を立てたのが「保護者・地域の力」なのだ。
上の図で黄色の部分、
(1)登下校に関する対応
(2) 放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導されたときの対応
(4) 地域ボランティアとの連絡調整
(6) 児童生徒の休み時間における対応
(7) 校内清掃
(8) 部活動
(9) 給食時の対応
(12) 学校行事等の準備・運営においては、保護者や地域の協力が重要と結論づけた。
問題の解決には先生の数を増やせばいいという専門家も多い。

しかし、国の財政状況はそれを許さない。
だから保護者や地域住民なのか?みんなそんな時間ないのでは?結局、ご都合主義にすぎないのではという心配が頭をよぎる。

保護者・地域が学校に!

しかし、ジャーナリストの基本は現場!

取材を進めると、岡山県のある小学校がおもしろいと耳にし、早速現地に飛んだ。浅口市立鴨方東小学校である。
そこで私は意外なものを目にした。卒業式を前に体育館を掃除しているのは保護者や地域の住民たち、しかも8人で!
小学校の正面玄関を飾る花。生けていたのは地域に住む大岸貴美子さんだった。生け花はこれまで先生の仕事だった。

しかし、昨年度から大岸さんら地域住民が担当するようになったという。

「どんな思いでやっていますか?」と聞くと、大岸さんは「役に立っているなという実感があります。学校に来るのはすごく楽しいです」と満面の笑顔を返してくれた。
さらに、休み時間、校庭で遊ぶ子どもたちを見守るのも保護者の仕事だ。40人のPTAが交代で担当しているが、その間、先生たちは授業の準備をすることができる。

学校・保護者・地域住民が本音でつきあう!

保護者・地域をどうやって巻き込むことができたのか。その鍵は“話し合い”だった。

メンバーは先生、住民、PTA、老人クラブの代表など。2年間も議論し、先生の業務をひとつひとつ見直したという。
以下がその成果である。

正月飾りなどを燃やす「とんど祭り」。学校が担っていたこの祭り。地域に任せた結果、先生の負担は大きく減った。
他にも、サマーキャンプ・登下校の安全指導・防犯教室などを地域に委託。音楽会・夏休みの水泳教室・夜間の電話対応などは廃止や簡略化し、合わせて50の業務を見直した。
この小学校では、こうした取り組みにより、2月の時間外勤務の平均を2年前の63時間から3割減らせたという。

“改革”を行った本人たちに話を聞いてみた。

まずは学校側の代表として参加していた谷野善則先生に「当初はどんな感じでしたか?」と尋ねた。
すると、少し間をおいて「頼み事をすれば、先生は楽をしようとしているんじゃないかと思われないかととても怖かったです」と振り返った。
そんな学校に対し、地域の側は、意外にも学校が声を上げることを待っていた。生け花を担当していた大岸さん。実はこの会議の議長を務めている。
大岸さんは学校の訴えを聞き、「ここは手を貸してほしいと言って」と逆提案。

「なぜそんな提案ができたんですか?」そう大岸さんに聞いた。
すると、「『学校を手伝いたい』という意識は住民の中に強くあると思っていたからです」と答えてくれた。

大岸さんは実際ボランティアのまとめ役を買って出て、地域に任された業務が決まると、引き受けてくれる住民を探した。
住民それぞれの空き時間や得意分野を把握している大岸さんしかできない役目だ。すでに協力してくれた住民は延べ120人にのぼり、今の学校になくてはならない存在となっている。
安田隆人校長は力を込めてこう話した。
「保護者の皆さん、地域の皆さんの力によって、助けられているので感謝の限りです。『教材研究の時間が少し増えた』と感じるとか、先生の生活・仕事に生かされていると実感できました。元気で笑顔で子どもに接しないと、やっぱりいけないと思います」

鍵は“つなぐ人”“PTAのOB・OG”

どうすればこの取り組みをほかの地域でも実現できるか?

東京・三鷹市で同様の実践で成果を挙げた四柳千夏子さんに話を聞いてみた。
開口一番、四柳さんは「大岸さんのような存在、すばらしいですね」と鴨方東小の取り組みを称賛。

では、なぜうまくいかないところが多いのかと聞くと、こんな指摘をされた。
「まずは大岸さんのような“つなぐ人”がいない。あと、保護者や地域が「あれをやりたい、これをやりたい」と学校に提案しすぎると、かえって学校の仕事を増やしてしまうこともよくある。だから、学校のニーズをしっかりつかんでほしい。キーパーソンは学校をよく知るPTAのOB・OGです」
つまり、子育てを終えた時間のあるPTAの役員を活用することが成功の鍵だそうです。
名古屋大学の内田良准教授もシルバー世代の参加が重要だと指摘する。
「保護者の世代は仕事、家庭と忙しい。その点、子育てを終えたシルバー世代には時間的なゆとりがある。実際、登下校の見守りをお願いしている地域は多い。なんでもPTAに押しつけず、地域に眠る資源を探るのが重要だ」

そのうえで、内田さんは「子どものために必要というと、全部の業務をやらないといけなくなる。優先順位をつけることがいちばん重要。不要なものは抜本的に見直し、英断を下すことが学校長に求められる」と締めくくった。

あなたの考えを聞かせてください

かつて地域や家庭が担っていた多くのものが(あいさつ、しつけ、祭りなど)今は学校に求められている。
取材した先生からも「学校が福祉施設になる」という声があったのも事実だ。私も、取材を始めた当初は地域や保護者の力の活用に懐疑的だった。

しかし、その可能性は結構あると今は感じる。そう思うようになったのは鴨方東小学校を手伝っている地域の方々の笑顔を見たからなのかもしれない。
皆さんの近くにある「学校のSOS」に、あなたはどう答えていますか?具体的に取り組んでいらっしゃることを教えてください。考え(賛成・反対問いません)だけでも結構です。

http://www3.nhk.or.jp/news/contents/newspost
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