トランプ大統領 “ゴラン高原 イスラエルの主権を認める時”

トランプ大統領 “ゴラン高原 イスラエルの主権を認める時”
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アメリカのトランプ大統領は、イスラエルが占領するゴラン高原について、イスラエルの主権を認める考えを明らかにしました。来年の大統領選挙を見据え、国内の支持基盤をつなぎとめるねらいがあるとみられますが、シリアやイランが反発し緊張が高まる可能性もあります。
トランプ大統領は21日、ツイッターに「アメリカがゴラン高原でのイスラエルの主権を完全に認める時だ。ゴラン高原は、イスラエルと地域の安定にとって戦略上も安全保障上も非常に重要だ」と書き込み、ゴラン高原についてイスラエルの主権を認める考えを明らかにしました。

ゴラン高原はもともとシリアの領土ですが、1967年の第3次中東戦争で隣国イスラエルが占領しました。最近は、シリアのアサド政権を支援するイランが、ゴラン高原の周辺で軍事的な影響力を強めているとして、イスラエルがアメリカに、イスラエルの領土だと認めるよう働きかけ、トランプ大統領がその求めに応じた形です。

トランプ大統領は来週、イスラエルのネタニヤフ首相とワシントンで首脳会談を行う予定で、来年の大統領選挙を見据えイスラエル寄りの立場を鮮明にすることで、キリスト教福音派やユダヤ系のロビー団体など国内の支持基盤をつなぎとめるねらいもあるとみられます。

また、中東で影響力の拡大を図るイランの動きをけん制するねらいもありそうです。

シリア国営通信「最も強いことばで非難」

シリア国営通信は22日、「アメリカの大統領による無責任な発表は、イスラエルに偏向した、分別を欠く姿勢を表したもので、最も強いことばで非難する。アメリカ自身も賛成した国連安保理の決議に反するもので、アメリカが世界の平和と安定の脅威となったことは明らかだ。今回のアメリカの大統領の発表によって、シリアは、あらゆる手段を通じてこの尊い領土を解放する決意だ」とするシリア外務省の声明を伝えました。

イラン「危機をもたらしかねない」

イランの地元メディアは22日「トランプ大統領の個人的かつ性急な決断は、中東に終わりのない危機をもたらしかねない。イスラエルによる占領を終わらせる以外に解決策はない」とする外務省報道官の談話を伝えました。

トルコ大統領「新たな緊張と危機を招く」

トルコのエルドアン大統領は、イスタンブールで開かれた、世界57のイスラム教の国と地域で作るイスラム協力機構の会合で22日、演説し「アメリカのトランプ大統領が出したゴラン高原に関する声明は、残念なもので、この地域に新たな緊張と危機を招く」と述べ、強い懸念を示しました。

そのうえで、「慎重さが求められるこの問題でトルコやイスラム協力機構が沈黙し続けることも、一方的な主張に屈服することもない。占領を正当化する主張を決して許すことはできない」と強く批判しました。

アラブ連盟「撤回するよう求める」

アラブ諸国やパレスチナが加盟するアラブ連盟は22日、アブルゲイト事務局長のコメントを発表し、「今回のアメリカの発表は国際法に反するもので、国際社会は、ゴラン高原が、占領されているシリアの領土だと認識している。1981年の国連安保理の決議でも、イスラエルによるゴラン高原の併合は認めないことを全会一致で確認している」と指摘し、強く非難しました。

そして「アラブ連盟はシリアの権利を支持する。ゴラン高原でのイスラエルの主権を認めることは、アメリカの立場に深刻な影響を与える。誤った判断を見直し、撤回するよう求める」としています。

イスラエル首相 “米大統領に感謝”

アメリカのトランプ大統領がイスラエルが占領するゴラン高原について、イスラエルの主権を認める考えを明らかにしたことについてイスラエルのネタニヤフ首相は早速謝意を表明しました。

ネタニヤフ首相はイスラエルを訪れているアメリカのポンペイオ国務長官とともにエルサレムで記者会見し、「トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認定し、次に、イラン核合意から離脱してくれたのに続いて、歴史的な偉業を成し遂げてくれた」と歓迎しました。

そのうえで「イランがシリアをイスラエルの攻撃拠点にしようとしている最中にゴラン高原でのイスラエルの主権を認めてくれたのだ。トランプ大統領に感謝したい」と述べました。

イスラエルは敵対するイランがゴラン高原に隣接するシリア側で軍事拠点を築いたり、イスラエル側に向けてロケット弾を発射したりしているとみています。

このため、イスラエルは安全保障上の重要性が高まっているとして、アメリカに対して占領するゴラン高原の主権を認めるよう働きかけていました。

米国務長官「勇敢な決定」

イスラエルを訪問中のアメリカのポンペイオ国務長官は21日、ネタニヤフ首相とともに会見し、「トランプ大統領は、激しい戦いのあった重要な場所がイスラエルに帰属するのが適切だという決定を行った。これは勇敢な決定で、イスラエルの人々にとって重要で歴史的な意味がある」と述べました。

そのうえでポンペイオ長官は、今後もイスラエルとの協力を深め、さまざまな脅威に対し協力して取り組んでいく方針を強調しました。

官房長官「立場に変更はない」

菅官房長官は午後の記者会見で、「トランプ大統領のツイッターでの発信は承知していて、現在、その詳細な内容について精査、分析している。わが国として、本件の動向を関心を持って注視しているが、いずれにしろイスラエルによるゴラン高原の併合を認めないというのがわが国の立場であり、この立場に変更はない」と述べました。

ゴラン高原周辺 緊張高まる事態も懸念

ゴラン高原はシリアの西部に位置し、広さは1800平方キロメートルと日本の大阪府ほどの面積です。

1967年の第3次中東戦争で隣国イスラエルがゴラン高原の大部分を占領し、その後も違法な占領を続けて1981年に併合しました。

国連安保理の決議はイスラエルの撤退を要求し、過去にはイスラエルとシリアの和平交渉の議題となった時期もありますが、交渉は頓挫したままです。

イスラエルの右派のネタニヤフ政権はゴラン高原は敵対するイランの勢力がいる地域と隣接し、安全保障上の重要性が高まっているとしてイスラエルの領土だという主張を強めていました。

ネタニヤフ首相は、今月11日、アメリカの上院議員をともなって現地を訪れ、「ゴラン高原は永遠にイスラエルの一部だ。国際社会とりわけ友好国のアメリカはイスラエル領だと認めてほしい」と述べるなど、トランプ政権への働きかけを強めていました。

こうした求めに応じてトランプ大統領がゴラン高原でのイスラエルの主権を認める考えを示したことで、敵対するシリアやイランが反発し、ゴラン高原の周辺で緊張が高まる事態も懸念されます。

去年5月には、トランプ政権がイラン核合意からの離脱を表明した直後に、ゴラン高原ではシリア側からロケット弾が飛来し、イスラエル軍との武力衝突に発展しています。