すでに曲がり角? 上昇続く地価の行方

すでに曲がり角? 上昇続く地価の行方
これからマイホームの購入を検討している人にとって、今後、土地の値段が上がるのか、下がるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。その土地の価格の動向を示す指標、ことしの「地価公示」が公表されました。最大の特徴は、地価の上昇が大都市以外の地方にも広がっていることです。しかし、地価上昇をけん引してきた「都心部の不動産投資」には変調の兆しも見えつつあります。何が起きているのでしょうか。(経済部記者 坪井宏彰)

高騰続く都心のマンション

7142万円。東京23区で去年、発売された新築マンションの平均価格です。バブル期の平成3年(1991年)以来の高値です。

マンションの需要が高まっていることに加え、人手不足に伴う人件費の高騰や、来年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた相次ぐ大型の建設工事で資材価格が上昇していることなどが背景にあります。

しかし、これだけの高値になるとどれだけの人が購入できるのでしょうか?

実は最近、マンション販売が曲がり角を迎えつつあるという見方が出てきています。去年発売された戸数のうち、実際に売れた割合を示す「契約率」は、62%余り。平成以降で2番目に低い水準に落ち込みました。

不動産業者の間では新たな物件の販売を抑え、在庫の処理を優先する動きも出てきているといい、調査会社では「市況はよいとは言えない状態だ」としています。

かげりが見える都心の不動産投資

こうしたマンションをはじめとした物件の価格の高止まりは、不動産投資にも影響を与え始めています。民間の調査では去年、投資ファンドや機関投資家などが国内のオフィスやマンションなどに投資した額は、前の年を27%下回り3兆円程度(「CBRE」調べ)。
首都圏でオフィスやマンションを中心に投資してきた東京・港区の投資運用会社「リストアセットマネジメント」では、投資に見合った収益が得られる物件が少なくなり、新たな物件の購入に慎重になっているといいます。

新たな物件を取得するには1割から2割程度、資金を積み増す必要が出ていますが、簡単には賃料を引き上げることはできず、十分な利回りを得にくくなっているというのです。この会社では、ことしに入ってから取得した物件はまだ1棟にとどまっています。

「リストアセットマネジメント」の遠藤晋民社長は「価格が天井近くまで来ていて、投資先は立地がよいなど、収益性が高い物件に絞り込んでいる。新たな物件を取得できない状況が続けば、今後、事業に悪影響を及ぼすおそれもある」と懸念を示しています。

鳴り潜めるマンションの「爆買い」

日本の不動産に積極的に投資してきた海外投資家の間でも買い控えの動きが出ています。中国や台湾の投資家などに都心の中古マンションを仲介するビジネスを展開してきた不動産会社「ベストワン」に話を聞いてみると、2、3年前までみられた「爆買い」や「即買い」が鳴りを潜めているといいます。

海外の投資家は、購入したマンションを別の人に貸して、その賃料収入で利益を得てきました。しかし購入価格の上昇ほどには、賃料を上げることは難しく、購入に慎重になっているといいます。この会社では、ここ数年は年間100件以上の契約を成立させてきましたが、去年は、契約件数が前の年より30%以上落ち込みました。

「ベストワン」の田中吉社長は「以前は物件を紹介して2週間ほどで購入を決める人が多かったが、最近は値引きしないと売れないケースも出てきた。米中の貿易摩擦などもあり、景気の先行きに不安を感じた投資家の間で様子見の雰囲気が広がりつつある」と話していました。

不正融資問題も背景に

不動産投資が鈍っている背景には、価格の高止まりに加え、去年発覚した、スルガ銀行の不正融資問題もあります。この問題をきっかけに、金融機関が、不動産投資を行う個人への融資に慎重になっているのです。

日本銀行の調査では、去年の新規融資額は2兆8000億円余り、ピークだった3年前に比べて28%、1兆円以上減少しました。

今後の見通しは

こうした不動産投資の変化は、上昇が続いている地価にどう影響するのでしょうか。
不動産の調査会社「東京カンテイ」の井出武 上席主任研究員は「地価が、急に反転することは考えにくいが、不動産市場は1つの転換点に来ていると考えられる」としたうえで、ことし10月の消費税率の引き上げや、先行きが不透明になっている海外経済の動向が、今後の地価を左右する可能性があると指摘しています。

地価の動向は、経済的な活力を推し量るバロメーターとも言われます。それだけに、地価が今後も上昇しつづけるのか、それとも下がるのか。しばらく目が離せない状況が続きそうです。
経済部記者
坪井宏彰

平成25年入局
広島局を経て
現在、国土交通省担当