#KuTooって知ってますか?

#KuTooって知ってますか?
「就活のパンプス本当に無くしてほしい。靴擦れしまくるんだよ。外まで血だらけ…」
先週、就活中に大学生の女性が投稿したツイートです。仕事の時や就活中に、女性だけがパンプスやヒールのある靴を履くことを求められるのはおかしい。そんな、切実な声がインターネット上で共感を集めています。一方で、こうした声に応えるところも出てきています。「#MeToo」にならって「#KuToo」と呼ばれる動きについて取材しました。
(ネットワーク報道部記者 郡義之 高橋大地 伊賀亮人)

#KuTooと就活生の叫び

「就活してるだけなのに、なんでこんな血まみれにならなきゃいけないんだ…女性のヒールは廃止してほしい」
「爪剥がれて血が出るのはもちろん中敷を敷いたらくるぶしに当たって痛いから絆創膏。かかとにも絆創膏。替えの靴持って、最寄駅のトイレで履き替えてた」
就職活動がまっただ中の今、SNS上には、パンプスやヒールをめぐって女性たちのこんな声が次々に投稿されています。

一連のツイートには「#KuToo(くーとぅー)」というハッシュタグがつけられています。

これは、性暴力などを告発する「#MeToo(みーとぅー)」なぞらえたもので、「靴(くつ)」「苦痛(くつう)」をかけた造語です。
中でも話題になったのが冒頭に紹介したツイート。
パンプスとともに、かかとの部分に血がついた痛々しい写真とともに投稿され、5万6000件余りリツイートされるなど、大きく拡散しました。

ツイートした大学生の女性に話を聞くと、「先月、パンプスではなく黒いスニーカーやローファーでインターンシップに行ったら注意されて、『パンプスじゃないと落とされることもあるかも』と思い、就活中は履くことにしました。血だらけになったり、痛みがあったりしても、毎日履き続けなくてはいけなくて大変。こんなに靴擦れしやすくて活動に向かない靴を履かないといけないのはおかしい、くやしいと思い、ツイートしました」

パンプスの方がちゃんとしてる?

職場でパンプスを履くよう求められた経験があるという東京都内に住む30代の女性にも話を聞きました。
以前、勤務していたのは企業の人材育成などを手がけている会社。

営業に行く際に足が疲れるのでパンプス以外の靴を履きたいと話した時、女性の上司から次のように言われたそうです。
「どういう格好の方がちゃんとして見えるか考えて。パンプスの方がちゃんとしているでしょう」
これを聞いてパンプスが当たり前なのかと思い、出勤する時にはフラットシューズでも営業に出る際にパンプスに履き替えていたそうです。
「外回りが多い女性社員の中にはパンプスを持ち歩いて取引先に行く時に履き替えている人もいてそれが身だしなみとして『当たり前』のような雰囲気がありました。ただ、ずっとパンプスだと足は痛いし、自由がないなとも感じていました」

「#KuToo」きっかけは

冒頭に紹介した「#KuToo」の運動を最初に始めたのは、グラビア女優で、ライターの石川優実さんです。

きっかけとなったのはことしの1月、石川さんが「いつか女性が仕事でヒールやパンプスを履く風習を無くしたいとおもっている」とツイートしたこと。
投稿は瞬く間に拡散し、3万件余りもリツイートされました。寄せられた意見の中に、「#KuToo」というハッシュタグを使って広げてはどうかというアイデアがあったため採用したといいます。

石川さんは、葬儀場で弔問に来た人を案内したりする仕事をすることもありますが、その際、ヒールが5~7センチある黒のパンプスを履くように指定されているといいます。

通夜や告別式が相次ぐと、パンプスを履いていることが負担になって、足や腰が痛くなり、うまく歩けなくなってしまうこともあると言います。
石川さんは「今回、ほかにもホテルや受付、営業などさまざまな現場からパンプスなどを指定されて苦しんでいるという意見をもらいました。同じ現場でも男性は底が平らで、より負担の少ない革靴を履けばOKなわけです。性別によって望まないことを強いられたり、それによってケガをしたりするってのはやっぱりおかしいと思います。そんな風につらい思いをしている人がいるんだってことを多くの人に気付いてほしいと思って始めました」と話しています。
石川さんはさらに、インターネット上で職場でのパンプスやヒールの強制をなくすことを求める署名活動も行っています。

2月から始めてこれまでに集まった署名はおよそ1万6000件。今後、厚生労働省に署名を提出し、「女性にハイヒールやパンプスを強制することを禁止するよう企業に通達する」ことを求めたいといいます。

こうした運動に対して、「パンプスやヒールをなくせというのか!」といった批判を受けることもあるといいます。

これについて石川さんは全くそんな意図はないと話します。
「間違ってとらえてほしくないのは、『パンプスやヒールのある靴を履きたい!』という声を否定しているわけではないということです。履きたい人にはぜひ履いてほしいし、私も進んで履くこともあります。性別が違うだけで強制されるのではなく、自分たちの好みにあわせて選択できるってことが大切だと言うことを伝えたいです」(石川さん)

なぜパンプスを履く学生が多いの?

そもそも痛い思いをしているのにパンプスにこだわるのはなぜなのか。就職活動で欠かせないという学生もいるようです。

採用する企業側がパンプスを履くように呼びかけているということがあるんでしょうか。就職情報サイト「マイナビ」の高橋誠人編集長に聞いたところすぐに返ってきたのは、「企業の採用担当者は学生が思っているほど靴は見ていないですし、何を履いているかが採用の合否に影響することはないと思います」という答えです。
それではなぜ就職活動でパンプスを履く学生が多いのか。高橋編集長はむしろ学生が何を履いていいのか迷ってパンプスを選んでいるのではないかと指摘します。
「企業によっては『ビジネスカジュアルで来てください』と呼びかけているところもありますが、学生からはかえって戸惑う声を聞きます。その点、就職活動を始める際にリクルートスーツとパンプスなどをセットで買えば迷わずにすみ、ある意味では合理的とも言えます。私も服装や靴に悩むくらいならスーツにパンプスにして志望動機や自己PRを考えるのに時間を使った方がいいとアドバイスしています」
そのうえで、高橋編集長は、学生に自分に合った靴を安心して履いていいということが伝わってほしいと話します。
「足が痛ければ無理してまで履く必要はありませんし、採用担当者も面接で見極めようとするのはその人の本質や中身です。ベンチャー企業の多くではそもそも社員がスーツを着ていませんし、採用の方法も多様化している中どういう靴を履くかも柔軟になっているのではないでしょうか」

固定観念をまずなくして

「パンプスやヒールを履いていて痛みを訴えた女性が多く訪れる靴屋さんがある」

そう聞いて東京・新宿区の閑静な住宅街にあるお店をたずねました。店によりますと毎年4月から5月にかけて就職活動中の学生や入社まもない新人の社員が訪れるケースが多いということです。

「靴ずれがいちばん多いですが、中には足の指が曲がっていたり、爪の色が変色していたりする人もいますね」

そう話すのはこの店で働く佐藤悦正さんです。18年前に歩きやすい靴を広めたいと、介護事業者やスポーツ用品店などと「靴内環境歩行改善協同組合」という団体を設立しました。

佐藤さんによるとパンプスやヒールはそのデザインや形から女性に人気があります。
しかし履き慣れない人が履くと足のかかとに負荷がかかり、外反ぼしや腰痛などになってしまうケースがあるといいます。

このため、この店ではパンプスやヒールを履きたくないという女性に独自に開発したビジネスシューズをすすめています。
「これを見てください」と佐藤さんが見せてくれたのが、2足のビジネスシューズ。形は同じですが、大きさが違います。

「男性女性どちらでも履けるようになっています」
この靴は通常よりも軽くなっていて特殊なスポンジを使っている中敷きは一人一人の骨盤や歩き方にあわせて作ります。歩くときにかかとの部分が靴の中で浮き沈みをするため疲れにくく負担も軽いということです。
「パンプスやヒールを履くという女性らしさを否定するつもりはありません。ただ、女性であるという理由だけで本当は履きたくない靴を履くというのはある種の押しつけだと思いますし、女子学生を見ていても本当にかわいそうだと思います。女性はこうでないといけないという固定概念をまずなくして、自由に靴を選べるようになるといいと思います」(佐藤悦正さん)

#KuTooの反響

#KuTooと呼ばれる動きについて取材をすると思った以上に反響があると感じました。パンプスやヒールを履いていないというだけで面接で落とされるかもしれない、営業先に失礼にあたるかもしれないと言われたという女性の声。そうだという人もいるかもしれませんが靴の種類だけでそれほど不快に感じたり支障が出たりすることがあるのだろうかと考えてしまいました。

もちろん、最低限のTPO、その時の時間、場所、状況などによってマナーや配慮は必要だと思います。どこからが「NG」で、「OK」なのか。その線引きは、相手の考えや状況によって変わってくるかもしれません。

でも「そうした方が無難」「これまでもそうだったからそうするべき」と考えてしまう。そのことでつらい思いをしている人がたくさんいるのだと、今回の取材を通じて知ることができました。

見えないところで苦しんでいる人がいる、傷ついている人がいる、ということに1人でも多くの人が思いをはせられるようになれば、靴に限った話でなくとも変わっていくことにつながるはず。そう思います。