イギリス議会 EU離脱協定案を否決

イギリス議会 EU離脱協定案を否決
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イギリス議会は、12日、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の条件について定めた協定案を賛成242、反対391で再び否決しました。これを受けメイ首相は、何の取り決めもないまま離脱する「合意なき離脱」に踏み切るかどうか、13日に議会に諮ることにしています。
イギリスがEUを離脱するための条件を定めた協定案は、日本時間の午前4時すぎ、議会で採決が行われ、賛成242、反対391で否決されました。

協定案は、ことし1月にも議会で採決が行われましたが、アイルランドとの国境管理の問題を解決しないかぎりEUの貿易のルールなどに縛られ続けるという強い反発や懸念から歴史的な大差で否決されたため、メイ首相は、今回、EUから新たな合意を取り付けて採決に臨んでいました。

しかし、議員の懸念は払拭(ふっしょく)できず、メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党が協定案に反対したほか、与党・保守党の離脱強硬派や最大野党・労働党が反対し、149票の大差で再び否決されました。

メイ首相は、13日に、何の取り決めもないまま離脱する「合意なき離脱」に踏み切るかどうか、議会で採決に臨みます。

離脱を今月29日に控えるなか、「合意なき離脱」を議会が選べば経済や市民生活への混乱は避けられないだけに、メイ首相は、議員に対し、慎重な判断を呼びかけました。

議会は「合意なき離脱」を否決するとみられ、メイ首相はさらに14日に離脱延期の是非を問う採決を行う方針です。

メイ首相「反対ばかりでは問題解決しない」

「離脱協定案」が再び、議会で大差で否決されたことを受け、メイ首相は直ちに声明を発表しました。

メイ首相は、「議会の判断を残念に思う。しかし、合意をまとめて離脱をするのが最良であり、いまある協定案が最良だとの思いに変わりはない」と述べました。そのうえで今後の手続きについて、13日に、「合意なき離脱」に踏み切るかどうかの採決を行い、これが否決された場合には離脱延期の是非を問う採決を14日に行う方針を確認しました。

メイ首相は、「合意なき離脱」の採決には党議拘束をかけない方針を示したうえで、「私自身も、離脱を実現しなければならないという思いと、一方で、離脱は、混乱なく実現したいと強く願う気持ちがあり難しい選択になる」と述べ、議員それぞれが慎重に判断するよう求めました。さらにその後、議会が、離脱延期を選択した場合には、EUに対し、直ちに離脱の延期を要請をする考えを明らかにしました。

メイ首相は、「協定案に反対するばかりでは直面している問題は解決しない。延期を要請すれば、EUは、離脱をやめたいのか、それとも、国民投票をもう一度、行いたいのかを問うだろう。どれも難しい選択だが、議会は、この選択に向き合う義務がある」と議員に責任のある対応を呼びかけました。

EU大統領「過半数確保できず失望」

イギリス議会で協定案が否決されたあと、EUのトゥスク大統領は「イギリス政府が過半数を確保できなかったことに失望している」とする声明を直ちに発表しました。

そして「EUは合意のために可能なことはすべて行ってきた。現在の行き詰まりはイギリス側でしか解決できない」などと、これ以上の歩み寄りはしない考えを強調しました。そのうえで、「今回の採決によって『合意なき離脱』の可能性がかなり高まった」として備えを進める考えを示しました。

一方、「イギリスが離脱延期のために理にかなった申し入れをしてくれば、27か国は検討する」として離脱の延期に応じる用意はあると改めて呼びかけました。

「安全装置」解除で成果と強調

離脱協定案では、北アイルランドの国境問題が解決しない場合、イギリスが事実上、EUの関税同盟に残る「安全措置」が発動されることになっています。解決できない場合にだけ使われる「保険」のようなものですが、イギリス議会は、「離脱を有名無実にするものだ」などと強く反発してきました。

イギリスのメイ首相とEUのユンケル委員長が11日に合意した文書には、この「安全措置」の運用について言及しています。文書では「安全措置」を発動しなくてすむように双方が最善を尽くす義務があるとし、「もし相手側が最善を尽くしていない」と判断した場合には、双方が選んだメンバーで構成する仲裁委員会に訴えることができるとしています。

そして、その訴えが認められた場合には、「安全措置」の履行を含む、離脱協定に定められた義務を一方的に停止することができるとしています。仲裁委員会がEUは義務を怠っていると判断した場合には、イギリス側から一方的に「安全措置」を破棄できることになります。これまで、イギリスが「安全措置」を解除するには、EU側の同意が必要だとされていたため、メイ首相は、大きな成果だと強調しています。

ただ今回の文書について、イギリスのコックス司法長官は12日、EU側が十分な努力を行った場合にはEUの枠組みに拘束されるリスクは減少するものの、双方の埋めがたい意見の相違によって合意がまとまらなかった場合のリスクは依然として消えないという公式見解を示しました。

コックス司法長官は議会で、「これは議員が下すべき政治判断に対して、法的な側面を述べたにすぎない。それぞれが注意深く、政策を見て、判断すべきだ」と述べ、最後は議員の政治決断だと強調しました。

これまでの経緯

イギリスが国民投票でEU=ヨーロッパ連合からの離脱を決めたのは2016年6月でした。

残留を訴えたキャメロン首相の辞任を受けて就任したメイ首相は、「残留派」と「離脱派」で分断された与党・保守党内の融和を図ろうと閣僚には、残留派とともに、ジョンソン外相など多くの離脱派を起用しました。

メイ首相はすぐに離脱の手続きを始めず、まずは経済への混乱を最小限におさえながら離脱する方法を模索しました。しかし、離脱派から、決断を先送りしていると批判を受け、おととし1月、EUの単一市場と関税同盟からの撤退を表明します。そして3月29日、EUに正式に離脱を通知し、2年を期限とする離脱交渉が始まりました。

2か月後の6月、メイ首相は、突然、総選挙に踏み切ります。政権基盤を強化するねらいでしたが与党・保守党は、過半数を割り込み、北アイルランドの地域政党の閣外協力を得て、かろうじて政権を維持することになりました。

選挙後、本格化した離脱交渉で、最も難航したのが、陸続きのイギリスの北アイルランドと、EUに加盟するアイルランド共和国との国境管理の問題でした。イギリスもEUも、これまでどおり人やモノの往来の自由を守ることでは一致したものの、具体的な方策について、意見の隔たりは埋まりませんでした。

EUの単一市場からの完全撤退など強硬な離脱方針を貫いてきたメイ首相は、行き詰まる交渉を打開しようと去年7月、EUとの協調や経済的な結び付きを重視する新たな方針を示しました。しかし、離脱強硬派のジョンソン外相らが猛反発し、主要な閣僚の辞任が相次ぎます。

メイ首相は去年11月、離脱の条件を定めた「離脱協定案」を何とか取りまとめ、EUとの間で合意しますが、北アイルランドとアイルランドの国境管理の条項に反発する閣僚のさらなる辞任を招くことになりました。

一方、EU残留を望む議員も事態の打開には2度目の国民投票の実施しかないと政権への圧力を強めました。メイ首相は離脱派と残留派との間で板挟みとなり、ことし1月、イギリス議会で行われた「離脱協定案」の採決では、歴史的な敗北を喫します。

メイ首相は、「協定案」の修正を求めて、EUとの話し合いを続けますが、EUは再交渉には応じない構えを崩しませんでした。