今どきの“叱られ方”と“叱り方”とは

今どきの“叱られ方”と“叱り方”とは
学生生活もまもなく終わり。4月の入社式に向けて、準備を始めたという人も多いのではないでしょうか。

社会に出れば、ちょっとしたミスで上司から叱られることもあるかもしれませんが、最近の若者は叱られることに慣れていないともいわれます。一方、叱る立場の上司も近頃は萎縮しているとも。上司とよい関係を築き、自分の成長につなげる上手な叱られ方とは?(さいたま放送局記者 清有美子)

“叱られ方”講座 何を教える?

バレンタインデーの雰囲気に街なかが包まれた2月14日。東京 豊島区の大正大学では、この春卒業する学生18人が、ある講義を受けていました。
リクルートスーツに身を包んだ学生たちが受けたのは、“叱られ方”を学ぶ講義です。入社後、上司に叱られて、精神的に参ってしまったという卒業生の声を受け、大学が去年から始めました。

大学によると、今どきの学生は家庭や学校で叱られた経験に乏しく、いざ叱られると大きなショックを受け、自分が否定されたように感じることもあるといいます。
「理解できているなら、反応してください。声がないと分からないんです。今、叱っているんですよ!」
外部から招かれた講師は、名刺交換や電話の応対といった社会人に欠かせないビジネスマナーを教えながら、学生たちを“叱って”いきます。入社してすぐは、きちんと声を出して反応しないことで叱られるケースが多いと、講義の中で教えていきます。
この講義で教えようとしているのは、叱られないためのテクニックではありません。叱られることの“意味”を伝えようとしています。

講義では、“遅刻しそう”とか、“「分からない」と言えないまま仕事の期限が間近に迫った”といった新入社員にありがちな状況を想定して、どう対応すべきかを学生どうしで話し合います。

学生からは「間違いなく叱られるが、できるだけ早く報告する」とか「報告だけでなく、同じミスを繰り返さないための改善策も付け加えた方がいい」といった意見が出されました。

こうした議論を通じて、叱られる理由にみずから気付き、その経験を成長につなげるにはどうすればよいか、考えてもらおうという狙いです。

議論を終えた学生たちに向けて、講師は「職場の上司や先輩は、少し荒っぽい表現をするかもしれませんが、叱られても、自分が否定されたと考えないで下さい。相手は、あなたたちを受け入れ、成長を期待しているのです」と訴えました。

叱ることの恐怖 モノ言わぬ上司

学生たちが“叱られ方”を学ぶ一方、“叱り方”に悩む人たちも増えています。“パワハラ”と糾弾されはしないかと萎縮して、部下への指導を避ける上司です。

大手保険会社で100人ほどの部下を持つ50代の管理職の男性は、ある出来事をきっかけに「モノ言わぬ上司」になってしまったといいます。
職場のホワイトボードに部下たちがやるべき仕事を書き出したところ、「パワハラボードだ」という声が、部下からあがったのです。業務の進み具合をチェックすることが目的で、プレッシャーを与えるつもりはなかった男性にとって、思いも寄らないことが“パワハラ”と指摘されたことで自信を失い、部下への指導ができなくなったといいます。

男性は「耳の痛いことを言えば、関係がぎくしゃくする可能性があるし、言わないで済むなら言わずに済ませたい。部下の成長のためにはよくないと分かっているのですが…」と打ち明けます。

企業向けの研修を行う会社には、こうしたパワハラを恐れる上司を対象にした研修の問い合わせが急増しています。研修会社の担当者は「パワハラに対する意識が高まり、多くの企業が対策研修を行うようになった。パワハラと認定された事例が次々と紹介される中で、どう指導していいのか分からなくなる管理職が増えている」といいます。
この会社が、2月に都内で開いた講習会には、企業の人事担当者など30人余りが参加。講師は、今どきの若者に対する指導のポイントとして、「批判する」のではなく「よく耳を傾ける」こと、そして「責める」のではなく「支援する」ことへと意識を変えることを挙げていました。

学生は「叱られ方」を学び、上司は「叱り方」の講習を受ける時代。性格も価値観も異なる人間が集まり、真剣に仕事に取り組むだけに、「これが正解」という決まった形はないと思いますが、叱られる側、叱る側ともに、相手の話に耳を傾けること、指導の意味を考えることが共通のポイントとは言えそうです。
さいたま放送局
清有美子

平成15年入局
経済部、報道局遊軍をへて、生活経済や子育てに関するテーマを取材